2023.09.18
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

公式の先にあるもの。円の面積の授業における探究学習(前編) 高知大学教育学部附属小学校6年「算数」授業リポート

今年度、高知大学教育学部附属小学校では「学びに没頭する子どもを育てる授業づくり〜協働的な学びと個別最適な学びを視点として〜」という研究テーマを掲げている。前編では、算数部の森寛暁教諭による授業の様子をリポートする。

【授業概要】

学年:小学6年生
教科・単元:算数「円の面積の求め方を考えよう」
単元の目標:円の面積の計算による求め方について理解し、図形を構成する要素などに着目し、図形の面積について考える力を養うとともに、円の面積の求め方を簡潔かつ的確な表現として公式として導いた過程を振り返り、多面的に粘り強く考えたり、今後の生活や学習に活用しようとしたりする態度を養う。
授業者:森寛暁教諭

円をどんどん細かく等分

7時間扱いの単元「円の面積の求め方を考えよう」の4時目を取材した。授業は、前時の課題「円をどんどん細かく等分して並べかえていくと、どんな形に近づいていきますか。」の振り返りから始まった。

電子黒板に円の分割図が映し出されると、子どもたちの視線は自然とそちらへ集まる。森教諭が「何分割からいこうか?」と問うと、子どもたちは口々に「16分割!」「32!」「限界まで!」と元気な声で答える。

分割した図形を変形させると、今度は子どもたちから「長方形だ」という発言が。それに対して、別の子からは「平行四辺形じゃない?」と異なる意見が出る。

森教諭は、さまざまな種類の分割を見せながら、「分割が少なければ平行四辺形に似ているけれど、分割が細かくなると長方形に近づいていくみたいだね」と、振り返りながら、本時の導入となる気づきを与えた。

式パズル①長方形の面積=?

森教諭が黒板への板書を始めると、子どもたちがバッとノートを広げる。森教諭の授業では、発表回数やノートも評価の対象と明示している。授業中に発表できなかったとしても、自分の気づきをノートに記すことで評価の対象となる。

森教諭が授業で用いている「式パズル」とは、公式を分解したカードが入っている巾着袋から、子どもたちがカードを引き、並べ替えて公式を完成させるというもの。中には「あたり」も入っていて、子どもたちはカードを引くことを楽しみにしている様子だ。

最初の式パズルの課題は【長方形の面積=】。長方形の面積の求め方といえば、【たて×横】であるが、まず出てきたカードは直径。「長方形の面積なのに、直径ってどういうこと?」「間違いじゃない?」と子どもたちからは困惑した声が漏れる。

続いて出てきたのが、「半分」のカード。教室は「なんで?」とザワザワ。3枚目に出てきたのは「円周の」。ここで「分かったかも!」という声が聞かれるも、自信はなさそうだ。「次のカードは?」と催促する声が聞かれる。

そして「円周率」と「半径」のカードが引かれ、式パズルを構成するカード「直径」「半分」「円周の」「円周率」「半径」の5枚が出揃った。

ここで、森教諭は「分かった!」と手を挙げた児童をあて、みんなの前で並べ替えて、なぜそう考えるのかを説明してもらう。頭では理解していても、説明するのは難しいもの。何人かで交代しながら、行き着いたのが、下記の公式だ。

長方形の面積=半径×円周の半分
      =半径×(直径×円周率÷2)

そして、半径×(直径×円周率÷2)をさらに変形させると【半径×半径×円周率】となり、【長方形の面積=半径×半径×円周率】という円の面積を求める公式と同じということが分かった。

ここまでの流れを子どもたちが理解しているかを確認し、2つ目の式パズルへ。それが、0.785という円積率を用いて円の面積を求める公式だ。

式パズル②円の面積=?

先程と同じ要領で、子どもたちが我先にと手を挙げ、あてられた人は巾着からカードを引く。今回はカードの数が多く、「直径」が6枚、「半径」が2枚、「円周率」が2枚、「3.14」が1枚、「÷2」が4枚用意されていた。

複雑に思えるが、一つ一つを紐解いていくと今まで習った内容である。まずは1行目が【円の面積=半径×半径×円周率】と埋まる。そこから2行目が【=直径÷2×直径÷2×円周率】と変化する。

挙手した子どもたちの中には、自信がない子もいて、カードを選ぶ手が止まってしまう。すると森教諭は「みんな、助けてあげて。」と、一言。するとすかさず、助け舟を出す子が現れ、式パズルが次々に埋まっていく。

3行目、4行目もそうして埋まっていき、完成した公式はこちら。

円の面積=半径×半径×円周率
    =直径÷2×直径÷2×円周率
    =直径×直径×3.14÷2÷2
    =直径×直径×0.785(円積率)

子どもたちの力で、【半径×半径×円周率】という公式以外にも円の面積が求められるという結果に行き着くことができた。

森教諭は「【直径×直径×0.785】でも、円の面積を求めることができるようになった。すごいねぇ。この公式は教科書に載ってないからね。みんなが自分のものにできたら使っていってね」と授業を締めくくった。

取材・文・写真:学びの場.com編集部

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop