2019.04.17
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電気を効率よく利用するには?プログラミング教材を使って電気の利用についての理解を深めよう!(後編) 全教職員でプログラミング教育研究に挑む茨城県古河市立大和田小学校 古河市立大和田小学校・谷田部幸愛 教諭

2015年9月、茨城県古河市の全小学校にタブレット端末が導入され、大和田小学校は「文部科学省情報教育指導力向上支援事業」のプログラミング教育実証校に指定された。今回は、6年理科「電気の性質とその利用」の単元において、電気の効率的な利用を考えるにあたりプログラミング教材を採用した谷田部幸愛教諭にインタビューさせていただいた。

授業者に聞く

プログラミング的思考を実現する、4段階のスモールステップ

ー授業おつかれ様でした。今回6年生の理科の授業でしたが、単元選びはどのような基準で行ったのですか?

谷田部幸愛(敬称略 以下、谷田部) 今回の授業は、小学校プログラミング教育の手引き(第二版、平成30年11月文部科学省)の第3章で、A-②「身の回りには電気の性質や働きを利用した道具があること等をプログラミングを通して学習する場面(理科 第6学年)」と例示されていたので、迷わずこの単元を選びました。

ー授業づくりで大切にされたのはどんな点でしたか?

谷田部 一番大切にしたことは、プログラミングを学ぶのではなく、プログラミングを通して教科での学びをより確実なものにすることです。ただ「プログラミング教材を使えることが楽しい」で終わってしまう授業では本来の教科の目標を達成できません。

ー今回の授業では教科の目標を達成するために、具体的にどのようなことをされたのでしょうか?

谷田部 エネルギーの有効利用という観点から、電気の効率的な利用について考えることに目標を置き「電気を効率よく利用するシステム」をグループごとにプログラミングしました。そして、以下の4つのスモールステップを設け、システムを考えるよう指導しました。

<4段階のスモールステップ>

①構想シートの作成
どのようなシステムにしたいのか、イメージ図を作成。そのシステムを考えた背景・願い、また効率的な場面とそうでない場面を想起し記入。

②言葉でのプログラミング
システムを作るのに必要な作業を分解し、手順を考える。

③プログラミングの具体化
システムを動かすための条件や、どのセンサーを利用するのかなどを考える。タブレット上にプログラムを組む前に、ホワイトボード上で言葉と付箋を使ってプログラムを組み立て、あらゆる可能性を探ります。

④タブレットとMESHを使い、実際に動かす
③までで、しっかりと構想を固めた上でタブレットを使用します。

  • スモールステップ①構想シートの作成

  • スモールステップ②言葉でのプログラミング

  • スモールステップ③プログラミングの具体化

  • スモールステップ④タブレットとMESHを使い、実際に動かす

谷田部 MESHは使い方が簡単なので、構想を練らずとも直感的に作業を進めることが可能ですが、①〜③のステップを怠ると、操作の中で不具合が生じたときに対処できません。このスモールステップを踏むことで、バグがどこにあるか見つけ出すことができたグループも多かったです。

ー確かに、児童たちはホワイトボードを使ってプログラミングを共有し、話し合っていましたね。

谷田部 ホワイトボードに書いたことはとても良かったと思っています。タブレット上ではプログラミングの流れがアイコンで表示されているだけですが、ホワイトボードには人の動きや気持ち、全体の流れが書いてあるので実現したいことが明確です。

言葉のプログラミングがあった上で付箋を貼るのは少し手間かもしれませんが、段階を踏んだからこそ、授業の目標に向き合い、プログラミング的思考も養えているのだと思います。また、プログラミングがうまくいかなくても、ボード上には実現したいことや改善したいことは描かれているので「実現はできなかったが、考えることはできた」と振り返ることができます。大切なことはプログラムを作ることではなく、思考の手順を身につけることですから本来の目標は達成できているのです。

ーこういったタブレット上で直接プログラミングを作るのではなく、構想シートやホワイトボードにまずは書いてみるという方法は学校全体の方針なのでしょうか?

