いよいよ学年も終わりますね。
きっと,安堵感の中にも「もう終わりか」という思いを抱きながら残りを過ごしていらっしゃると思います。
そんな学級の最後の時間を,「これで終わり」という思いではなく,次の学年へ繋げるという意識で大切にしてはどうでしょうか。
ゴールでもあるこの時期を,あえて次のステップに向けた意識づくりをすることで,次の学年・学校でも頑張れると思います。
それでは,私の学級で実践している事を3つほどご紹介します。
①〇年〇組物語
一年間を振り返ることはとても大切だと思います。
その一年間を,学級通信などを頼りにしながら,成長したことや頑張ったことを見つけながら短冊に書きだしていきます。
「5/24運動会 みんなで力を合わせた組体操 みんなの協力で大成功!」
このような短冊を一年間分つくることで,そこから自分達の集団の成長や良さを認識していきます。
中には上手くいかなかったエピソードも出てきますが,そこをどう乗り越えたのか,そこが書いてあるのが大切です。
「2/21大繩大会 本番はみんな緊張517回 でも,みんなの声かけで団結したね」
1年間書き上げ,短冊が並ぶと,自然と子どもの中に達成感や自己効力感が高まるようです。
また,大人は,一年間の写真をつないだスライドショーを作ります。
最近は写真を入れるだけの簡単なソフトもあるようですが,ただ写真を時系列に並べて音楽をつけるだけでも喜んでくれます。
私はいつも最後の学活の前日に流し,一年間を振り返ります。
子ども達一人ひとりに,頑張ったり悩んだり楽しかったり…
たくさんの思い出がありますが,「楽しかった」だけでなく,「何が楽しかったのか」,「どうしたから楽しかったのか」などの振り返りの視点を意識して振り返ることが,次の学年・学校でも頑張ろうという意欲付けに繋がると思います。
②先生の通知表
私もそうですが,通知表の作成などに追われている時期ですが,私は子ども達にも通知表を書いてもらいます。
「先生の通知表」です。
正確には,子どもと保護者の方に所見とアンケートの5段階評定をつけてもらいます。
ある児童の所見です。
「先生は,いつも私たちの気持ちを考えながら話してくれましたね。時には怒って怖いときもあったけれど,すごく私たちを大切にしてくれました。花丸です。でも,時々忘れ物をして職員室に帰るので,気を付けましょう!先生と一緒に頑張ってきて本当にたのしかった~ありがとうございました。」
時には,厳しい言葉もありますが,「頑張っている事と頑張ってほしいことをお互い書こうね」と言って書いてもらいます。
また,5段階評定は,以下のような項目が20項目ぐらいあります。
・いつも笑顔で接している
・黒板をきちんと整理して書こうとしている など
意外と子ども達はよく見てくれています。
そしてこの通知表を,最後の学活で,私が作成した通知表と交換します。
「通知表渡し」ではなく,「通知表交換式」です。
一人ひとりの呼名とお互い温かい声掛けで,教師も子どももお互いに嬉しくなります。
最初は,教師の自己反省のためにやっていた活動なのですが,「先生が一方的に評価するという構図ではなく,先生と一緒に創りあげることの大切さを感じる」という意味があることに気付きました。
この「先生と一緒に創る」という意識は,次の学年・学級での意識の変化に繋がるようです。
ちなみに,いつもいつも私の評定が低いのは,「机の上をきれいにしている」です。
来年度こそは,頑張ろうと思います。
③○○プロジェクト
この時期だからこそ,最後に高めた状態で次の学年に繋げていくために,今の課題をしっかり見い出し,プロジェクトを立ち上げます。
例えば5年生であれば「最高学年プロジェクト~最高の最高学年になるために~」を立ち上げます。
挨拶が・・・と思うのであれば,「あいさつマイスター」として挨拶を良くするプロジェクトを立ち上げます。
目的は「最高の最高学年になるために」ですが,数値・行動などの具体的な目標を作り,改善していきます。
「もうあとは次の学年で・・・」とか「中学校になってあとは頑張って指導してもらおう」ではなく,最高の状態で次の学年がスタートできるようにという思いで,最後に実践します。
エンディングは未来志向で
今あげた事例は,私の学級の一部の事例なのですが,なぜ過去を振り返り,未来へつなげる必要を感じているのか…
それは,こんなエピソードからの自己反省があるからです。
私が受け持ったAくんの次の年の担任の先生からの相談です。
「先生のクラスだったAくん,去年は先生の言うこと聞いておとなしかったけど,私たちのやり方とか言うこと全然聞かなくて困っているんだよね。」
Aくんの意識としては,「前の年は楽しかった。今年は楽しくない。」これだけなのです。
そこで,学級集団の思い出としてこの一年を振り返るだけでなく,自分の行動への価値付けを行う必要があったと気付かされました。
また,その年の最後は,ドッジボール大会やレクリエーションなど,楽しいことだけをたくさんして終わってしまったので,「今林は楽しい先生」と安易な価値付けしかされておらず,4月の新担任の学級の基盤づくりに意識を繋げられていなかったのです。
ですので,学級のエンディングを未来志向で迎えることは大切だと感じています。
残り数日,どう過ごすかが,子どもの未来への大切な時間であり,素敵なスタートへの種まきなのかもしれませんね。

今林 義勝(いまはやし よしかつ)
福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝
小中人事交流での小学校と中学校の両方の経験を活かし、9年間を見通した教育活動を行っています。また、「活用型問題解決による理科」の実践研究が現在のテーマです。
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