【先生たちの復興支援】さいたま市立東宮下小学校 研究主任 菊池健一さん(第1回) 「NIEで震災を学ぶ」
今回は、さいたま市立東宮下小学校 研究主任 菊池健一さんの授業実践です。
早いもので東日本大震災からもう4年になります。私自身、震災当時に被災地にいたわけではありませんが、震災当日のことは今でも鮮明に覚えています。これまでで一番の大きな揺れを経験し、しばらくは茫然としてしまいました。また、学校に残っている児童を家庭へ送り届けたり、校舎の中で壊れたガラスなどを片付けたりした経験も忘れられません。
しかしながら、震災から4年が経ち、被災地から離れた地域では震災の記憶が風化してきているということを耳にするようになりました。ある調査では7割ぐらいの方が震災に関して記憶が風化してきていると感じていると答えていました。私は教師として震災のことを子ども達に教えていく義務があるように感じています。そこで、今年度も震災を題材にした授業実践を行いました。その実践を3回に分けてご紹介したいと思います。
私の勤務する学校ではNIE(教育に新聞を)に取り組んでいます。毎週月曜日の業前の時間をNIEタイムとして、児童が新聞スクラップを行い、新聞記事を読んで感じたことなどを書いたり、話し合ったりする活動を行っています。
担任する3年生の学級でそのNIEタイムの時間を活用して震災の記事を読みました。活用した記事は、宮城県の津波で小学校1年生のお子さんを亡くしてしまったお母さんの記事です。1年生の子が残した朝顔の種を見つけて、今でもその朝顔を育てて、それが子どもだと思って毎朝声をかけているという記事でした。
もう一つは、岩手県や福島県の「奇跡の一本松」の記事です。津波に耐えた一本松の保存に関する記事です。児童が活用する道徳資料には今回活用した記事と同じ内容の資料があります。その資料を活用した授業に向けて、児童の関心を高めるねらいもありました。
「これは何だと思う?」
との問いに、児童は、
「枯れてしまった木かな?」
「何かの記念の木だと思う」
「きっと弱くなってしまった木を守っている人との記事だと思う」
などと答えていました。震災があった4年前は、児童が保育園や幼稚園に通っていた頃ですから、児童は震災のことをあまり覚えていないようでした。しかも震災に関する記事やニュースについてこれまであまり関心を持ってこなかったようでした。
「この町の人にとって、奇跡の一本松は心の支えなんだね」
「この松がダメになってしまうかもしれないと書いてあるよ。どうなるのか心配です」
「町の人たちを勇気づけるためにこの松を何とか残せないかなあと思います」
児童は、記事を読むことで、「奇跡の一本松」だけではなく、被災地の状況を調べたいと思うようになりました。本やパソコンで被災地の状況を調べてくる児童もいました。また、「奇跡の一本松が解体されモニュメントにされる」という記事や「奇跡の一本松から記念の万年筆が作られた」という記事を集めてくる児童もいました。被災地のことについて大変関心が高まってきていると感じます。これから、3.11を迎えるにあたり、各新聞やテレビなどで、震災に関係する特集が組まれると思います。児童は、積極的にそれらに触れていくのではないかと感じました。
今回の実践では、被災地を取材した新聞記事を活用し、児童の興味関心を高め、被災地の方々に思いをはせる活動を行いました。次回は、今回の活動を生かした道徳の授業を実践します。児童には、単なる資料の読み取りに終わらず、被災地の方々のリアルな情報に触れながら考える授業を行いたいと考えています。
文・写真:菊池健一
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