前回の記事に書いたような否定的な視点で,小中のお互いの改善点を出し合うことは,悪いことではありません。
しかし,あえて「良さ」を見つめてみると,意外と小中連携の改善の方向性を示す視点になると考えています。
よく人間の「良さ」を見つめると,その人から多く学ぶ事ができると言いますが,小中連携においても同じことが言えると思います。
では,それぞれの「良さ」って何でしょうか。
今回は,小学校の「良さ」を活かした中学校改善のアプローチについて書きたいと思います。
もちろん,学校によって取り組んでいらっしゃることは違うと思いますので,そこはご容赦ください。
小学校からみた中学校改善プロジェクト
多くの小学校が取り組んでいることの多くに,以下の5つの事があげられます。
(1)学習規律 姿勢・聞き方・話し方 など
(2)予防的生徒指導
(3)協同的な活動
(4)学力向上の取り組み
(5)授業力をチームで作る
そこで,これらを中学校改善の視点として,私が以前いた中学校では,小中連携からみえた中学校の改善の視点として実践しました。 (1)学習規律 姿勢・聞き方・話し方 など
小学校での学習規律への指導は,小学校一年生の「グー・ピタ・ピン」から始まり,腰骨を立てるなど,様々な手立てが存在します。
しかし,中学校では「姿勢を良くしろ」などといった声かけだけで終わることは少なくありません。
また,聞き方や話し方については,国語を中心に,担任がその学びを活かして全教科で指導していきます。
しかし,中学校では教科担任制ですから,国語でやってることは国語,小学校でどんな聞き方の学習をしたかなどは把握できていません。
ですので,意識的に全校で取り組むことが重要になります。
中学校ですので,教師だけでなく,生徒会や学級委員などのリーダーとしての取り組みにしても,効果があると思います。
私は,前任校では「学習のきまり」として,掲示し,先生方と生徒会の力を借りて,改善をしてきました。 (2)予防的生徒指導
よくある中学校の生徒指導は,「自主性に任せる」→「問題が発生する」→「厳しく指導,個別対応」→「行動が改善される」といった流れですね。
小学校でも,「荒れ始め」もしくは「荒れ」の学級集団での指導に良くありがちな指導です。いわゆる後手の指導です。
しかし,小学校の先生方は「ほめる」事を大切にしています。それは,一日中子どもと一緒の学級担任制だからこそできるのかもしれません。
私は,中学校の方がむしろ「ほめる」材料が多い気がしています。
クラスマッチや体育祭,合唱コンクールなどの行事など,様々な場面で,学級・学年の風土づくりを大切にしてみてはどうでしょうか。
中学校の先生で,学級経営がすごいと思った先生の多くは,厳しさの中に「ほめる」事ができるような種まきをされていると思います。 (3)協同的な活動
僕が最初に中学校に赴任して,空き時間を利用して他の先生方の授業を見させてもらいました。
また,ここぞとばかりに様々な全国の中学校にお邪魔し,授業を見せていただきました。
そのほとんどが一斉授業で,しかも,教師がほとんどしゃべって,生徒はノートをとる姿です。
「だって授業内容多いから・・・」「どんどんやらんと終わらんもんね」
「教えてプリントをどんどんさせた方が定着するけんね」
ほとんどの先生に「なぜ一斉授業か」を聞いた時に,最初に出てくる理由は,「内容の多さ」です。
確かに,定期テストにも追われ,学力をつけることが保護者から要求され,定着させなければいけないので,効率のいい一斉授業が選ばれます。
しかし,友達と協力して話し合いの中で解決する体験や,教えあったり学びあったりしながら学ぶ事も多くあります。
まさに「アクティブラーニング」という言葉は,これから中学校で取り組むにあたって,小学校の学び方を参考にできる部分があると思います。 (4)学力向上の取り組み
中学校の先生方は,教科で免許をお持ちなので,専門性があり先生方の知識も豊富です。
なので,中学校の先生が小学校の授業を見て,「この実験はこういう仕組みなのになあ」とか「このたし算のやり方も,中学校では役に立たないなあ」など,不満を口にされることがありますよね。
この点は次回お話ししますが,小学校の苦しい所です。
しかし,手立ての面では,非常に優れた実践や取り組みが多く見られます。
例えば小学校では,少人数指導や分割による指導などが盛んにおこなわれています。
