2017.02.15
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目指せ! だしそむりえ 【食と暮らし】[小6・家庭科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第123回目の単元は「目指せ! だしそむりえ」です。

「だし」は和食の基本です。「だし」という言葉は知っていても、粉末だしやだし入り味噌が普及したことで、家庭でだしをとる機会が減り、実際にどんな食材からだしがとれるのか、どんな味がするのか、ということを体験したことがある子どもは少ないように思います。

そこで今回は、武庫川女子大学の藤本先生から提供いただいた「『日本型食生活』を学ぶ食育プログラム集」に掲載されている「『だし』そむりえになろう」という授業プランを基に、丹波市立大路小学校6年生と授業をした様子を報告します。5年生の時に学習した「ごはんとみそ汁」の発展として、家庭科教諭と栄養教諭のティームティーチングで1時間の授業を行いました。

味噌汁を飲み比べる

だし入り味噌汁はどっちかな?

だし入り味噌汁はどっちかな?

授業の最初はだし入りの味噌汁とだしの入っていない味噌汁の飲み比べです。どちらがおいしいか、違いは何なのかを考えました。その際、給食に毎日使用している味噌が地元で作られていることと、その味噌を使って作った味噌汁だということを子ども達に知ってもらいました。

紙コップに入れた2種類の味噌汁を班ごとに用意し、そこからスプーンで小皿にとって飲み比べてもらいました。飲み比べをしながら
「オレはこっちの方が好き」
と自分の好みを言う子もいて微笑ましかったです。他にも
「毎日飲んでいる家の味と同じ」
という子もいて、毎日味噌汁を飲む習慣のある子が多いことを嬉しく思いました。

スプーン1杯の試飲だったのでわかりにくいかと思いましたが、
「A(だし入り味噌汁)の方がおいしいと思う人?」
と尋ねた所、全員が手を挙げ、子ども達の味覚に感心しました。具体的にどんな違いがあったかを子ども達に尋ねると、
「Bは水っぽい感じがした」
「Aは家の味と近い」
など、たくさん意見が上がりました。その違いは「だし」の力だということを再度押さえ、黒板に「だし」の短冊を貼ります。

知っているだしの名前を発表する

次に自分達の知っているだしの種類を発表しました。「煮干し」「昆布」「かつお節」と次々名前が挙がりました。「干し椎茸」はなかなか出てこなかったので、
「学校で育てているものからもだしがとれます」
というヒントを出すと、自信なさそうに
「・・・椎茸?」
と答えてくれました。子ども達は椎茸からもだしがとれるということにびっくりしたようでした。実物を見せると、干し椎茸のサイズの小ささにもびっくりしたようでした。


だしの名前が出揃った所で、「そむりえになろう」という短冊を貼ります。
「『ソムリエ』という言葉を知っていますか?」
と尋ね、ワインのソムリエについて確認した後、
「ワインはまだ飲むことができないので、皆さんには『だしそむりえ』になってもらいましょう」
と伝えました。

だしを飲み比べる

活動の仕方を次のように説明しました。

  • 煮干し・昆布・かつお節・干し椎茸・粉末の5種類のだしがあること。
  • 1~5の番号の紙コップから、スプーンで少量を小皿にとって味をみること。
  • 味だけでなく、香りや色なども意識して飲むようにすること。
  • 飲み比べをしながら気づいたことをワークシートに記入すること。班で相談して良い。
飲み比べて気づいたことをワークシートに記入する

飲み比べて気づいたことをワークシートに記入する

その後、予め用意しておいた5種類のだしを実際に飲み比べて何のだしか、子ども達に考えてもらいました。だしだけを飲むことに慣れていないせいか、飲みづらそうにしている子が多かったです。それでも、だしを見たり匂いをかいだり飲んだりして、視覚・嗅覚・味覚をフル回転させながら、どの子もとても真剣に取り組んでいました。


一通り、飲み比べが進んできた所で、班ごとにだしの名前のカードを配布し、班でまとめた答えを黒板に貼りに来るように指示しました。貼り終わった後に、それぞれのだしを飲んで感じたことを子ども達に発表してもらいました。


それぞれのだしについての子ども達のコメントです。
【煮干し】魚の匂いがした。自然の味がした。
【昆布】昆布の匂いがした。少しネトッとした。
【かつお節】色が濃く、かつお節の匂いがした。
【干し椎茸】味も匂いも椎茸だった。
【粉末】いつも知っている味がした。家の味噌汁と同じような味がした。


発表の後、「どの班も正解です。」と伝えると、子ども達は正解できたことに驚いたようで、とても喜んでいました。大人でも難しい内容でしたが、結果的に全部の班で5種類のだしを当てることができ、感心しました。全体的に「煮干し」と「かつお節」で迷っている子が多かったように思いました。また、「干し椎茸のだし」はどの班も一発でわかったようです。
「嫌いやからすぐわかった」
というのが理由のようで、少し皮肉な結果でした。

だしの役割を知る

最後に栄養教諭から、だしの役割について話しました。まず、人が感じる味は5種類あり、それぞれの味(五味)について触れました。例えば、甘味は砂糖、塩味は塩や醤油、酸味は酢、苦味はゴーヤ……、
「では、うま味とはどんな味でしょう? 先程、皆さんが体験したはずです。実はうま味というのは『だし』の味なのですよ」
と話しました。続けて、「うま味」は日本人が発見した味であり現在では世界共通の言語(UMAMI)となっていること、だしとだしが合わさることでおいしさがアップする効果があることなどを話しました。

本時のまとめで、だしの役割について話す

本時のまとめで、だしの役割について話す

本日の授業のまとめとして「『だし=うま味』は料理のおいしさを生む大切な役割をしている」と伝えて授業をしめくくりました。最後の感想で、ある子は
「普段、味噌汁を飲む時にだしを意識したことがなかった。だしが料理にとって大切な役割をしていることがわかった」
と発表してくれました。


他の子どもからは、
「干し椎茸からもだしがとれることを初めて知ったし、とるものが違うだけで味が変わって、それぞれに特徴があって驚きました」
「だしに使う材料によって味が変わってくるし、だしとだしを合わせると、もっとおいしくなることがわかりました。うま味を出すには、だしが必要なのでだしをとって料理したいです」
「だしを飲み比べることはあまりないので、違いがわかったことは嬉しかったです」
などの感想があり、しっかりと授業のねらいをとらえてくれていました。


中には、
「煮干し・かつお節・昆布・干し椎茸が入っている粉末はあるのか気になったので調べたいと思いました」
という感想もあり、子どもの探究心をくすぐることも出来たようで、嬉しかったです。子ども達にとって馴染みの薄いだしですが、改めて意識づけや関心を持たせる良い機会となる実践ができました。

授業の展開例
  • 実際に「昆布」「かつお節」「干し椎茸」でだしをとってみよう
  • だしの種類ごとにそれぞれの味が生きる料理を調べてみよう

浅葉 仁美(あさは ひとみ)

兵庫県丹波市立春日中学校 臨時学校栄養職員 丹波市立春日学校給食センター勤務
春日中学校及び春日学校給食センターが配食している小中学校で食育の出前授業や、小学校教諭との食育授業に取り組んでいる。丹波市栄養教諭部会では、武庫川女子大学ふじもとゼミによる「日本型食生活」を学ぶ食育プログラム集に掲載されている授業プランを実践することとしており、この度、丹波市立大路小学校で実践した。小学6年生の家庭科担当の足立都(臨時講師)と浅葉とのティームティーチングによるものである。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・浅葉 仁美/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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