2023.01.25
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発酵食品とSDGs 【和食とSDGs】[小6・社会科 ]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。
第192回目の単元は
「発酵食品とSDGs」です。味噌や醤油、かつおぶしといった発酵食品に目を向け、未来につながるSDGsについて考えました。

授業情報

テーマ:和食とSDGs
教科:社会科
学年:小学校6年

「和食」をテーマに6年生社会科で授業を行いました。和食に欠かせない味噌や醤油、納豆といった発酵食品に目を向けることで、古くから伝わる和食について考え、これからの生活に生かしていこうとする態度を育てることを目標にしました。
発酵食品には、保存できるよさと栄養価が高いというよさがあります。また、発酵は微生物の働きによってつくられるものなので、温暖で湿度の高い気候風土を活かした日本特有の食文化を考える機会にもなります。今回は、事前に家庭科や国語科、社会科で「発酵食品」、「SDGs」について学習した上で授業を行うことで、和食をSDGsの視点から見つめ直し、より理解が深まるようにしました。また、生まれてきた疑問をいつでもタブレットで調べてもいいことにして授業を行いました。

1 発酵食品ってなんだろう?

授業の冒頭、みそや醤油、納豆の絵カードを見せていくと、「共通点がわかった!」「全部、大豆からできている」「納豆の親」「全員の親」と、何も尋ねなくても子どもたちは、大豆からできた食べ物だと気づいていました。
そこで「大豆と違うところは?」と子どもたちに問いかけます。すると、「調味料になっている」「加工している」「発酵させている」と発言が相次ぎます。こうしたやりとりを通して、発酵食品へと子どもたちが目を向けるようにします。話し合う中で、発酵食品は保存できるよさがあることに気づきました。

2 歴史の中で保存できるよさは何?

「みんなの言う通り、発酵食品には保存ができるよさがあるよね。保存できるって、歴史の中で大切なこと?」と問いかけます。
「馬で食べ物を運んでいた時代があったと思うけどそういう時に腐らない」
「冷蔵庫がなくても、長く置いておける」
「冷蔵庫のことに付け足しで、長く置いておけるから食べたい時に食べられる」
「戦いの勉強をした時に、城に立て籠るって教科書に書いてあったから、保存食になると思う」
「お米が日本の主食だったから、お米と組み合わせて美味しく食べられるし、栄養もあるって良さがある」
「昔だって災害はあったと思うんだけど、災害時の非常食にもなると思う」
子どもたちは、発酵食品の良さについて考える中で、いつの時代から発酵食品があるのかが気になり始めました。そこで、タブレットで調べてみました。

「平安時代にひしおっていうのがあった。米とか豆、麦に味をつけて発酵したものを調味料として使っていたってことやから、平安時代にはもう調味料はあった」
「縄文時代にも、どんぐりや粟、ひえを原料とした原始的な発酵食品もあった」
と、縄文時代からあったことや平安時代には調味料として食べ物を美味しく食べていたことが分かりました。

そこで教師から、みそ玉について紹介します。みそ玉は、みそに出汁や具材を混ぜ込んで、味噌汁一杯分の大きさに丸めたものです。お湯や水を注げばそのまま味噌汁として食べることができること、具材に乾燥わかめや乾燥ネギなどを使用すれば、日持ちもしますし、いざという場合の非常食になること、戦国時代の兵士が栄養食として携帯していたことを紹介すると子どもたちは感心していました。

3 発酵食品から乾物へ

次は、かつお節の絵カードを見せます。かつお節は、魚のカツオを煮た後に、いぶして乾燥させたものです。日本独自の文化でもあり、発酵食品だけでなく乾物のよさを学ぶ機会にもなります。
そこで、「鰹節は発酵食品ですが、もう一つの保存の秘密があります。何かわかるかな?」と尋ねました。子どもたちからは、「水を飛ばしている!!」「乾燥をしている」「世界一硬い食べ物って言われている」と知っていることを発表していました。
そのうちに、「どうやって作ってるん?」と一人の子どもから疑問が出てきました。「水を飛ばして作ってるって」「水を飛ばす?!めっちゃ保存できるな」と日本独自の乾物へと関心を深めていきました。

4 未来に繋げる

発酵食品や乾物について学んできた子どもたちに「発酵食品や乾物が今にも伝わっているのはどうしてなんだろう」と尋ねました。
子どもたちからは、
「便利で美味しいから」「ずっと保存できるっていう便利さがある」「災害の時にも活躍するかも」「タンパク質の栄養も取りやすいし、栄養があるってことは、健康にもいい」
との意見がありました。
話し合う中で、乾物や発酵食品の良さがあるからこそ、昔の人が繋いできたこと、日本の独自の文化・伝統であり、未来にも繋がるということに気づいていました。

「みんなが言っている未来に繋がるってSDGsでも学習したね。SDGsで言えば、どのゴールに繋がるかな」と問いかけます。以下のゴールに繋がることを確認しました。

ゴール2  飢餓をなくそう
ゴール3  健康
ゴール11 住み続けられるまち
ゴール12 つくる責任 つかう責任 
ゴール14 海の豊かさを守ろう

5 まとめを書く

●今回の学習では、大豆の発酵食品の勉強をしました。冷蔵庫がない時代でも、みそ汁を飲んでいたこともわかったし、保存ができるので災害時の非常食になるので便利だと思いました。

●未来に向けての世界
発酵食品はSDGSの海の資源を大切にするや飢餓をなくすにつながっていると思った。発酵食品にすることでたくさんの人の命が救えるし、鰹節のようにすることでうまく使っているから。

授業の展開例

〇和食は、SDGsと深くつながっています。どのようなつながりがあるかを調べてみましょう。

松井香奈

大阪市公立小学校教員 農林水産省認定和食文化継承リーダー
文化的な食、社会的な食を教材化することを通じて 授業実践に取り組んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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