2016.09.15
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

保護者の力に感服 1年生の夏休みは人生を支える ―保護者との連携を検証するー

前回、保護者との連携について書きました。今回は、細かなやりとりも紹介し、その検証を行います。

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

『1学期の保護者との連携のキーワードは、「素早さ」』

1年生1学期の「のびしろ」は、6年間の中で一番大きなものです。
1日1日新しいことを吸収するこの時期に、できないことへの対応をないがしろにしてしまったら、成長率は、下がってしまいます。
成長率が下がっても、1年生の学習内容や生活の力は、年齢とともに、必ず身につくので、教師の対応能力が低くても、片付いてしまうことも多いでしょう。
のびしろの大きなこの時期に、しっかりのばしてあげないと!!
また、1年生は、お家の方の影響力が大きい時期です。
だからこそ、素早い対応そして前回にも申し上げた「愛のある対応」で保護者とつながっていくことが重要なのです。

1学期は、特にこの対応の素早さを心がけました。

初めてのたしざんの宿題、理解できない子がいました。しっかりものの女の子でした。大切なスタートのこの時期、お家の方にすぐ連絡を入れました。
1日目、学校で個別指導、2日目も同じように間違えたので、連絡帳にメッセージを書きました。素早い対応がよいからと学校で何も指導をしていないのに、お家に連絡をいれるのは、いただけません。愛ある対応ではなく、お家の方への押しつけになってしまいます。
1日目は学校で個別に指導、それでも定着が難しそうなので、2日目に連絡は、最短です。

「初めてのたしざんの宿題に戸惑っているようです。とっかかりをつかめていないだけだと思います。大事なスタートのこの時期、お家で見ていただけるとありがたいです。」
すると、すぐにできるようになりました。
お母さんは、「すぐに連絡をいれてもらって、本当にありがたい」とおっしゃいました。しっかりものの女の子は、優しいリーダーに成長しつつあります。

ものの管理が苦手で、だらしないように見える男の子。提出物もままならない子が、どのクラスにもいると思います。時に厳しい指導も有効です。ただし、「この子はだらしない子」とレッテルを貼っていませんか?そのような教師の対応では、子どもは心を閉ざしてしまいます。「どうせ・・・」そんな姿勢をつけてしまいます。
1年生とはいえ、保護者の責任ばかりにしてはいけません。
「明日には持って来られますか?お母さんに自分で言うことも大事ですよ。言えるかな?」1日目は必ずこう言います。
その後、1~2日待っても提出物がでない時に連絡帳にメッセージを書きます。
「○○が見あたらないんです。まだ一人で準備は難しいようで、お家の方も一緒に見ていただけるとありがたいです。」
やりとりはこれで終わりません。
提出物を持ってきたら、
「今日提出できました。私が何も声をかけなくても、自分から提出できました。成長がうれしいです。」
または、「まだ自分からは提出できなかったので、自分から先生のところにもってくるんだよと声をかけました。自立に向けて学校でもよく見ていきますね。でも授業中は、~ことができたんです。」
保護者の方は提出物を持たせたものの、少なからず大丈夫かなと心配が募るものです。学校の様子を伝えて、しかも、ちょっとでも成長している部分を見取って、伝えます。保護者の方に安心感をもってほしい、そして親としても前向きに頑張ろうという姿勢を培ってほしいと思うのです。
保護者の方からのお返事に「いつも丁寧に見ていただいて本当にありがたいです。少しは成長しているのかなと嬉しく思います。」という言葉を頂きました。
この男の子。文字を書くことも苦手だけれど、萎えることなく一生懸命がんばっています。大事なことは、きちんとお母さんや先生に言えます。見えにくいけど、頑張ろうとする姿勢がいつもあります。

『1年生の夏休みは 人生を変える』
夏休み、お家でいっぱい頑張って、ひらがなを読むことも、書くこともできるようになって教室に戻ってきた子どもたちがいます。1学期に、懇談や連絡帳を通じて、お母さん方と一緒にがんばろうと話をしてきた子どもたちです。
夏休みの宿題もお家の方といっぱいがんばったのが、わかります。
お友達の名札を読める、スムーズにひらがなを書ける、目を見張りました。

もう、感動でいっぱいのスタートでした。職員室で同じ学年の先生に、「もう感動やねん」と話しました。それは、9月の2週目が過ぎても続いています。文字が書けるということだけではなく、たくさんの成長につながっているからです。周りの子が手助けしくれることがたくさんあるのですが、それに対して、「ありがとう」といっぱい言えるようになっていたり、昼休みには、級友と運動会のダンスをいきいきと練習していたり。

また、こんなシーンに目頭が熱くなりました。
久しぶりの学校で、連絡帳を書くのに、悪戦苦闘する男の子。1学期には書けるようになっていたのに、なかなか書けない。すると、その周りの子どもたちが、「次はここだよ」と手助けしてくれます。1学期から、自然と助け合う子どもたちなのですが、その男の子が書き終わると、一緖に喜んで、子ども同士ハイタッチ!
私はよくハイタッチをします。1年生は、学年全体で地区別に運動場に並んでから下校をしていますが、できるだけ全員一人ひとりに「明日も笑顔で来てね。」とハイタッチします。6年生をもったときも、さようならのあと、ハイタッチをします。
ふれあうことは、人の心に明るさをもたらします。
そんな私のやることを、子どもたちは真似するのです。
子どもと私がハイタッチをすることは今までもあったし、私が促したときに子ども同士ハイタッチすることはあったけど、自分たちからハイタッチしている。感激でした。

『大きな「はじめの第一歩」』
算数では、今、20までの数の並び方の勉強をしています。「黒板に書きながら、考えていることをお話してみて」と促すと、理由を言いながら、書き込みながら、発表できました。そして、それを周りが聞いています。担任の声じゃないお友達の声を聞いているのです。最後に男の子がふと「いっぱい発見があったね」とつぶやきました。「どんな発見かな?」対話で授業を振り返りました。振り返りは、書くことばかりでなく、低学年は、対話型の振り返りが有効です。
「13は10と3のこと。全部「10と」だから、こっち(一の位)を見たら並び方がわかるよ」など
いっぱいお話したい子供たち。チャイムがなって、授業終了。5時間目だったので帰らないといけないけど、黒板前に寄ってきて、自分の発見をお話してくれました。
また別の日の算数の終わり「もっと算数したかったわ。」と大声で言う男の子。今まで授業中にまっすぐ座れなかったような子です。

夏休みのご家庭の関わりに頭がさがりますし、1学期の日々の過ごし方がこんなに子どもたちに息づくなんて・・・1年生をもってあらためて見えてくる教育のすばらしさ、大切さが胸の奥までしみこみます。

T.Tの先生も、子どもたちの成長を感じてくれ、私が、「本当にお家の方のおかげ。」と言うと、
「松井先生の熱意が親御さんを動かしているんだと思うよ。大きなはじめの第一歩という感じがするよ。」と。

子どもたちは、それなりの教育をしても、もっといえば、放っておいても普通に成長はします。
しかし、一人ひとりの最大の成長を促そうとすることを、私たち教師は追い求めるべきなのです。それが教育者です。そんな学校生活を送る子どもをみて、保護者も、親として成熟し、喜びの幅を広げられるようになるのだと思います。

でもやっぱり、母の愛、父の愛はすごい。
母としての自分を省みながら、この投稿を閉じたいと思います。

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

同じテーマの執筆者
  • 松森 靖行

    大阪府公立小学校教諭

  • 鈴木 邦明

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師

  • 荒畑 美貴子

    特定非営利活動法人TISEC 理事

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop