2021.07.28
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シソで酸・アルカリの学習 【食と科学】[小6・理科]

シソは、草丈が約70~80cmほどになり、昔から日本で生育しています。
こぼれ種でも育つ上に暑さにも強い育てやすい植物です。
食材としては少し地味な存在ですが、赤紫の赤シソは、梅干しの色付けなどに利用されたり、シソジュースの材料としても使用されたりと鮮やかな赤色を生かすことができます。
今回は、この赤シソを使った、シソジュースとゼリーを紹介します。
シソは、酸・アルカリの内容を学ぶ教材となります。
夏の季節にぴったりの食材を使って科学を学びましょう。

授業情報

テーマ:食と科学

教科:理科

学年:小学6年生

時間:1時間

小学校理科では、6年生の水溶液の性質「水溶液には,酸性,アルカリ性及び中性のものがあること」の学習の発展として取り上げることができます。

中学校理科では、化学反応とイオンの酸・アルカリ「日常生活における物質に対する興味・関心を高めるため,身の回りの物質のpH を測定するなどの実験を行うことが考えられる。」の教材として活用できます

1.用意するもの

シソを洗う

(1)赤シソを水洗いします

<シソジュース>
シソ   200グラム程度
砂糖   300グラム程度
クエン酸 30グラム程度
水    1リットル
リンゴ酢 80ミリリットル

2.シソを煮る

シソゼリー

(2)水を沸騰させ、赤シソを入れます

(1)赤シソを大きめのボウルや鍋に入れ、しっかり水洗いします。
茎ごと煮出しますので特に茎を除く等の作業は必要ありません。

(2)大きめの鍋に水を沸騰させ、赤シソを入れます。
一度に入りきらない場合は、数回に分けて入れます。

シソを煮る

(3)キッチンペーパーをザルに敷いて、煮汁をこします

(3)キッチンペーパーをザルに敷いて、煮汁をこします。

(4)こした液を鍋に戻し、砂糖を加えて弱火にかけます。
砂糖が完全に溶けたら火を止め、粗熱を取ります。

(5)クエン酸を入れた瞬間に黒っぽかった煮汁が、パッと鮮やかな赤色に変色します。
ここでも味見をしてみて、甘みや酸味が足りなければ足し入れるとよいです。
クエン酸ではなく、リンゴ酢を使って作ることで、リンゴ由来の香りがほのかに混ざって、シソが苦手な人でも飲みやすいジュースになります。

3.赤シソと酸・アルカリ

赤シソの煮汁

しそジュース完成

煮出したばかりの赤シソの煮汁は、暗い紫色をしていますが、クエン酸(リンゴ酢)を加えると、アントシアニンの性質によって鮮やかな赤紫色に発色します。

アントシアニンとは、おもに植物に含まれる紫色の色素の名前です。

次の写真では、Cがクエン酸、Dがリンゴ酢を加えています。
比較のためにAは重曹水を加えたもの、Bは煮だしたままのものを用意しました。
重曹水はアルカリ性なので緑色になります。
※重曹水を加えたものは絶対に飲まないようにしてください。

4種類の出汁

A重曹水、B煮出したまま、Cクエン酸、Dリンゴ酢(を加えたもの)

このようにシソの煮汁は、中性ではやや暗い紫色ですが、酸性では明るい赤紫色やピンク色に、アルカリ性では青色や緑色に変化するという性質があります。
赤シソを使った梅干しがきれいな赤色になるのも、赤シソのアントシアニンが梅に含まれる梅酢によって発色するためです。
梅干にする前の生の梅は緑色をしています。
これに塩をまぶし、重しを載せると梅酢と呼ばれる酸性の液体が出てきます。
まだこの時は、梅は赤くはありません。
赤シソを揉んで汁を出します。
濃い紫色だったその汁が酸性の梅酢と混ざることで赤に変化していきます。
このように赤い梅干しは、酸で色が変わる、その性質を利用したものなのです

4.シソゼリーをつくる

粉寒天を水で煮溶かす

(1)粉寒天を水で煮溶かします

シソジュースを使って、ゼリーをつくることもできます。

用意するもの<シソゼリー>
シソジュース  120ミリリットル
水       200ミリリットル
粉寒天     2グラム



(1)粉寒天を水で煮溶かします。

シソジュースを加える

(2)シソジュースを加えて混ぜ、少し沸騰させて火を止めます。

(2)シソジュースを加えて混ぜ、少し沸騰させて火を止めます。

(3)型に流して冷蔵庫で冷やします。

次の写真のピンク色のものは、赤くなったシソジュースを固めたものです。
シソの煮汁だけを固めると写真のように濃い紫色のままです。

シソジュースを固めたもの

ピンク色はシソジュースのゼリー。濃い色はシソの煮汁だけを固めたもの。

授業の展開例

・理科の教科書では、リトマス試験紙を使って、水溶液を酸性・中性・アルカリ性に仲間分けします。リトマス試験紙もコケの色素を紙に浸み込ませたものです。ムラサキキャベツやナスの皮やムラサキイモ、ブドウの皮などを使って色が変わるかどうか調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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