2017.03.08
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【東日本大震災を取り上げた授業】さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さん(リポート1) 「震災について、自分事として考える」

被災地や被災校支援のために、学校や教員の皆さんが取り組んだ教育活動を紹介します。今回は、さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さんの授業実践を4回にわたってご紹介します。

震災を経験した最後の世代?

もうすぐ、6回目の3月11日がやってきます。早いもので、東日本大震災から6年になります。近頃では、被災地が復興に向かって確かな歩みを進めている嬉しいニュースが流れている一方で、原発の問題など、まだまだ解決の目途が立っていない問題も多く報道されています。

私は東日本大震災後から、積極的に学校の授業で震災を取り上げた授業を行ってきました。児童に聞くと、震災当時の記憶がある子が約3分の2、そして、当時の記憶がない子が約3分の1ぐらいです。きっと、震災のことを覚えている最後の世代になるのではないかと考えました。今回は、担当する児童と国語科の授業を中心として、震災を取り上げた学習にチャレンジすることにしました。

児童の意識を高める

まず、児童に震災に関する意識を高めてもらうために、学年の掲示コーナーに、東日本大震災の関連の資料を掲示することからスタートしました。震災があった次の日の新聞各紙や、新聞社が作っている震災関連の資料を掲示しました。児童は、掲示板の近くを通る度に、興味深そうに掲示を眺めていました。

東日本大震災の資料を活用した掲示板

東日本大震災の資料を活用した掲示板

そして、今年に入ってから新聞各紙が、阪神淡路大震災や東日本大震災に関する記事を多く掲載するようになりましたので、記事を積極的に紹介しました。毎朝取り組んでいる、「新聞トーク」の時間に記事を紹介し、児童と意見交換をしました。実際の新聞には、被災地の方の生の声や様子が掲載されているので、児童はリアルな現実に触れることができたと思います。

また、学校で使われている道徳の資料にも震災を取り上げたものがあるので、この時期と合わせてその資料を活用した授業を行いました。テレビのニュースなどでも震災関連のものが増えていたので、次第に児童の意識が高まってきました。

児童に示した新聞記事                   道徳授業の板書   

児童に示した新聞記事                   道徳授業の板書   

震災を自分事としてとらえる

これまでの活動で、児童は震災に対する意識を高めてきました。しかし、児童にとっては、まだ遠い被災地のことであり、自分に関連したことになっていませんでした。そこで、国語科の授業を活用して、東日本大震災の時に、自分は、そして家族はどうしていたかを思い出す活動を行いました。

当時は小さくて、記憶があまりない児童もいますし、保育園でお昼寝をしていた児童もいます。そこで、保護者の方に協力をしていただき、一緒に思い出してもらいました。児童は、自分の記憶と、保護者の方へのインタビューを基に当時の自分達の様子について思い出しました。

「僕は、幼稚園のバスの中にいました。バス停がすごく揺れていました」
「お母さんと洗濯物を干していました。すごく揺れるので、とにかく机に潜りました」
「僕のお父さんは車の運転をしていました。ずっと家族は無事か考えていたそうです」
「東武線の中にお父さんはいたそうです。電車が急停止し、左右に揺れていたそうです」

このような当時の様子を紹介し合うことで、児童は震災が自分事としてとらえられるようになってきました。そして、被災地の方は今どうしているのか、被災地はどうなっているのかという疑問を持つようになりました。

この後、震災当時からずっと被災地の取材をしている新聞記者さんを招いて、震災当時の様子や被災地の今の様子についてお話をしていただくことを児童に告げました。児童は記者さんに質問したいことをたくさん考えていました。児童との震災を取り上げた学習は続きます。

文・写真:菊池健一

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