中学校でも,授業がない先生方がT2として補助で入ったり,地域のボランティアの方を活用したりするなど,工夫によってきめ細やかな学習が展開できると思います。
また,小学校では家庭学習を大切にしていますよね。
学級担任なので,子どもの宿題を把握できるのは当たり前ですが,中学校はどうでしょう。
教科で好きに宿題を出していくので,ある日はものすごく多かったり,ある日はほとんどなかったりなど,子ども達も見通しが持てないこともあります。
そこで,クラスの後ろの黒板に教科の先生が宿題を書いたり,担任の先生や学年の先生に相談したりするなど共有してもいいと思います。
また,宿題をとじあわせて今週の宿題の冊子を作るなどの工夫もあってもいいですね。
小中の宿題の違いで大きくとまどい,課題のプリントが出せなかったりして,いつも教師から指導され自信を無くしてしまう子どももいるようです。 (5)授業力をチームで作る
中学校の先生方は,部活動や生徒指導で授業の準備まで手が回らないことも少なくないと思います。
小学校では,共通の学び方を共有したり,ある教科を学校のテーマ研修で取り上げたりしながら,授業づくりをチームで行っていきます。
しかし,それを中学校で行えない理由は,教科担任制なので,「教科の特性だから」と言われると,他の先生方は何も言えなくなってしまいます。
そこで,私が前任校で取り組んだのは,板書や発問など,教師の基本的な技能について,全体で授業力を高める研修を行いました。
意外にも,すべての教科・領域で行える基本的な研修が多いことに気付きます。
また,道徳や総合的な学習の時間などで,授業に関する研修を行うと,全員が同じ土台で議論することもできます。
おわりに
今回は,小学校から中学校へのアプローチで,小中連携を考えてきました。
中学校の先生方に提案させていただいた訳ですが,ほんの一例ですので,何か取り組めそうな部分があれば,ぜひ小学校の先生と一緒に取り組んだり,学んだりして欲しいと思います。 次回は,中学校から小学校へのアプローチをお話しします。
それぞれの「良さ」って・・・
前回の記事に書いたような否定的な視点で,小中のお互いの改善点を出し合うことは,悪いことではありません。
しかし,あえて「良さ」を見つめてみると,意外と小中連携の改善の方向性を示す視点になると考えています。
よく人間の「良さ」を見つめると,その人から多く学ぶ事ができると言いますが,小中連携においても同じことが言えると思います。
では,それぞれの「良さ」って何でしょうか。
今回は,小学校の「良さ」を活かした中学校改善のアプローチについて書きたいと思います。
もちろん,学校によって取り組んでいらっしゃることは違うと思いますので,そこはご容赦ください。
小学校からみた中学校改善プロジェクト
多くの小学校が取り組んでいることの多くに,以下の5つの事があげられます。
(1)学習規律 姿勢・聞き方・話し方 など
(2)予防的生徒指導
(3)協同的な活動
(4)学力向上の取り組み
(5)授業力をチームで作る
そこで,これらを中学校改善の視点として,私が以前いた中学校では,小中連携からみえた中学校の改善の視点として実践しました。
(1)学習規律 姿勢・聞き方・話し方 など
小学校での学習規律への指導は,小学校一年生の「グー・ピタ・ピン」から始まり,腰骨を立てるなど,様々な手立てが存在します。
しかし,中学校では「姿勢を良くしろ」などといった声かけだけで終わることは少なくありません。
また,聞き方や話し方については,国語を中心に,担任がその学びを活かして全教科で指導していきます。
しかし,中学校では教科担任制ですから,国語でやってることは国語,小学校でどんな聞き方の学習をしたかなどは把握できていません。
ですので,意識的に全校で取り組むことが重要になります。
中学校ですので,教師だけでなく,生徒会や学級委員などのリーダーとしての取り組みにしても,効果があると思います。
私は,前任校では「学習のきまり」として,掲示し,先生方と生徒会の力を借りて,改善をしてきました。
(2)予防的生徒指導
よくある中学校の生徒指導は,「自主性に任せる」→「問題が発生する」→「厳しく指導,個別対応」→「行動が改善される」といった流れですね。
小学校でも,「荒れ始め」もしくは「荒れ」の学級集団での指導に良くありがちな指導です。いわゆる後手の指導です。
しかし,小学校の先生方は「ほめる」事を大切にしています。それは,一日中子どもと一緒の学級担任制だからこそできるのかもしれません。
