【先生たちの復興支援】さいたま市立東宮下小学校 研究主任 菊池健一さん(第4回) 「新聞記者から震災を学ぶ」
今回は、さいたま市立東宮下小学校 研究主任 菊池健一さんの授業実践第4回目。シリーズ最後は「新聞記者から震災を学ぶ」です。
毎年3月には、東日本大震災を題材にした授業に取り組んでいます。震災のことを風化させず、次の世代に伝えていくことが私達教師にも求められることだと考えています。そのために、各教科等の指導と関連付けて震災について学べる機会を用意することが大変重要になると感じています。
今回も前回に引き続き3年生の国語科での実践を紹介いたします。児童はこれまで、震災に関する記事をスクラップしたり、道徳の授業で震災の資料を活用したりしてきました。また、国語科で「報告文を書く」学習をする単元において、お家の人に東日本大震災のときにどこにいてどんな様子だったか、どんなことを考えたかをインタビューして、わかったことを発表する学習を行いました。今回は、東日本大震災の取材をされた新聞記者さんから、取材をしたときのことや国語科の学習目標である報告文の書き方について指導をしていただきました。
指導していただいた毎日新聞社埼玉東支局長の清水勝さんは新聞記者になって26年目で、現在は支局長として記者さん達を束ねる仕事をしていらっしゃいます。数年前に、福島第一原発に毎日新聞の代表として取材に入り、当時で原発の一番近く(70m手前)まで行った経験があります。また、震災後は被災地の方の取材をされ、被災をされても頑張って生きていこうとする方々の姿を記事にされています。
「原発に近づいて怖くなかったですか?」
「他の記者さんはどんな様子でしたか?」
などの質問をしていました。また、被災地の方のお話を聞き、現在でも、震災の影響で困っている方がいるということを改めて感じることができました。そして、困っていてもがんばって野菜作りをしたり、お店を経営したりしている姿に感動していました。
児童はこれまでは読み物や資料から被災地の様子を知ることはできましたが、まだあまり実感がわいていないようでした。しかし、清水さんから取材をした際の写真を見せていただいたり、その取材で書いた記事を見せていただいたりしながら、被災地の様子について具体的に理解することができたようです。
授業の後半では、清水さんに報告書を書くポイントを指導していただきました。報告文を書く際に、一番児童に意識させたかったことは「事実」と「考え」をしっかりと区別して書くことです。家族や清水さんに聞いたことと、自分が考えたことをしっかりと分けて書くことを意識させるために、清水さんは自分が書いた記事を示しながら、事実の部分と清水さんの感想が書いてあるところを丁寧に解説してくださいました。児童は本物の新聞記事を見ることで、今回の目標である報告文を書く際のポイントを押さえられました。
清水さんの授業の後は、今回の単元で家族や清水さんに震災のときのことについて聞いたことを報告文としてまとめます。児童は聞いたことをしっかりとメモしてあるので、すぐに書き始めることができました。
「清水記者さんは福島第一原発で新聞記者やテレビ局の人が近づくことができる一番近い所に取材に行ったそうです。そのときは自分の体がどうなるかすごく心配になったそうです。僕はお話を聞いて、清水記者さんはとても勇気があると思いました」。
「清水記者さんは、被災地を何度も訪ねて、頑張っている人のその後を取材されていました。皆が地震のことを忘れないようにしたいためだそうです。私はそのお話を聞いて、私も地震のことをこれからも勉強していきたいと思いました」。
など、自分が聞いたことで印象に残ったことと、自分が考えたことを報告文としてまとめることができました。児童の報告文を読むと、たくさんのお話を聞いた中で、それぞれ印象に残った部分が違うということに気が付きました。児童にはこれからも自分の関心に合わせて、震災のことを学び続けてもらいたいと考えています。
今回を含めて4回の報告で、東日本大震災を題材として取り上げた取組を紹介いたしました。ある新聞記事ではもう6割の方が「震災が風化している」と感じていると答えているそうでした。また、これからの子ども達は震災を経験していない子が多くなります。しかし、きちんと東日本大震災のことを伝えていく必要があると考えています。そのためには、授業の中でその授業の目標に沿った形で、柔軟に震災のことを取り上げていく必要があると考えています。これからも実践をがんばりたいと思います。
文・写真:菊池健一
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