2017.02.20
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

その泡,空気?~小学校4年生理科~

福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝 今林 義勝

みなさんこんにちは。
今日は理科の事を書きますが,最後まで読んでも,この記事には「結論」がありません。
というのも,小学校4年生の理科を担当されたことある方はわかると思いますが,「水の三態変化」についての悩みです。
私に理科について尋ねられる先生方からの質問の中で,一番多いのが,この単元の問いの様な気がします。
「水を温めて出てくる泡の正体は?」
「水を温めると,100℃付近で沸騰する。出てきた泡は・・・水蒸気。」
当たり前の様な結論ですが,「泡」を考え始めると面白いのですが,混乱が生じます。
あれだけ「水蒸気」と言っていた子ども達が,テストで「この泡は何ですか」と問われると,多くの子どもが「空気」と答えてしまいます。
大人もそうですよね?
ある日職員室でこの話題を話していると・・・
「え,空気じゃないんですか?」
「じゃあ,あの泡の正体,なんですか?」
と,真剣に答える先生方もいます。
水が水蒸気になるのはわかっているのですが,「泡」と結びつかないのです。
確かに,「空気の様な泡」であることは確かです。
しかし,空気ではなく,まぎれもなく「水が変身した水蒸気」なのです。

姿を変える・・・
残念ながら,水の分子は集まらない限り1個ずつは目では見えないくらい小さいので,その動きを見ることはできません。
なので,姿を変えることを想像することができません。
ですから,「本当にどうなっているのか」。調べても調べても,納得いかないのかもしれません。
これが理科の面白さでもあり,不思議さでもあります。
つまり今までの単元では,目に見て分かったことを考えていたのに,可視化できない事象を考えるという単元なのです。
「目で見えないけど,そこで何かが起きている」という視覚で感じられない理科の面白さを感じる瞬間かもしれません。

教科書なども,指導の順番を水→氷からスタートすることで,「変化」に目を向けたり,「すがたをかえる」といったキーワードで,水が「状態」だけ変化しているということに着目させたり,様々な工夫されているのがわかります。
また,実験方法も多種多様で,出てきた水蒸気を冷やす,袋に閉じ込める,ビーカーを逆さまにして集める・・・など,様々な先生方の実践の中で,種々検討されてきました。
でも,ここでどの実験をしても,結論はあの「泡は水蒸気」にはならないですよね?
子どもが納得しないのは,ここにあるのかもしれません。
少なくともこれらの実験から導き出せることは,「これは空気ではないものだ」という結論だけです。
しかし,それにも納得しない子どももいますよね。
例えば,空気は温められると膨張するので,熱くなって一瞬膨張して,冷えて小さくなったなどです。
最後まで「空気」とこだわります。

とすると,これは水蒸気に変身したという結論を出すことはそもそもこれだけの実験では不可能です。
中学校の先生に言わせれば,「最初から教えたら?」とか,「モデルで説明しない限り無理では?」と思ってしまいます。
しかし,4年生担当の多くの先生方は,目の前の実験と子ども達の出す結論で悩んでいるのです。

「結論」がありませんが,もし「泡の正体は?」という問いが生まれ,視覚だけで解決できないのであれば,粒のモデルや身体表現などで何が起こっているかを可視化して教えることも必要かもしれませんね。

今林 義勝(いまはやし よしかつ)

福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝
小中人事交流での小学校と中学校の両方の経験を活かし、9年間を見通した教育活動を行っています。また、「活用型問題解決による理科」の実践研究が現在のテーマです。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop