木々も紅葉し,日に日に寒くなってまいりました。
空気のにおいからも,冬の訪れを感じます。
さて前回は,子どもの持っている素朴概念を活かした理科学習をご紹介しました。
今回は第2弾として,全く違うアプローチの学習方法をご紹介したいと思います。
科学のきまりを繰り返し使って問題解決する
人類はこれまでに,文化や科学技術を様々な科学のきまりを,試行錯誤を繰り返しながら見つけてきました。
この学習では,はじめに科学のきまりを簡潔な形で学習し,その見方や考え方・知識を使って,別の事例に活用させながら問題解決をしていきます。
(詳細は,月刊「初等教育資料」2015年12月号(東洋館出版)などでもご覧いただけます)
それでは実際に具体的な実践で考えてみましょう。
小学校4年「水の三態変化」
この単元では,「水は,温度が変化すると姿を変える」という科学のきまりを活用していきます。
当たり前のように感じますが,子ども達は,水と湯気と水蒸気は別物だと思っていたり,沸騰で出てくる泡の正体は「空気」と思っていたりと,こだわりが強いものです。
また,その泡が空気だと思ってしまった子どもは,その泡が水蒸気であることをなかなか納得しません。
テストでも,あれだけ実験したのに「泡の正体=空気」と書かれて悲しくなったことがある方も少なくはないでしょう。
そこで,思い切って,はじめに科学のきまりを科学史や簡単な実験などを交えて教師が教えていきます。
ここでは,「水は温度が上がると,水蒸気という気体に変化する」というきまりです。
その後,フラスコの中に水を入れて沸騰させると,その「泡」は「水蒸気」という「水が変化したもの」という視点で観察することになります。
この観察では「何℃で変化したのか」,「水蒸気を冷やすと,水に戻るのか」・・・など,はじめに教えたきまりにさらに様々な発見が付加されていきます。
つまり,教師が「こういう視点で見てごらん」と自然科学を見つめる眼鏡を渡してあげることで,より詳しく様々なことに気付けるのです。
そうすると,「もっと冷やしたらどうなるかなあ」など,様々な問題が次々に子ども達の中から湧いてきます。
そこで学びを活用しながら,他の事例で問題解決を行っていくのです。
学習のメリット「はじめにきまりを教えてしまうなんて・・・」と思われるかもしれませんが,子ども達の事象を見つめる視点が焦点化していきますから,理科が苦手な子どもへの手立てにもなります。
さらに,活用の時間が大幅に確保できますので,子ども発想の問題解決が繰り返し行えます。
何よりも,子ども達の中に,「自分の力でどんどん新たな問題を解決できる」といった有能感が高まっていきます。
学力の視点でも,このような実践を積み重ねることで,全国学力・学習状況調査における活用力を問う問題の正答率が高くなったといった報告もあります。
おわりに「知識基盤社会」である現代に,科学のきまりを自らで見つける学習以外に,このような知識やきまりからそれを使って新たな問題を解決するような学習の形態があってもいいのではないかと思っています。
ぜひ一度試してみてはいかがでしょう?
理科の話が続きましたので,次回は,私の生き方とも関わる「小中連携」について触れることにいたします。

今林 義勝(いまはやし よしかつ)
福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝
小中人事交流での小学校と中学校の両方の経験を活かし、9年間を見通した教育活動を行っています。また、「活用型問題解決による理科」の実践研究が現在のテーマです。
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