私は,中学校の方がむしろ「ほめる」材料が多い気がしています。
クラスマッチや体育祭,合唱コンクールなどの行事など,様々な場面で,学級・学年の風土づくりを大切にしてみてはどうでしょうか。
中学校の先生で,学級経営がすごいと思った先生の多くは,厳しさの中に「ほめる」事ができるような種まきをされていると思います。
(3)協同的な活動
僕が最初に中学校に赴任して,空き時間を利用して他の先生方の授業を見させてもらいました。
また,ここぞとばかりに様々な全国の中学校にお邪魔し,授業を見せていただきました。
そのほとんどが一斉授業で,しかも,教師がほとんどしゃべって,生徒はノートをとる姿です。
「だって授業内容多いから・・・」「どんどんやらんと終わらんもんね」
「教えてプリントをどんどんさせた方が定着するけんね」
ほとんどの先生に「なぜ一斉授業か」を聞いた時に,最初に出てくる理由は,「内容の多さ」です。
確かに,定期テストにも追われ,学力をつけることが保護者から要求され,定着させなければいけないので,効率のいい一斉授業が選ばれます。
しかし,友達と協力して話し合いの中で解決する体験や,教えあったり学びあったりしながら学ぶ事も多くあります。
まさに「アクティブラーニング」という言葉は,これから中学校で取り組むにあたって,小学校の学び方を参考にできる部分があると思います。
(4)学力向上の取り組み
中学校の先生方は,教科で免許をお持ちなので,専門性があり先生方の知識も豊富です。
なので,中学校の先生が小学校の授業を見て,「この実験はこういう仕組みなのになあ」とか「このたし算のやり方も,中学校では役に立たないなあ」など,不満を口にされることがありますよね。
この点は次回お話ししますが,小学校の苦しい所です。
しかし,手立ての面では,非常に優れた実践や取り組みが多く見られます。
例えば小学校では,少人数指導や分割による指導などが盛んにおこなわれています。
中学校でも,授業がない先生方がT2として補助で入ったり,地域のボランティアの方を活用したりするなど,工夫によってきめ細やかな学習が展開できると思います。
また,小学校では家庭学習を大切にしていますよね。
学級担任なので,子どもの宿題を把握できるのは当たり前ですが,中学校はどうでしょう。
教科で好きに宿題を出していくので,ある日はものすごく多かったり,ある日はほとんどなかったりなど,子ども達も見通しが持てないこともあります。
そこで,クラスの後ろの黒板に教科の先生が宿題を書いたり,担任の先生や学年の先生に相談したりするなど共有してもいいと思います。
また,宿題をとじあわせて今週の宿題の冊子を作るなどの工夫もあってもいいですね。
小中の宿題の違いで大きくとまどい,課題のプリントが出せなかったりして,いつも教師から指導され自信を無くしてしまう子どももいるようです。
(5)授業力をチームで作る
中学校の先生方は,部活動や生徒指導で授業の準備まで手が回らないことも少なくないと思います。
小学校では,共通の学び方を共有したり,ある教科を学校のテーマ研修で取り上げたりしながら,授業づくりをチームで行っていきます。
しかし,それを中学校で行えない理由は,教科担任制なので,「教科の特性だから」と言われると,他の先生方は何も言えなくなってしまいます。
そこで,私が前任校で取り組んだのは,板書や発問など,教師の基本的な技能について,全体で授業力を高める研修を行いました。
意外にも,すべての教科・領域で行える基本的な研修が多いことに気付きます。
また,道徳や総合的な学習の時間などで,授業に関する研修を行うと,全員が同じ土台で議論することもできます。
おわりに
今回は,小学校から中学校へのアプローチで,小中連携を考えてきました。
中学校の先生方に提案させていただいた訳ですが,ほんの一例ですので,何か取り組めそうな部分があれば,ぜひ小学校の先生と一緒に取り組んだり,学んだりして欲しいと思います。
次回は,中学校から小学校へのアプローチをお話しします。
今林 義勝(いまはやし よしかつ)
福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝
小中人事交流での小学校と中学校の両方の経験を活かし、9年間を見通した教育活動を行っています。また、「活用型問題解決による理科」の実践研究が現在のテーマです。
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