2017.01.13
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小中連携のススメⅡ ~中→小へのアプローチ~

福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝 今林 義勝

今回は・・・

前回は,小学校の良さから中学校の指導改善に向けた工夫を提案をさせていただきました。
小学校が良い,中学校が良いという優劣の立場ではなく,特徴的に校種それぞれには,独特の文化や雰囲気があります。
その中の「良さ」に着目した提案でした。
今回はその第2弾,中学校の良さから,小学校の学級経営や授業作りに活かせる点についてお話ししたいと思います。

中学校からみた小学校改善プロジェクト

中学校では,教科担任制で授業が行われることや,担任だけでなく副担任などの複数の教員で指導に当たることが,小学校との大きな違いです。
小学校のように,一人の担任が,ほとんどの時間,児童の指導にあたるといった形式ではありません。
なので,僕も中学校勤務で一番苦労したのは,生徒の顔と名前を覚えることでした。
(僕は理科ですので160人位ですが,私の嫁は家庭科で,1000人近くに授業をしているとのこと…)
また,部活動など,授業以外の活動や行事なども充実しています。
そんな環境の中で,以下にあげる4点が,中学校の良さだと私は感じています。
  1. 行事で育てる
  2. 進路を見据えた指導
  3. 「教えること」と「学ばせること」を意識した授業
  4. チームで指導する
それでは,それぞれの視点で,小学校の学級経営や活動の進め方を見つめ直してみましょう。

1. 行事で育てる

中学校は,体育大会や合唱コンクールなど,生徒が中心になって活動することが多くあります。
そこで大切にしていることは,「リーダーを育てる」ということです。
発達段階からすると,小学校では,教師の手立てにかかる比重が大きいのは確かです。
高学年になれば,運動会の応援団などのリーダーも出てきますが,ほとんどは教師が企画し,準備をします。
任せるのは難しい部分もありますが,リーダーを育てることで,集団は成長しますし,協力や友情といったことを意識させる場面が出てきます。
一年間を見通して,行事などで実行委員などを作り,時間をかけて育てていくといいと思います。
また,行事の達成感を感じさせることです。
中学校では,まるでドラマの様な涙を流したり,本気になって嬉しがったりするなどの瞬間が行事で見られます。
ぜひ小学校でも,運動会や音楽発表会など,それぞれの行事に向けて,気持ちと,自分たちの役割を意識させ,達成感が感じられるような手立てを行うことが大切だと思います。
そのためには,時代に逆行するかもしれませんが,「競う」といったことも,どこかで必要なのかもしれませんし,「失敗させる」といった経験も必要かもしれません。

2. 進路を見据えた指導

小学校の先生方の多くは,各学年の終わりや小学校の卒業式をゴールとして,子ども達を育てていらっしゃると思います。
私もそうでした。
小学校の卒業式,その姿が,到達目標のように見え,そこに向けて指導をしてきました。
しかし,中学校では卒業時に人生の大きな進路決定があり,その進路によって大学や就職先など,その後の人生も大きく変わってきます。
ですので,大人になった姿を見据えて,進路指導を行っていきます。
そこで小学校では,まず中学校の礎となる小学校6年間という意識のもと,中学校の卒業までの姿を意識して育てていくといいと思います。
例えば,こんなことを考えたことはありませんか?
・今目の前の宿題が提出できない児童が,中学校になったらいきなり提出できるようになるのか
・忘れ物が多い児童,中学校でなくなるのか    などです。
中学校で,気持ちを入れ替えて,頑張る子どもが多いのも確かですが,中学校の先生方のつぶやきはこうです。
「もっと小学校で育てて欲しい・・・」
小学校では頑張って育てているのですが,残念ですよね。
大切なのは,将来的どうなるかのビジョンをもって指導を行っているのか,目の前の指導に追われてしまうかの違いだと考えます。

3. 「教えること」と「学ばせること」を意識した授業

中学校では,どちらかといえば講義型の学習が多くなります。これは,前回の記事では,小学校の様な「話し合い」や「探究型」の学習を取り入れてもいいのではないかという趣旨で述べました。
しかし,小学校ではそのバランスが,どちらかというと活動に大きく偏っているように感じます。
そこで,小中の折衷案にはなりますが,「教えること」と「学ばせること」を意識した授業の整理を行ってはどうでしょうか。
教師の簡潔なわかりやすい教えがあり,それを使って学ぶといった学習の形態も,小学校でも取り入れてもいいのかとも思います。

4. チームで指導する

中学校の一番の特徴は,やはり生徒指導ではないでしょうか。
小学校では,学級経営という視点で各担任の先生にゆだねられる部分は多くなります。
共通実践を行っているように見えて,実は,Aクラスではこの力がついていなくて,Bクラスではこのきまりは許されていて・・・などと,判断基準さえもバラバラなことがあります。
様々な先生に出会うことは,子どもにとって大切だと思います。
しかし,保護者目線で言われることは,「今年はあたりだった」「新任だから,一年間,我慢するしかないわね」などといった視点であり,クレームの多さも,この辺りが弱点であると考えます。
中学校のように,複数の先生の目で,子ども達を見つめていくと,いいことがたくさんあります。
例えば,学級というより,学年や学校全体のきまりや判断基準で指導を行うため,ルールづくりがしやすいことです。
なぜ指導するのか,その根拠が職員の中で共有化されているため,誰もが同じ視点で指導できます。
また,教育相談の面でも一利あります。
ある先生とは相性があまりよくない生徒でも,自分のラポール(心が通い合うこと)が築ける先生がいれば,安心して学校に来れます。

おわりに

2回にわたって,小中の互いの良さを見つめ,連携し,改善できる視点を探ってきました。
しかし,それぞれの小中の実態は地域により違う部分が大きいと思います。
今回お話ししたのは,私の私見ですが,一番申し上げたいことは,まずは,ご自分の小中学校の中で,お互いに学べることを探し,活かせる部分を探る事が大切だということです。
小中連携の会議で,お互いの欠点やできていない事ばかりを言い合って,険悪な雰囲気になるのではなく,お互いが学び合え,子どもをどう一緒に育てていくかを考えることが,真の小中連携だと思います。
みなさんもぜひ,このような視点で,連携してみませんか?

今林 義勝(いまはやし よしかつ)

福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝
小中人事交流での小学校と中学校の両方の経験を活かし、9年間を見通した教育活動を行っています。また、「活用型問題解決による理科」の実践研究が現在のテーマです。

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