谷田部 学校全体でプログラミングを授業に取り入れる際には、「いきなりタブレット上でプログラミングをすることがないようにしよう」という共通認識があります。まずはイメージを構想シートやワークシートに書いて、それを言葉にすることはとても大切です。

例えば、何かキャラクターの画像をタブレット上で動かしたいと思っても、速く動かす場合と、嬉しそうに動かす場合とでは選ぶ言葉が違います。ただ思いつきだけでタブレット上で操作していては、本来どのように動かしたかったのか、何を表現したかったのかという目的から逸れ、プログラミング的思考は身につきません。

ポスターツアーを取り入れて、児童の思考力を更に高める。

ポスターツアーの様子。システムについて意見交換をしている。

ー今回の授業ではバグを発見したり、より効率的な電気の利用を考えるために「ポスターツアー」の手法を使って児童同士が意見交換をしていたのも印象的でした。「ポスターツアー」を利用したのはなぜでしょうか。
(ポスターツアーについては前編を参照ください。)

谷田部 理由は2つです。1つ目は、一人ひとりが課題意識を持って取り組んでほしいという思いがありました。タブレットを使用すると、プログラミングが得意な子が一人で作業を進めてしまいがちです。ですが、ポスターツアーでは必ず一人で自分たちが作ったシステムについて発表する機会が回ってくるので、各自が主体的に学び、理解しようとします。結果、全員が積極的に授業に取り組むことができたと思います。

2つ目は、より良く効率的に電気を利用するために、他のグループのシステムを見て考えを広げたり、アドバイスを受けて考えを深めたりするためです。実際に、ポスターツアー後のグループでの話合いは、お互いの改善策を話したいという気持ちが増し、活発な意見交換ができているように感じました。

ー1グループあたり2〜3名になっていたのは、ポスターツアーで全員がプレゼンテーションできるような人数構成になっていたんですね。

谷田部 はい。少人数のクラスなので2〜3人で6グループ作りました。3人で4グループでもよかったのですが、アイデアをたくさん出せたほうがいいと思って今回のようなグループ分けにしました。この手法が正解かわかりませんが、もっと人数の多いクラスでもグループの数を増やせばできますので取り入れやすいと思います。

ポスターツアーを取り入れたことで、実際に児童たちの課題意識や考えは深まったようでしたか?

谷田部 そうですね。実際児童からの振り返りの言葉の中には「友達と話し合う場面ではグループ以外の友達の意見を聞いて、気づかなかったことがわかりました。環境にも人にも優しいシステムを作ることができました」という言葉もありました。“効率的”という言葉はなんとなく機械的で利便性ばかり追い求めてしまうイメージですが、話合いを進める中で「いくら効率的でも、使う人の思いに沿っていなければ結局不便で使われない」という視点も育まれましたね。理科での学びが生活で役に立っていると実感できたのではないかと思います。

まずは、教師自身が「プログラミングは楽しい」と実感することから

教室に貼られた掲示物。「アルゴリズム」「シーケンス」「バグ」「デバック」など、低・中・高学年で児童の理解に合わせて内容を変えて、普段から見える場所に掲示しているという。

ー2015年からプログラミング教育を実施されて、児童の様子に変化はありますか?

谷田部 今回の6年生たちはプログラミングの授業を始めて3年ほど経過し、自分たちの実現したいことを叶えるツールとして捉えることができています。その成果か、普段の生活の中でも、プログラミングと意識しなくても物事を分解したり、順序立てて考えたり、どこが間違っていたのかを発見し、修正したりするといった思考が見受けられます。掃除の手順も効率をよくするにはどうしたら良いのかとかも話し合っていますね。

ーすでにプログラミング的思考が身につきつつあるのですね。最後に、今後プログラミングを授業に取り入れる先生方へメッセージをお願いします。

谷田部 2020年度のプログラミング教育の完全実施に向けて、何をすれば良いのか不安に思ったり、機器が揃っていなくて焦りを感じていらっしゃったりする先生方も多いと思います。私は元々ICTに疎い教員だったからか、プログラミング教育と聞いたときには、何の先入観もなくどのようなことができるのかワクワクしていたのを覚えています。

しかし実際の授業では、「プログラミングをして楽しかった」で終わらせるのではなく、この授業を通してどんな力を身につけさせたいのか、そのために教科の中でどう取り入れればいいのか悩みました。今も同僚の先生方と一緒に日々試行錯誤、実践を繰り返しながらプログラミングを学んでいます。

まずは、教師が「プログラミングは楽しい」ということを実感することがスタートだと思います。今回の単元のようにプログラミングの手引きに示されている内容もあるので、まずはそこから取り組んでみてください。私自身もさらに研修に参加したり、授業実践に取り組んだりすることで、悩んでおられる先生方の初めの一歩を踏み出す後押しができればと思っています。

記者の目

ポスターツアーやワークシートの作り方など、谷田部教諭の創意工夫をあらゆる場面で感じられる素晴らしい授業だった。なにより印象的だったのは、効率的な電気の使い方を考える中に、“人に優しい”という視点が盛り込まれていたことだ。こういった言葉は谷田部教諭が口にするわけではなく、児童のディスカッションの場面で常に話し合われていた議題だ。プログラミングを取り入れることで、より具体的に電気の利用に向き合い、リアルな場面を想定でき、「主体的・対話的で深い学び」が体現されていた。

取材・文・画像:学びの場.com

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