2020.12.28
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「おやさいクレヨン」で考える食品ロス 【食と社会】[小5・社会]

「おやさいクレヨン」は、お米と野菜から作られたクレヨンです。米ぬかから採れた米油とライスワックスをベースに、収穫の際に捨てられてしまう野菜の外葉などを原材料に使用しています。食品ロスを削減するためにできることを考える授業に「おやさいクレヨン」を取り上げた5年生社会科の1時間の事例を紹介します。

本時の目標は、以下の通りです。

これからの日本の食料消費について、自分たちはどう行動すればよいのかを、資料や事例をもとに話し合うことによって今後の行動について関心をもつことができる。

食育の視点は、以下の通りです。
食品ロスの視点から環境や資源に配慮した食生活を実践するために何が必要かを考えることができるようにする。
<感謝の心>(思考力・判断力・表現力等)

本実践にあたって、「おやさいクレヨン」の生みの親である、mizuiro株式会社代表・木村尚子氏に協力いただきました。感謝申し上げます。

授業情報

テーマ:食と社会
教科:社会
学年:小学校5年生
時間:1時間

1.食品ロスについて知っていることを話し合う 

〇〇のクレヨンとは?

「〇〇のクレヨン」と板書し、授業は始まりました。「どんな言葉が入る?」と聞くと、「虹のクレヨン」「赤のクレヨン」「星のクレヨン」など子どもたちから次々に思った言葉が出てきます。

続いて、「クレヨンの秘密を考えるポスターを用意しました」と話して、自治体のポスターを示します。ポスターには付箋が貼っており、文字が隠れています。「ぜんぶ〇〇〇いかんぞう」と付箋紙を剥がしながら書かれている意味を見つけていきます。「ぜんぶたべなきゃいかんぞう」まで見えると、「分かった!ご飯のことだ」と子どもたちのつぶやきがあがります。

神奈川県の愛川町のポスターであることを説明し、「食べられるものだけをおいしく」と書かれていることを確認したあと、最後にはがした付箋紙には「ろすのん」がいました。食品ロスを少なくすることをみんなで考えるキャラクターであることを話し、黒板に「食品ロス」と書きます。食品ロスについて知っていることを聞くと、「食品をロスすること」「食べ物がまだ食べられるのに無駄にしていること」の意見が出てきます。続いて、「食品ロスはなくした方がいい?」と聞くと、子どもたちは大きくうなずきます。どうやって食品ロスを少なくしますかの問いかけに、「嫌いなものでもがんばって食べる」「残さずに食べる」「好き嫌いしない」「食べられる量を考えて買うとよい」「消費期限の近いものから食べていったらいい」と食品ロスを減らすアイディアが相次ぎます。

2.「おやさいクレヨン」の登場

「おやさいクレヨン」を子どもたちに紹介

「いっこうにクレヨンのことが出てこないね」と話して、黒板に「やさいのクレヨン」と書き、どんなクレヨンだと思うかを聞きます。「やさいのクレヨン」の言葉から思いつくことを自由に発表させ、クレヨンへの関心をより高めていきます。

「クレヨンは使うと減るから、クレヨンみたいに野菜も使った分だけ減らせる」「野菜の食品ロスに関係あるはずだ」の発言を受けて、mizuiro株式会社のホームページからクレヨンの製造工程の写真やクレヨンの写真を示します。「リンゴのにおいがついているクレヨンだ」「食べられるクレヨンだ」の発言の後、りんご、ゆきにんじん、とうもろこし、ごぼう、などが使われていることを説明します。「青森県産。加工の時に剥がれる皮が原料」と読むと、子どもたちから「あぁ」と、納得した声があがります。「すみずみまで使うんだ」の声を受けて、その言葉も板書します。

いよいよ、「おやさいクレヨン」を紹介します。子どもたちから歓声があがります。「においをかいでみたい」の声に実際にかいでみます。「トウモロコシのにおいがします」の発言にまた歓声があがります。「食品ロスを削減すること以外にもいいことがあります」と話すと、「自然な色が出る」「小さい子が食べてもだいじょうぶ」などの意見が出てきました。食品ロス以外に利点(食べても安全)について着目させ、食べること以外でも何かに変えることに着目させることができました。

