2012.10.16
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だしそむりえ 【食と食品】[小5・家庭科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第七十四回目の単元は「だしそむりえ」です。

「だし」は和食の基本です。子どもたちは、「だし」という言葉は知っていても、具体的なだしの種類についてはあまり知りません。また、様々なだしを味わうことを経験する機会も乏しくなってきています。背景には、粉末だしやだし入り味噌で、素材からだしをとらなくても手軽に味噌汁を作ることができるなど、家庭でだしをとる経験が少なくなっていることがあると思います。

そこで、鰹節、煮干しなど様々な食材からだしがとれることを知らせ、実際に味わう経験を通して味や香りの違いに気づかせ、だしのうま味を実感させたいと考えました。

子どもたちが日本の伝統の味や自分の食生活について考えるきっかけとなるよう、5年生の家庭科「ごはんとみそ汁」の発展として、1時間取り上げてみました。

味噌汁作りを振り返る

前の時間まで取り組んだ味噌汁作りの学習を振り返ります。味噌汁を作る手順やポイント(実の切り方・味噌の入れ方)について確認した後、次のように話を進めました。
「だしをとるのに使ったのは?」
「煮干し」
 との答え。次に、
「そうですね。では、煮干しのだしのとり方は?」
 と聞くと、
「頭とはらわたを除きます」
「うま味が出やすいように、煮干しを小さく割きます」
「炒子だしは水に浸しておいて、香りがするまで煮出します」
 と子どもたち。煮干しからだしをとる方法はしっかりと身についているようです。

だしの名前は?

続いて、
「煮干しの他にもだしをとることができるものがあります。知っていますか?」
 と聞くと、
「鰹だし」
「そうそう、テレビのコマーシャルでやっていたよ!」
 と子どもたち。中には
「鰹節って、鰹だしと一緒ですか?」
 という質問も出てくるので、
「そうです。鰹節からとるから、鰹だしっていうのですよ」
 と教えます。さらに、
「昆布だしもある!」
「おでんを作る時に使うよね」
 というように、子どもたちは鰹節と昆布については答えることができました。

そこで、
「煮干しや鰹節、昆布の他にもだしをとることができる食品はあります。実は、椎茸からもだしをとることができるのです」
 と話すと、子どもたちは驚きの声を上げました。
「今から煮干し、鰹節、昆布、椎茸、粉末だしの5種類のだしを飲み比べてみましょう。ソムリエって知っていますか?」
 と聞くと、
「知っている!」
「ワインを比べることができる人」
 と子どもたち。
「そうですね。比べてわかるだけでなく、その食べ物の歴史など色々なことを知っている人ですね。みんなには、だしのソムリエ、そう、『だしそむりえ』になってもらいましょう」
 こう話すと子どもたちはやる気満々になりました。

だしを飲み比べる

だしを飲み比べる

だしを飲み比べる

あらかじめ用意しておいた5種類のだしをお椀にとって飲み比べます。
「わかった!」
「これいつも飲んでいる味だ」
「椎茸のにおいがする!」
 と、にぎやかに飲み比べが続きます。

それぞれのだしについての子どもたちのコメントです。
【炒子】においがきつかった。魚の生臭い香りがした。後味はまさに煮干し。
【昆布】香りが昆布っぽかった。においが昆布。
【鰹節】鰹節の香りがした。香ばしい味がした。
【椎茸】椎茸の風味がした。飲んだら椎茸。
【粉末だし】いつも食べている味に近かった。一番おいしかった。においがあまりしなかった。クセがない。

だしの予想を ワークシートに記入

だしの予想を ワークシートに記入

子どもたちの正解率は、ほぼ100パーセントでした。
 最後に、だしの利用について、
「鰹だしと昆布だしを合わせたものは煮物に適していること、煮干しは味噌汁に適していること、それぞれのだしのとり方も違うこと」
 を説明して終わりました。

子どもたちの感想です。
「色々な味を味わえたから楽しかったです。同じように見えても味が違うのがすごいと思いました。他のだしも調べてみたいです」。

「椎茸からこんな味が出るとは思わなかったです。僕の家はいつも粉末だしを使っているので色々なだしが飲めてよかったです。だしにも色々あるんだなあと思いました」。

授業の展開例
  • 実際に鰹節や昆布、椎茸などでだしを取ってみましょう。
  • 一番だし、二番だしというだしのとり方があります。それぞれのだしに向いている料理を調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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