2020.09.16
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きゅうりのお話を聞いて学んだことを発表しよう 【食と生産】[小5・社会]

この春、きゅうりを苗から栽培したところ、くるんと曲がったきゅうりがたくさんできました。一方、お店で売られている野菜は、同じ長さで、箱にきっちり並んで売られています。

同じ大きさの野菜を育てるには、生産者の工夫や苦労がきっとあるはずですが、校区には畑がないため、実際の栽培の様子を目にすることもありません。身近な野菜や食べ物は、作った人の知恵や苦労によってできています。食品会社の工夫や苦労を感じてもらえることをねらいとして、授業を考えました。

授業情報

テーマ:わたしたちの食料生産

教科:社会

学年:小学校5年生

自分ならどちらのきゅうりを買うか

授業の冒頭、子どもたちに2枚の写真を示すことから始めました。「2本100円のきゅうりと4本100円のきゅうりどちらを買いますか?」担任の先生の質問に子どもたちは、「4本100円。1本25円やから」とすぐに計算して答えます。やはり価格が安い方を選ぶのは当然です。中には、「1本50円のほうがおいしそう」と答える意見もありました。

 次は,スーパーマーケットで購入したまっすぐなものと、八百屋で購入したCの形に曲がったきゅうりの実物を見せて、「じゃあ、形がまっすぐなきゅうりと、曲がったきゅうりならどっちを選ぶ?」と聞きます。

こちらの質問には、「まるかじり向きだからまっすぐがいい」「まっすぐなほうが切りやすい」「まっすぐの方が、栄養がありそう」「大きいからまっすぐの方がいい」とまっすぐなきゅうりをほとんどの子どもが選びました。「飾りにするのに曲がっている方がいいかも」「曲がった方が栄養がありそう」「切ったら同じなんじゃない?」と少数ですが、曲がったきゅうりを選んだ子どももいました。最後に、「そんなに曲がったの、本当に売ってるの?」という意見もでました。

育て方を想像する

子どもたちの発言を受けて、「スーパーマーケットに行くと、まっすぐなきゅうりしか見かけないけど、どうやって育ててると思う?」と問いかけます。

  • 上からつるす
  • 専用の筒に入れる
  • マメにお手入れをする
  • 毎日水をあげる
  • 種の向きを上にしたらいいのではないか

答えは出てこないのではないかと思っていましたが、正解に近い意見がどんどんでてきました。

栄養教諭の話を聞く

栄養教諭からきゅうりの栽培の工夫を話します。水と栄養をあげるタイミングや量がポイントだそうです。また,農家さんによっては、地面の上に、ツルをはわせて育てている様子も見たことがあったので、いろいろな方法があることを伝えました。収穫したものは、少しの変形なら形を整えて出荷します。曲がったものは、近くの農産物直売所で規格外野菜として、農家さんが値段をつけて売ることになるそうです。また、テレビで見た食品会社の取り組みを紹介しました。この会社では、規格外野菜に寒天を混ぜて、シート状にし、新たな食品に加工していました。食品ロスを減らすための食品会社の取り組みは、子どもたちには予想外のことだったようで、食品の無駄をなくすための工夫と感じたようです。

 最後の質問として、「まっすぐなきゅうりも、曲がったきゅうりも栄養は同じです。それなら、新鮮ではないまっすぐなきゅうりと、新鮮な曲がったきゅうりだったらどちらを選びますか?」という質問を投げかけたまま、栄養教諭の話を終わりました。

買い物する時のポイントに気が付く

子どもたちが、今日の内容をどんな風に受け止めたのかを知るために、ふりかえりシートには、気になったことを書いてもらいました。子どもたちからは、規格外野菜や、農産物直売所という言葉がでてきました。また、栄養はどちらも同じなんだと改めて気が付いた子どもたちもいました。

その後、グループで話しあった意見は、「規格外でも捨てないように工夫をしている」「野菜は苦労や工夫がつまっている」「きゅうりは曲がっていても栄養は同じくらいある」など、まとまりのある言葉で発表をしてくれました。

個人のふりかえりからは,

  • 形だけで値段が高くなるのは、なぜだろう?
  • がんばって農家さんが作った食べ物が無駄になると思うと、見た目を気にせずに買おうと思った
  • きゅうりは見た目だけで判断してはいけない。これからは、産地に加え、鮮度もしっかり確認して買いたい

など、今までの体験と今後の購買行動が交わる意見もでました。

授業の展開例
  • 規格外野菜を活用する方法を調べてみましょう。
  • 家庭や社会全体の食品ロスについて、考えてみよう。

雪本 純子(ゆきもと じゅんこ)

堺市立英彰小学校 栄養教諭
今回の授業から、今後の農産物の学習においても、いろいろな角度から考えが深まり、食べることが好きになる子どもたちが増えることを願っています。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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