2016.12.30
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成績づけにもの申す -あなたの評価に愛が見えますか?-

どの学校にもある成績表。名称は違えども、各教科の成績と生活面の所見を書き、学期の終わりに渡しますよね。

さて、その成績表作り。あなたは、どんな価値をおいてつくっていますか?

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

どの学校にもある成績表。名称は違えども、各教科の成績と生活面の所見を書き、学期の終わりに渡しますよね。3学期制の学校は、つい先日子ども達に成績表を手渡したことでしょう。

さて、その成績表作り。あなたは、どんな価値をおいてつくっていますか?

「あなたのお子さんはこれができていません!」とまるで印籠を突きつけるかのごとく、成績表で見せつけるものではありません。

かといって、何をどう見ていいのかわからないような、甘い付け方では、子どもも保護者もこれからどこをどう努力していいのかわかりません。

確固たる視点で評価し、そして何より、納得とこれからの努力を見つけられる表現が、成績表に求められるのです。

所見は“記録”ではありません

本校では、1学期は個別懇談を行いますので所見を書きませんが、2学期3学期は、文章表現で所見を書きます。この所見づくりに、私は新任の頃から苦労してきました。だから、悩んでいる後輩には、私が書いた所見のコピーをプレゼントすることもあります。わりと今の若い世代は、マニュアルをもらうことに慣れていて、与えてもらって当たり前の人もいますが、私たち世代が新任の頃は、教師は、職人。先輩の所見を見せてもらうなんてありえませんでした。だって、その人、その人の専売特許なのですから。ですから、懇切丁寧に教えてくださる先輩が周りにいる方は、感謝の意を持ち、表し、そして、いずれ自分が先輩になったときに、惜しみなく与えられる人になってくださいね。

では、本題に戻りましょう。所見は記録ではなく、教師の思いが入っているものです。

例えば、

「自分からすすんで発表することができました。友達ともなかよく過ごすことができました。」

その所見を読んだとき、「あ、○○くんのことだ」とわかりますか?

具体的な記録から、教師の感じたことやこれからの期待をこめた所見にしたいものです。

過去に書いた所見を少し、紹介いたします。賛否両論あると思いますが、それをきっかけに自分の所見を見直してもられると嬉しく思います。

『感受性が豊かで、国語科の読み取り、道徳や学級会での発表など、こちらの胸が熱くなる程の発言でいっぱいです。国語科「海のいのち」では、豊かな読み取りと表現力で学習を深めました。語り発表会では、思いのつまった表現で詩を朗読するだけでなく、全員の発表に対して、感想やアドバイスを述べ、感心しました。さらなる飛躍のために、提出物を忘れないなど、苦手なことに努力できる姿勢を伸ばし、頑張って欲しいです。』

『誰に対しても公平・公正に接することができ、級友の多くが支えられています。休み時間も授業中も、笑顔いっぱいに過ごす姿が印象的です。席が一番後ろでも、真っ直ぐな眼差しときらきらした笑顔で教師の話を聞き、こちらが元気をもらうほどでした。学習に対しても意欲的です。理科のノートは、常に意欲の高さを感じ、特に「生物同志のつながり」では、生態系のバランスのすばらしさを実感しながら学習を進めることができました。』

私は、学習面、生活面の両方を必ず書くことを意識しています。

自分なりのパターンを決めて、具体的な事実とそれに対する評価(担任の思い)を書くように心がけています。

C判定は、あなたの指導のあり方も問い直すべき

一番低い評価をつけるとき、教師も心苦しく思う人がほとんどでしょう。

一番低い評価のめやすとして、テストができていないから、ノートがかけていないから、催促しても提出物がでていないからなど、あげられますね。

では、テストができていない児童に対して、あなたはどれだけの補充指導を行いましたか?

担任として、どこまで指導できたでしょうか。それを保護者に説明できますか?

担任として十分に指導をした上で、それでもここをがんばってほしい、だから、C判定ですという評価でありたいものです。

その上に、今年、私は1年生担任なので、成績表を渡すまでに、保護者の方と連携を密にすることを心がけました。1年生の学習はすべての基礎です。そして、以前のつれづれ日誌にも書いたように、保護者の方のご協力で子どもの力はぐっと伸びます。人生を変えます。(つれづれ日誌保護者との連携を検証する)成績表をわたすまでに、たくさんの時間があります。その時の連絡の仕方も、保護者の方にすべてを託すのではなく、一緒にがんばってこの子を伸ばしていきましょうという思いを必ず伝えるようにしています。保護者も教師も、子どものよりよい成長を願ってやまないのです。その思いをいつも共有するのは、私にとっては当たり前です。でも、中には、事実をつきつけるだけで、思いを表現できておらず、保護者から誤解を招く場合もあります。大事なのは、この子をよりよくしたいという思い=愛です!

成績表は保護者あて。子どもには世界に1つだけの学級通信

新任から20年、成績表と一緒に子どもたち一人ひとりにメッセージを書いた学級通信を渡していました。今年は1年生ということもあり、メッセージはしていませんが、学級通信の7割分には、クラス全体へのメッセージをかき、スペースをあけて人数分印刷します。そして、夜なべして、空けたスペースに○○ちゃんへと一人ひとり宛に、メッセージを書きます。成績表の所見は、保護者の方にあてたものです。子ども一人ひとりに、メッセージを書き手渡していました。そこには必ず、「大好きだよ」の言葉を添えていました。先生からのラブレターです。

うれしいことも保護者の方と共有して

学校での成長は、お家の方にはタイムリーには見えないんです。

教師が見ている今の子どもの成長は、数ヶ月、もしくは、数年経って親に成長としてみえるものなんです。これは、私も母親ですので、その実感からです。

親は、特に母親は心配がつのります。お家の子どもの様子も、足らないところを見てしまいます。そういう性なのです。だって、自分の命より大切な我が子なのですから。

だから、学校の成長とお家の様子にはタイムラグがあることも、保護者の方にはお話します。

で、2学期も終わりになると、たくさんの成長が見える瞬間がありますよね。

それを、なかなか話す機会がないので、私は、連絡帳に書いたり、連絡帳に書く時間が無いときは、放課後お手紙を書いておいて、次の日の連絡帳に貼ったりして連絡しました。

本当に、私もうれしかったんです。担任が感じることが、一番大事。

だから、伝えたくて仕方なくて。

それは、授業中のことというよりは、お楽しみ会をつくる場面だったり、終わりの会の後の場面だったり、些細なところにふと表れるものでした。

私がお手紙を渡した次の日、丁寧なお返事が返ってきました。

「先生のお手紙を読んで、うれしくて涙がポロポロあふれてきました。」

だから、これからの子育てもがんばれる、そんなお返事でした。

愛のある表現を心がけましょうね

教師は、子どもの成長を願っている方がほとんどでしょうし、このつれづれ日誌を読む教師の方は、志も高い方が多いと思います。ただ、あなたの中にある子どもへの“愛”を、余すところなく表現できているでしょうか。言葉足らず、表現足らず、笑顔足らずになっていないでしょうか。成績表、日々の見取り(評価)それを、子どもにどう表現していますか?あなたの愛が見えますか?1年生でも感じています。6年生ならなおさら、中高生ならもっとです。

成績付けは、印籠ではありません。

日々の言葉も評価です。

どちらにも、あなたの愛(子どもをよりよく育てようとする思い)は見えますか?

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

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