2016.11.02
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子どもが「科学」する場を作る~Part1~

福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝 今林 義勝

はじめに

前回,自分の子どもの時の「理科」への苦手意識から,理科学習の問題点についてアプローチしてみました。
そんな理科への苦手意識を克服するための理科の授業への工夫について,私の実践をもとに2つの全く違ったアプローチを紹介します。

私の提案する2つのアプローチとは,以下の2つです。

子どものもっている既有考えをもとに問題解決を展開する

②科学のきまりを繰り返し使って問題解決する

これらは,全く異なる授業モデルですが,いずれの授業でも子ども達の苦手意識を克服することはできると考えています。

それでは,2回にわたってそれぞれの授業の一場面をもとに,考えてみましょう!

今回は,①の実践をご紹介します。


子どものもっている既有考えをもとに問題解決を展開する

子どもがこれまでの経験や学びの中で得た既有の知識を「素朴概念」と呼びます。

そんな素朴概念をきちんと整理し,その概念をもとに授業の中で実験や観察の手続きを通して,新たな知を獲得していきます。

しかし,知っていることを交流させるというだけでは,経験の豊富な子どもや塾で知っている子ども達だけが活躍する授業になっています。

そこで・・・


「ふりこの動き」の実践から

第5学年「ふりこの動き」の実践事例をあげてみます。

ふりこの一往復する時間を決めるのは,ふりこの「重さ」「振れ幅(角度)」「長さ」のどれでしょう?

正解は「長さ」ですが,大人でも意外とかなりの方が間違えるのが,「重さ」です。

「重さ」は関係あると答える子どもは,8~9割いるのではないでしょうか?ちなみに,学習前の本校のアンケートでは,84%の子どもが関係あると答えました。

そこで,「重さ」について,さらに詳しく聞いてみます。

すると,「重いほうが速く動く」と「軽いほうが速く動く」の意見は真っ二つです。

「重いほうが速く動く」は,ものを落とした時,重たいほうが速く落ちるから

「軽いほうが速く動く」は,ものを転がしたら,軽いほうが速く転がるから

そんな素朴概念が出てきます。

つまり・・・

子ども達は,「ふりこの重さ」について考える前に,「重さ」についての概念があやふやなのです。

そこで,「重さ」について考えていきます。すると,たくさんの考えが出てきます。

中には,科学読み物で読んだ重力の話をしてくる子どももいますし,ボーリングの時の経験や,滑り台,ブランコ・・・色々な考えるもとが,この予想には存在します。

私は,このような予想にこそ,予想し,話し合う意味があると感じています。

誰もが考える土台や経験を持っている中で,全ての子どもが考えに参加できる場を保証しているからです。

まとめると,

「知っている人」「経験豊富な人」が書けるレベルの予想ではなく,もっと科学の本質について追究しようとする中に,誰もが参加できる本当の予想の意味を見出すべきではないでしょうか。

ちなみに,これらの予想をもとに,実際に重さの違う水風船を3階から落としてみます。

すると・・・「パシャッ」

同時に水風船は地面にあたり,割れます。

子ども達の中に,「重さ」への新たな考えができました。

次回は・・・

科学のきまりを繰り返し使って問題解決する「活用型問題解決」についてお話しします。今回とは全く違う立場で授業を進めてみます。お楽しみに。

今林 義勝(いまはやし よしかつ)

福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝
小中人事交流での小学校と中学校の両方の経験を活かし、9年間を見通した教育活動を行っています。また、「活用型問題解決による理科」の実践研究が現在のテーマです。

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