2021.12.15
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産官学が連携した先進的統合型プログラミング教育(後編) 成果と今後の展開

2020年9月に「流山市GIGAスクール構想」を策定。東京理科大学、内田洋行、ソニー・インタラクティブエンタテインメントと連携し、2021年7月に4校で、小学校から中学校まで一貫したプログラミング教育を開始した千葉県流山市。各社の役割として東京理科大学と内田洋行が小中学校向けのカリキュラム案を共同開発。また、内田洋行は小中学校の総合的な活動の時間や技術、理科などで活用できるtoioの教材開発を行う。toioの開発・発売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメントが機材と技術サポートを提供する。
これまで得られた成果や今後の課題について、流山市教育委員会 学校教育部指導課 課長 松山秀行氏、流山市立東小学校 校長 永山俊介氏、教務主任 宮崎将史教諭、鈴木昂平教諭に話を伺った。

「先進的統合型プログラミング教育」導入後の経過や成果

流山市教育委員会 学校教育部指導課 課長 松山秀行氏

――プログラミング教育を行うにあたり、ロボット教材「toio」を採用されていますが、他のプログラミング教材との違いはどんなところでしょうか?

松山氏 プログラミング教育はパソコンの画面上のみで行うことが多いですが、「toio」は自分が考えたプログラミングがその場ですぐ体感できるのが他の教材より優れているところだと思います。また、小学校から中学校まで一貫して展開されており、小学校低学年ではアンプラグド、高学年ではパソコンとの併用など、年齢に応じたプログラミングが学べ、それに合わせた教材やカリキュラムが用意されているのも素晴らしいです。9年間同じ教材であれば、子どもたちも取り組みやすいですし、先生方も研修しやすくなるでしょう。また、「toio」はロボットという親しみやすいツールでもあるので、楽しみながらプログラミングを学べるのも大きいです。楽しいからこそ理解しやすくなるし、新たな学びへの意欲も高まります。

鈴木教諭 ロボットでプログラミングを体感できることや、机上で使えるコンパクトなサイズなので授業で活用しやすいのが魅力ですね。本日の授業は家庭科室で行いましたが、普通の教室の机でも問題なく使えています。また、見た目も可愛く、ロボットにキャラクターの顔を付けられるのが低学年からも好評のようです。

松山氏 そして、東京理科大学、内田洋行、ソニーと産官学によるプログラミング教育であることも大きいですね。産官学の教育の取り組みは非常に珍しいことですが、お互いにとってWin-Winの関係。東京理科大学は企業と接点を持ちながら開発できますし、内田洋行は子どもの反応を見ながら教材を改善できます。教材、サポート、知見を上手に連携するのは大変有意義なこと。東京理科大学の学生さんにとってはキャリア教育の一環となるでしょう。今後も東京理科大、内田洋行との連携を強化しながら、教育を充実させる基盤をしっかり整えていきたいですね。

流山市立東小学校 教務主任 宮崎将史教諭

――導入後の子どもの反応や、見られた効果、また逆に苦労していることなどをお聞かせください。

宮崎教諭 授業でパソコンを使うことで、子どもたちの学習への意欲が格段に上がったと感じています。目の輝きがまるで違い、とても新鮮でしたし、見ているこちらも楽しくなりました。自宅でパソコンやタブレットをおもちゃとして使っていた子どもも多く、日頃親しんでいたガジェットが授業で採用されたのは相当嬉しかったようです。

身の回りにプログラミングがあふれていて、日々その恩恵を受けているということを知り、一人ひとりが自分でやってみてわかった!楽しい!と実感することからスタートと考えています。準備段階でのパソコンとロボットの1台ずつの紐付けは少し手間ですね。当初は、他の児童のものと紐づけられてしまうといったトラブルもありました。

鈴木教諭 これまで算数では単元によっては定規を使うことが多く、中には苦手意識を持つ子も多くいました。一方でプログラミング教材「toio」は遊び感覚で使えるので親しみやすく、プログラミングを無意識に習得している子どもが目立っています。先進的統合型プログラミング教育は始まったばかりなので断言できませんが、自習をしようという意欲を持つ子どもが増えた印象があります。漢字や計算ドリルがパソコンに入っているので、雨が降って室内で過ごさなければいけない休み時間に進んで自習を行う子どもも増えてきました。

今後について

流山市立東小学校 永山俊介校長

――今年度の4校での実践をもとに、来年度から市内の全小中学校で9年間一貫のプログラミング教育をスタートすることを検討中とのことですが、どのような体制で進めるのでしょうか?

松山氏 流山市は毎年およそ1,000人近く子どもが増えており、今後子どもたちが使用するパソコンの量も膨大になると予想されます。現在ではパソコンの保守管理から研修、ヘルプデスク全てを外部企業に業務委託することで、先生方をバックアップしていますが、この体制は継続していく予定です。

永山校長 本校ではGIGAスクール構想の策定に伴い、各学年にGIGA担当職員を設け、ベテラン教員も若手教員も同じスキルで子どもたちへ指導できるように取り組んできました。本格導入においては教育委員会と学校側が連携して、本校で展開してきたような環境整備体制を強化し、推進していくことを期待しています。

成果が見られた指導は他校でも積極的に実践するなど、学校間で差が生じないように市内全体で波及させていくことが重要です。一つの学校で発見できたことは他校と速やかに共有するというように、足並みを揃えるために、情報の共有が何よりも肝心と考えます。

松山氏 差を生じさせないためにもICT支援員や東京理科大学によるサポートを上手に取り入れていくことを検討していきます。東小学校を含むモデル校で見られた優れた成果や改善すべき点を効率よく波及させ、全校でのプログラミング教育のスタートを目指したいです。

9年間一貫教育を行うことで期待する効果

流山市立東小学校 鈴木昂平教諭

――どのような効果を期待していますか?

松山氏 何よりもプログラミング的思考力の向上です。小学校低学年ではパソコンを使わない基礎的なプログラミング、高学年ではビジュアル的なプログラミング。中学校ではさらに高度な知識を習得します。発達段階に応じてプログラミングの勉強を積み重ねることで、子どもたちの自ら解決する力をより伸ばすことができると期待しています。試行錯誤して論理的な思考を学んでほしいです。

鈴木教諭 今後、世界はアナログからデジタルに急激に進んでいくと思われます。今の小学生が中学3年になっている頃には“プログラミングなんて当たり前”といった雰囲気になっているでしょう。本日の算数の授業で行ったプログラミングは基礎中の基礎ですが、学年を重ねるにつれて本格的なものになります。中学生になれば実際の社会で使われている要素も習得できるので、彼らが大人になった時は、今の大人よりもプログラミング的思考ははるかに身につけられているのではないでしょうか。教師側としても新たに学ぶことは必然的に多くなりますが、もはやプログラミングは必修であり、負担だなどと言っていられません。充実した教育指導のためにも、年齢に関係なく、教師も日々学習し続ける姿勢が大切だと考えます。

記者の目

今回、東小学校での3年生と5年生の授業を取材し、何よりも印象的だったのは「子どもたちの意欲」であった。先生の問いかけにはほぼ全ての子どもが反応し、他の子どもの発言にも注意深く耳を傾ける姿が見られた。また、プログラミングに真剣な眼差しで試行錯誤する姿も心に残った。AIの発達によりどんどん便利な社会となり、自ら考える機会が格段と減っている昨今。プログラミング的思考を培った子どもたちがどのように社会で活躍していくのか、注目していきたい。

参考

取材・文:学びの場.com編集部 写真提供:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

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