2011.10.18
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学校図書館を活用した調べる学習(vol.2)

株式会社内田洋行 教育総合研究所のインターンシップ実習生の二人が、「実践の場から:学校図書館を活用した調べる学習」の続編記事を制作してくれましたので、それをお送りします。


はじめまして。私たちは内田洋行教育総合研究所にインターンシップ実習生として参加している大学3年生です。前回の記事には大きな反響があり、「読者の皆様から『もっと知りたい』という声をいただいた」と伺い、研修の一環として「学校図書館を活用した調べる学習」の第二弾を書きました。少しでも読者の皆様の参考になる情報が含まれていれば嬉しいです。

10年前に学びたかったこと ~大学生の視点から~

授業の様子をレポート
学校:荒川区立第二峡田(はけた)小学校
学年:3年生
学校図書館を活用した調べる学習

9月5日8時50分、図書館にさす日差しがだんだん強くなる中、荒川区立第二峡田小学校の学校図書館では「調べる学習」が始まった。3年2組の子どもたちが今から調べる内容はさまざまな動物についてである。前回の授業では高学年を取り上げたが、今回は低学年用にアレンジされている。それを指導・サポートするのは、3年2組の担任と主任学校指導員を務める藤田先生と学校司書である。最初に、藤田先生が今日の学習を一通り説明し、一つ目のミッション「ふしぎを見つけよう」が始まる。

まず、ペンギンを例に「ペンギンは鳥類なの?」などのふしぎを紹介する。しかし3年生の子どもが実際に一人でふしぎを見つけることは難しい。そこで教師が教室中をまわりながら一対一で対応する。例えば理科と関連付けて「くちばしはどうなっているか」算数であれば「何しゅるいのペンギンがいるか」など、教科に関連付けながらふしぎを見つけることを薦めるのだ。すると児童は「シロクマはどこに住んでいるのか?」といったふしぎを見つけ始める。

3つほどふしぎが出揃うと子どもたちは学校司書が用意した本を使って、ふしぎを解決し始める。ふしぎに答えてくれる本の文章、出典をカードに書き写す。 その後、調べる学習を行った感想を別のカードに記す。感想を書き始めて、ちょっと経った後に、1時間目のチャイムが鳴った。2時間目は用意された画用紙にふしぎとその答え、感想を書いたカードを並べ、見出しをつけていく作業に入る。これが終われば調べる学習は終了だ。

メリットの多い3つのカード

続編・学校図書館を活用した調べる学習

藤田先生の「学校図書館を活用した調べる学習」では、3つのカードが出てくる。 「そのままカード」(※記事末尾参照)には調べたことの引用や出典を書き、「まとめカード」には全ての調べたことの中からポイントになることだけを選んで書く。また、「感そうカード」(※記事末尾参照)には自分が思ったことを書くというそれぞれの役割がある。これらのカードは子どもたちにとって「調べる学習」の流れが分かりやすくなる1つのツールとなっている。

最後のミッションでは、1枚の画用紙に調べたことをまとめる。画用紙にはタイトルをつけてもらい、前段階で書いた3つのカードを貼り付け絵を描いてもらう。 調べたりまとめたりする授業では、子どもたちの結論に至った経緯を見ることが出来ないため、最終的なまとめ部分だけで評価してしまうことも多いのではないかと藤田先生は言う。

今回の授業でも提出する画用紙は1枚だが、それぞれのカードを貼り付けてもらうことにより、「そのままカード」からは「疑問に対して的確な答えを見つけて書くことが出来ているか」、「まとめカード」では「調べた内容の中から的確にまとめることが出来ているか」という観点で評価をすることが出来るようになっている。

子どもたちだけでなく教師にとっても「調べる学習」は、子どもたちの成長を見る良い機会ではないだろうか。

「子どもには見えない工夫

続編・学校図書館を活用した調べる学習

この授業では子どもたちには見えないところで随所に工夫がこらされていた。 まず、担任の先生と子どもたちの間で、事前に調べる内容を決めておくことで、当日スムーズに調べる学習に入っていくことができる。また、学校司書はあらかじめその内容を聞いて必要な本を用意している。多くの子どもは長い文章の中から、調べる学習に必要な部分を抜き出すことが苦手である。そこで、できるだけ一問一答形式をとった本が用意されている。

