「立腰教育」のススメ
私の勤務する小学校(埼玉県深谷市立桜ヶ丘小学校)において、2月14日に「立腰教育研究実践公開」が行われます。
詳しくは案内のページを見ていただけるとありがたいです。
埼玉北部で交通の便が悪いことや研究会としては朝が早いことなどもあり、参加が難しい先生方もいると思います。
そこで「立腰教育」のエッセンスを少しだけ紹介したいと思います。
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明
「立腰教育」とは何?
そもそも「立腰教育」という言葉に馴染みが無い先生方も多いかと思います。
「立腰教育」とは、簡単な言葉で言い換えると「良い姿勢をする」というものです。
そのことによって、授業における学びの質を高めていこうというものです。
もともとは、教育者・哲学者の森信三先生が提唱されたものです。
日本においては、古来、禅や武道などにおいても大事にされてきました。
「立腰教育の効果」
腰骨を立てることによって、様々な効果があります。
・やる気が出る
・持続力がつく
・集中力がつく
などです。
科学的なデータはあまりないのですが、良い姿勢をすることによって、内臓、血管、背骨などが正しい形になることの影響も外せません。
猫背の状態では、内臓が圧迫されてしまっています。
また、血管にも圧力が掛かり、歪みなどが生じています。
ヒトは、二足歩行の動物です。
非常に重たい頭が背骨の上に位置しています。
姿勢が崩れるとそれを支えるために、肩や首の筋肉へ負担が増します。
その結果、肩や首の凝りにつながります。
腰骨を立てることによって、上に挙げたような身体的な不具合を減らすことができます。
脳に送られる酸素や栄養が望ましい形になることで、頭の働きが良くなると考えられます。
「立腰教育の指導の取り組み方」
「腰骨を立てる」指導を始める時には、骨格標本を使って説明をすると子どもの理解が容易になります。
学年が上にいく程、科学的な説明をすることが必要だと思います。
「なぜそういったことをするのか」ということが理解できると、子どもは納得して取り組むようになります。
小学校の低学年の子どもは、教師が「やりなさい」と言えば素直にやるかもしれませんが、高学年になると少し様子が違ってきます。
子ども達にきちんと根拠を説明することが大事だと思います。
また、きちんとした姿勢をしなかったことで、背骨が曲がってしまった子どもの写真などを見せるのも効果的です。
本校の取り組みの特徴は、全校で取り組んでいるということです。
「立腰教育」は、担任の個人の取り組みとして行うこともできますが、学校全体での取り組みの方が、効果は高いですし、取り組みは容易になります。
実際に取り組む場合、ポイントは「年度の始め」になります。
「朝の会のやり方」や「授業における号令の掛け方」などを決める際に「立腰」の要素を盛り込む必要があります。
学校全体で行う際は、管理職や研究主任などの立場の人が全体に伝えていく形になるでしょう。
学校で取り組む研究の一部に含む形にすれば、更に全校での取り組みが行いやすくなります。
本校では「生きて働く言語活動の充実」という研究テーマで進めていますが、授業を行うベースの部分として「立腰教育」が位置づけられています。
具体的に学級で「立腰教育」に取り組んでいるのは、「朝の会」と「授業開始前」です。
「朝の会」のプログラムの中に「腰骨タイム」というものを設けています。
日直の「腰骨を立ててください。」という合図のもと、約1分間、目を閉じて良い姿勢を保ちます。
その間、担任が子ども達の間を回り、腰骨を後ろから少し押すようにし、良い姿勢を意識させます。
「授業開始前」は、授業開始のチャイムの後、日直が「腰骨を立ててください。」と合図をします。
こちらは、朝の会のものよりも時間が短く、10秒程度で取り組んでいます。
休み時間との切り替えを意識させるのが大きなねらいです。
指導の際のポイントは次のようなものです。
足の裏をきちんと床につける
背もたれから離れる
ゆっくりと呼吸をする
「おわりに」
はじめの内は、できていない部分があっても叱るのではなく、できている子どもを褒めていくと雰囲気も良くなります。
少しずつやっているうちに良い感じになってきます。
授業中も落ち着いている子どもが増えるようになってきます。
私は今の学校に赴任して8年になります。
数年前は、落ち着かない子どもが随分たくさん居たように覚えています。
それが「立腰教育」を始めた3年前から徐々に落ち着いていきました。
明らかに学校全体が落ち着いた雰囲気へと変化していきました。
そういったことは、学力の面にも影響があります。
全国学力学習状況調査の結果も順調に伸びています。
多くの学校で実践され、子どもが順調に育っていくことを願っています。
また、ご縁がありましたら、2月14日の研究発表会でお会いできることを楽しみにしております。
寒い時期でもあります。
インフルエンザが流行っている時期でもあります。
皆様、お体をご自愛ください。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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