2017.04.06
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インプットの質が教師の力量育成に与える影響

今期も執筆することになった鈴木邦明です。

よろしくお願いします。

実は、22年間勤めていた小学校をこの3月で退職しました。

4月から短大で健康教育を教えます。

これまで色々な方にお世話になりました。

感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとうございました。

これからもどうぞよろしくお願いします。

今回は、小学校の最後の勤務の日に、残る職員に対して話した内容を書きたいと思います。

若い教員の多い職場でした。

そういった若い教員に向けてのメッセージでしたが、日本中の若い教員たちにもお伝えしたいと思い、文章にしました。

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

インプットアウトプットのバランス

学校の教員は、基本的には子ども達にものを教えるのが仕事です。

その行為は「アウトプット」が中心となります。

「教えていく」、「伝えていく」という行為が自分の中にあるものを外に出していくイメージです。

じょうろの水ではありませんが、出しているだけでは、自然と中身は無くなってしまいます。

若い教師に例えると、大学の4年間で様々なことを学び、知識などを蓄えます。

大学の時代は、インプット中心の生活と言えるでしょう。

それが教職に就き、子どもを教える生活になると、アウトプットが多い生活になります。

若い教員、特に初任者は、学校という仕組みに慣れるために忙しい日々を送ります。

そういった日々では、インプット(教育に関するもの)が極端に減ります。

印刷機の使い方などの新しい環境に慣れるためのこと(インプット)は増えますが、それは私がイメージしているインプットとは少し違います。

若い先生が十分なインプットができないままアウトプット中心の数年間を過ごすと、だんだんスカスカな感じになってしまいます。

子どもが食いついてくるような面白い話は、同じクラスでは何度も使えません。

手持ちの面白いネタも尽きていきます。

子どもが徐々に教師の話に注目しなくなる可能性があります。

採用二年目、三年目の重要性

大事になるのが、新採用から二年目、三年目なのではないかと感じています。

新採用の年は、学校に慣れることで精一杯であることが多いです。

それが、二年目、三年目となると少しずつ余裕が出てきます。

そういった状況で、少しずつ自分自身が学ぶ(インプット)ことを意識することができるかがその後の教員生活に大きく影響を与えるのでしょう。

私の小学校教員の22年間の生活で多くの若い教員と一緒に仕事をしてきました。

どんどん力を付けていく教員もいました。

逆に伸びがイマイチだと感じる教員もいました。

自分の学びをどれだけ意識することができるのかで違いが出てくるのだと思います。

私がおススメのインプット

私がイメージするインプットの例を挙げます。

①本、雑誌などを読む

SNSやネットなどで教育情報に触れる

③「行かされる」研修会でない研修会に参加する

④資格などを取る

JMOOCなどを受講する

「①本、雑誌などを読む」

昔から行われている最も一般的な方法です。

雑誌の場合、年間購読の手続きをしてしまうことが望ましいです。

忙しくなると、どうしても本屋などで雑誌などを買う手間が面倒になります。

また、こういった時代なので、アマゾンなどのネットの書店をうまく利用すればお金も時間も節約しながら、良質の情報に触れることができます。

「②SNSやネットなどで教育情報に触れる」

SNSやネットなどでは、入ってくる情報の質を良いものにすることができれば、良い学びになります。

著名な教育学者の考えをダイレクトに受け取ることができるので良い刺激になります。

雑誌と同様に、定期的に有益な情報が送られてくるような設定にしておくと手間を掛けず良質の情報を定期的に入手することができます。

例えば、文科省が定期的に出しているメールマガジンなどです。私は文科省の他、県教委、特別支援教育総合研究所、学びの場.com、明治図書からメールマガジンが届くような設定にしていました。

あまり多くなると煩雑になってしまうので、情報の精選が大事になります。

「③「行かされる」研修会でない研修会に参加する」

これは、自分の役割などによって「行かされる」研修や研究ではなく、自分の意志で自分が学びたいことの研修会に参加していくというものです。

私は、受け持った子どもに「やらされている勉強と自らやっている勉強では10倍位差がある」と言い続けてきました。

教員の研修や研究も全く同様であると思います。

私はこの2年間、放送大学大学院で学んでいました。

そこで出会った人々は自ら学んでいる人達ばかりでした。

先日の学位授与式では、99歳の男性の方が正規に学部を卒業していました。

自ら学ぶことの意味を考えさせられました。

「④資格などを取る」

これは、英語の資格を取ったりすることです。

現職教員の場合は、隣接校種の免許を取るということもおススメです。

小学校の教員の場合、大学などで6単位を取得すれば、幼稚園の免許を取ることができます。

この新たな免許を取るということのメリットが、もう一つあります。

条件が合えば、10年に一度の教員免許更新講習を受けなくてもよくなるということです。

特別支援に関する免許も取りやすくなっています。

興味のある方は調べてみてください。

「⑤JMOOCなどを受講する」

これは、最もお手軽に取り組めるものです。

ネットで、大学の授業などを無料で見ることができます。

無料だから質が低いのではないかと思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

東京大学の本郷先生の日本史の授業は本当に興味深いものでした。

また、同じく東大の「インタラクティブティーチング」は多くの学びがありました。

JMOOCなどのきちんと仕組みが作られているものでは、修了証なども出てきます。

コースによっては、レポートがあったり、最終試験があったりします。

なかなか難しいコースもあります。

私は15コース程、受講したことがありますが、基準に満たず修了証がもらえなかったコースが3個くらいありました。

レポートを期日までに出したり、テストのために勉強したり、結果でハラハラしたりということを体験することにも非常に意味があります。

それらは普段、教師である自分が子ども達に強いていることだからです。

自分自身が同じ立場になることで感じることがあります。

そういったことが全て無料で体験できます。

電車などの通勤時間を使って視聴することができます。

やらない理由がない位おススメです。

終わりに

ある本に、「人にものを教えるには、教える時間の3倍の勉強(準備)が必要である」ということが書かれていました。

若い教員であれば、初めて受け持つ学年や単元が多いはずです。

3倍ではなく、もっと多くの時間が教材研究として必要になります。

しかし、そういったことができていないというのが現実でしょう。

新年度が始まります。

しっかりと学び続けるということを意識してみてはどうでしょうか。

この一年間、そしてその後の教員人生が有意義なものになることを期待しています。

私もしっかりと学び続けたいと思っています。

これからもどうぞよろしくお願いします。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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