最初にみんなが発表した意見は、消費者の立場からのものであったことを確認し、生産の場面により近い場所での食品ロスを少なくするアイディアを考えてみようと呼びかけます。

3.「おやさいクレヨン」をヒントに捨てられる野菜を活用する方法を話し合う

捨ててしまうものをよみがえらせる方法をグループで話し合います。グループ活動に際して、静電気で黒板に貼り付くホワイトボードシートの利点を確認します。さらに、実現可能性よりも多様なアイディアを引き出すことを大切にするように話します。

子どもたちは、「捨てられる野菜を使って、さらにいいことがあるといいね」「野菜の何が使えるかな」と話しながら、にぎやかに話し合いを始めました。子どもたちの話し合いに入って、「食べられなくてもいいよ」と声をかけます。

捨てられる野菜についてグループで話し合う

続いて、話し合ったことを黒板に貼ります。

・果物や野菜の皮を色画用紙に変える
・色のついた食べ物の皮を着色料にする
・皮を弁当の下にひく
・果物の皮を香水にする
・トウモロコシの毛のほうき
・ミカンの汁を固めて入浴剤にする
・ミカンの皮をスポンジにする

4.想像力が食品ロスを解決する

子どもたちのアイデアを貼りだす

他のグループのアイディアに質問はありませんかと聞くと、カボチャの皮のコップについて説明があります。次に、「『くさった果物の皮をポーチやマスクに変える』は、においが無理なのでは」の質問に「未来であればにおいもなんとかできるのではないかと思います」と回答してくれます。

授業の最後に「今日の勉強は、役に立ちましたか」と問いかけました。「想像力です」の子どもの感想に「そうか、食品ロスを解決するのは、一人ひとりの想像力が大切なんだということだね」と返しました。

想像力を働かせることの大切さについて、「おやさいクレヨン」の生みの親である、mizuiro株式会社 代表・木村尚子氏のお話を紹介しました。

木村氏はもともとはグラフィックデザイナーとして自宅を拠点に仕事と子育てを両立していました。2011年の冬のある日、夕飯の支度をする中で、野菜の色の鮮やかさを再認識した木村氏は、「野菜の色で絵を描いたら美味しそう」とアイディアの原石が浮かびました。その後、規格外等の理由で廃棄される野菜が多いことを知り青森県産の廃棄される野菜をリユースできないか考えたことが「おやさいクレヨン」誕生のはじまりです。


子どもたちの振り返り

  • 役に立ちました。どんなことかというと食品ロスと聞いたら残さずに食べるとかだと思っていたけど、リサイクルをする方法もいいなと思いました。野菜のクレヨンと聞いて、「食べられるクレヨン」と思っていたけど、捨てるところを使ってクレヨンを作るというすごいことを知りました。
  • 今日の学習は、役に立つかもしれない。学べたことは未来について考える想像力で、すみずみまで使うにはどうしたらいいのかというところでした。こういう社会に貢献できる力は必要です。
  • 私は、今日この学習をして、食品ロスを減らすためには「好ききらいしない」ぐらいしかないと思ったけど自分たちで考えていると、「あ!これもいけるだろうな!」というものがたくさんあって、考えれば考えるほどあふれ出てきました。
  • 今日の学習は役に立つと思います。特に一人の発想や思いつきが実際に実現したり、さらにたくさんの問題も解決できて、その中の一つの「やさいのクレヨン」もすばらしい思いつきだと思いました。このように今はできないことでも「やってみるか」が大事で問題を解決するきっかけになるので、思いつきはとっても大事だと思います。ぼくも考えは捨てないで実現に向けてチャレンジしたいと思います。
授業の展開例

〇新型コロナウイルス感染症の流行で生産、収穫されたが行き場を失った農水産物や加工食品を食品ロスにしないための取組が全国で広がっています。どのような取組があるのか調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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