2017.03.29
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【東日本大震災を取り上げた授業】さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さん (リポート4) 「3月11日の新聞をスクラップ・・・そして未来につなげる」

被災地や被災校支援のために、学校や教員の皆さんが取り組んだ教育活動を紹介します。今回は、さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さんの授業実践全4回のうち、最終回となります。

3月11日の新聞をスクラップ

児童は、前回までの活動で、東日本大震災の際に自分や家族がどうしていたかを思い出したり、現在の被災地(主に福島県)の様子について、新聞記者から話を聞いたりする活動を通して、震災を自分事として捉えられるようになってきました。そして、国語の学習で、震災について自分が考えたことを作文にまとめる活動を行いました。それまでは、震災について、どこか遠くで起こっていること、そして自分にはあまり関係のないこととしてしか感じていなかった児童も、
「先生、昨日テレビで被災地のことを伝えていたよ」
「4月には福島に帰れるようになるけれど、どのくらいの人が帰るのかな」
など、普段の会話にも震災についての関心がうかがえるようになりました。

そこで、これまで取り組んできた活動の締めくくりとして、3月11日(震災の日から6年目)の日の新聞をスクラップする学習を取り入れました。今年は3月11日がお休みの日でしたので、週が明けた日の実施になりましたが、児童は当日の新聞を持ち寄り、新聞スクラップを行いました。

昨年までは、3月11日の新聞の1面に必ず東日本大震災のことが取り上げられていました。今年は韓国の大統領が罷免されることや南スーダンから自衛隊が撤退するという大きな出来事があったために、1面に震災関連のことが掲載されていない新聞も多くありましたが、児童は新聞をめくり震災関連の記事を探しました。記事の中には、被災地の現在の様子を詳細な写真で伝えるものや、被災地の人にスポットを当てて現在の様子を伝えるもの、そして原発の今後の課題について取り上げているものなど、色んな角度で震災を取材した記事がありました。児童は、自分がこれまで学習してきたことを思い出しながら、一番印象に残った記事を選び、スクラップをしました。
スクラップをする児童 児童と読んだ震災に関する記事

  スクラップをする児童                  児童と読んだ震災に関する記事

これからどう伝えていくかを考える

児童は、新聞記事をスクラップして自分の感想をまとめました。また、同時にこれから震災について伝えていくためにはどうしたらよいかを考え、ノートに書きました。児童のノートを見ると、

「津波で娘さんをなくしてしまっている方の記事がありました。原発のせいで探すことができないのでとても悲しいです。いつか、全員の人が見つかってほしいです」
「家族が亡くなり、自分だけが助かった方がなやんでいる記事がありました。もし、こういう方が近くにいたら、明るくなるように声をかけるようにしたいと思いました」
「お土産屋さんの記事がありました。いまだに、『福島産で大丈夫?』と言われるので悲しいと書いてありました。また、福島から来たということで、いじめられたりすることもあるそうです。ぼくは、福島県の問題はみんなの問題だと思います。だから、もし近くに福島から避難をしてきている人がいたらはげましてあげたいと思います」

どの児童も、これまで学習したことを基に、震災について考えることができていました。特に最近問題になっている福島県の方をいじめることなどについて、はっきりとおかしいと書いている児童が多かったので、今回の学習は大変意義があったのではないかと感じています。

児童のスクラップノート

児童のスクラップノート

震災を知る最後の世代として

今回実践を行った4年生は、当時保育園か幼稚園に通っていた子どもたちです。まさに震災を知る最後の世代となります。児童にはこれからも震災のことについて関心を持ち続けてほしいと思っています。そして、震災を知る最後の世代として、震災のことを伝えていってもらいたいと考えています。

私自身も、これからは震災を経験していない(覚えていない)世代の子ども達と、どのように震災を取り上げた授業を行っていくことができるか、これからも考えていきたいと思っています。

文・写真:菊池健一

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