授業の終盤に近づくと、完成見本図が黒板に貼り出され、視覚的なアドバイスが提示される。早めに終わった子どもに対しても、教師は声かけを忘れない。調べる学習は個人作業のためにどうしても進度に差が生まれ、早く終わる子で出てくるが、出てしまったごみの回収をお願いしたり、本を読むように指示したり、としっかり子どもをコントロールしていた。

今回の授業は、2コマ続けて行われたが、時間内にすべてを終わらせることは難しいこともある。また、もちろん用意された本だけでは調べられないふしぎもある。しかし授業中には複数のふしぎの中、調べやすいものから順に解決していき、残ったふしぎは、また別の機会に実物を見たり、別の本やインターネットを使って調べたりするように指導されていた。解決しないふしぎをもった子どもは、なんとかしてそのふしぎを解決しようとするという。これはその場限りで調べる学習を終わらせないことにつながるのではないだろうか。

また藤田先生はできる限り、調べる学習を担任の教師の主導のもとに行われるように、何か気づいたことがあれば、直接子どもに話すのではなく、担任の教師にそのことを告げるようにしていた。担任の教師によって行われる今後の学習にも調べる学習が使われることを意図してのものである。すなわち今回の調べる学習はあくまで練習・導入であり、今後は調べる学習を継続的に行っていくことを目指しているのだ。

「知る・慣れる・・・また調べる!」

続編・学校図書館を活用した調べる学習

「大学生がレポートを上手く書くことができないのは、調べる学習をしっかり学んでいないからではないか」と藤田先生はいう。きっと現代の大学生は何かを調べて、そこからどのようにまとめていけば良いのかということに慣れていないのではないかと思う。「調べる学習」は小学生の段階から調べ方・まとめ方の流れを知り、慣れておく必要があると思った。

タイトルは「学校図書館を活用した調べる学習」とあるが、ここで指す「図書館」も実は「本」だけを指しているのではない。調べ方は「本」以外にもさまざまある。本物を見る、インターネットを使うということも1つの調べ方である。普段の何気ない会話の中にも自分が探していた情報が含まれているかもしれない。これも調べ方の1つなのである。

藤田先生の考える「図書館」とは、本が並んでいるだけのものではなくもっと広範囲のものである。一言で表すと「情報が得られる場」というイメージだそうだ。今回の学習でも本で調べている間、友達同士での情報交換もしっかり行われていた。このような「場」を定期的に設ければ、子どもたちの将来にとても大きく関わっていくように感じた。

≪インターン実習生の目(感想)≫
 小学校の授業の見学を終えて、最初に思ったことは「教師の大変さ」でした。一回何かを説明してもクラスの全員に話は伝わらないし、ひっきりなしに「せんせ~い」と教師を呼ぶ声が聞こえてきます。調べる学習を行うことは教師にとって非常に大変なことなのでしょう。しかし調べる学習を授業の中で行うことは現在強く求められており、担任の教師の負担ははかりしれないと思います。
 このような中、藤田先生の存在はとても貴重なのだと感じました。藤田先生は、今回3年2組の子どもたちにとっても「せんせい」という立場でしたが、担任の教師にとっても調べる学習を実践する「先生」でした。藤田先生のような存在がこれからも求められ続けていくと思います。(井ノ口 善隆)


取材をしに行くとインターネット上では分からなかった現場の状態がよく分かり、実際に足を使って取材をしに行くことの大切さがひしひしと伝わってきました。藤田先生の話を聞き授業風景を見て、藤田先生のいう「調べる学習」の重要さを理解するとともに、私の今までの生活を振り返ってしまいました。「小学生のうちにもっと本を読んだりしていれば…」という思いが今の私の心の中の大部分を占めています。
 実際に取材に行き得られた数多くの情報の中から何をピックアップして記事にしたらいいのか、それだけでも選ぶのにとても時間がかかりました。内容を厳選するのが難しかったことはもちろんのこと、見てきたことを文字としてまとめることもまたさらに難しく感じました。「もしも私が小学生の頃に藤田先生と出会いこの授業を受けていたら、今記事になろうとしている私の原稿がもっと上手くまとまっていたのではないだろうか」と、記事を考えている間にも、藤田先生のおっしゃっている「調べる学習」の大切さを痛感しています。(長谷川 智代)

取材・文・写真:井ノ口善隆、長谷川 智代
※写真の無断使用を禁じます。

【本篇記事】
学校図書館を活用した調べる学習

【本授業で使用したカード類】

「太陽チャート」
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そのままカード」「感想カード」
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「そのままカード」「感想カード」
「感そうカード」」[クリックして拡大]

 

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