2016.08.26
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一方的な押しつけの低学年教育にもの申す! 後編 (保護者対応編)

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

1年の道は、6年に通ず!

学び方、人との関わり方、すべての出発点です。

学習内容が簡単だからって

人間関係が簡単だからって、

一方的な押しつけの低学年教育をしていませんか?

「1年生」は1年生になった喜びとやる気で胸をわくわくさせているんです。

どんどん伸ばしてあげないと!

学習面の伸ばし方については、前編をご覧下さい。

さて、今回の後編は、保護者対応についてです。

 

1年生本人のやる気とは、うらはらに、お母さんたちは、多かれ少なかれ、心配をかかえています。「うちの子、お友達をつくれるかしら。」「いじめられないかしら。」など。

特に、お母さんにとって、上のお子さんの時、つまり初めて小学校に入学させる子の時は、心配やとまどいも多いことでしょう。1年生の記憶は、6年生にもなれば、薄くなりますが、お母さん方にとっては、1年生は特別な学年で、私自身、懇談での先生との会話や娘が初めて係活動の話をしてくれたことなど、よく覚えています。

 

わかりやすいように保護者対応と書きましたが、保護者対応という表現は、嫌いです。なんというか、対応って表面的でしょ。保護者と教師の繋がりは、人と人との繋がりであり、そんな表面的なものではないのです。

 

保護者と教師は、共通の願いを持っている同志です

「子どもの幸せを願う」という共通の願いをもっている繋がりが保護者と教師です。とても深くてあたたかいものなのです。しかし、子どもの幸せについての価値がずれている場合や話の行き違いなどから、学校への不信感にいたる場合もあります。特に、1年生の1学期は、親も子も戸惑うことがあるのが事実。集団の中で、子どもがどんな様子なのか、客観的にみることが難しく、子どもから聞く内容だけで、主観的に解釈し、学校への問い合わせに至る場合もあることと思います。問い合わせに至らない場合でも、個別懇談会など、保護者と子どもの様子について話す機会はあります。さて、どのように心をつなげていけばよいでしょう。

 

事実を明確に把握する

保護者懇談会で、子どもの様子を伝える時にどの伝え方が、保護者の方の理解を得られると思いますか?

(1)どうも□□くんは、お友達の声に耳を貸さなくて、それが原因でトラブルになるんですよ。おうちでもお話をしてあげてください。

 

(2)○月○日の昼休みに、教室でカルタをしていた時、札の取り合いになって、お友達に手が下の人が勝ちだから、□□くんは、手が上だからだめと言われて、友達の言葉では、納得できなかったんです。お友達の声で納得できるようになることが課題ですよね。おうちでもお話をしてあげてくださいね。

 

(3)○月○日の昼休みに、教室でカルタをしていた時に、取り札の取り合いになって、お友達に手が下の人が勝ちだから、□□くんは、手が上だからだめと言われて、友達の言葉では、納得できなかったんですけど、少し時間をおいて、私が説明すると納得できるんです。こういった経験を重ねていきながら、お友達との繋がり方を習得させてあげたいと思っています。じゃあ、その1週間後の昼休みは、 ~~とできたんですよ。経験が大切だなあとあらためて思いました。これからもよく見ていきますね。

 

答えは、もちろん③です。

 

「事実を把握し、保護者に伝える」ということは大切です。

(1)は、イメージで伝えています。担任には確固たる視点があるのだと思いますが、これでは保護者には伝わりません。

では、(2)はどうでしょう。事実を把握し、そこから子どもの課題を保護者に伝えています。一見伝わるようにも感じます。でも、保護者に事実だけを突き返すように話してしまっていませんか?親の立場で感じてみてください。事実もわかるし、先生の言っていることもわかる。でも、心が重い。ショックで、もっと心配がつのっていく。

 

先述しましたが、保護者と教師は、子どもの幸せを切に願うという共通の願いを持っている同志なのです。その愛を、保護者の方とともに感じながら話すべきです。

 

お母さんの方から、自分の子どもの課題を伝えてきてくださる方もいらっしゃいます。「先生、どうしましょう。ご迷惑をおかけしてすみません。」わたしは、こう答えます。

「お母さん、それは、家では経験できないのだから、なかなか難しいんですよ。

 だから、学校があるんです。インターネットも普及している世の中。いくらでも家で学習できます。でも、学校で、人と人が集まって学ぶ経験がぜったいに必要なのです。

 学校で小さな社会を経験して、成長していくことがらがあるんです。それをしっかりみていくのが、私の仕事です。学校で育てていきます。でも私も見えないこともありますから、これは・・・と思うことは教えて下さいね。お母さんと担任が最強タッグをくめば、子どもの大きな成長につながるのですから。」

 

さて、事実の把握の仕方ですが、子どもの記録ノートをつくっている先生方も多々いると思います。私も、若いときはそうしていたのですが、この歳になると、職場でも家庭でも、やることが多くて、ノートに詳しく書くということが後回しになり、いずれ忘れてしまうということもありました。反省ですが。

そこで、座席表にその日にあったこと、1人1人を思い出し、コメントを入れるようにしています。コメントが書けなかった子は、その日、私が関われていなかったという証拠。次の日には、よく見て、声をかけるようにしています。

特に、今年は1年生ですので、連絡帳が書けたとかノートを提出したとか、細々とチェックが必要になります。名簿でもいいのですが、座席表の方が、スムーズにいくのと、毎日の記録としてたまっていくので、わかりやすいです。

もちろん学習面も生活面も何でも書きます。

 

このような事実把握の上で、上記している「共通の愛を確認する伝え方」で、保護者と話をしましょう。

 

最後に、前編の中で、後編の予告をしたときに、保護者対応と生徒指導の二つを取り上げると書いていたのですが、生徒指導については、以前のつれづれ日誌「せんせいがわらうから、わたしもたのしくなってきます。ありがとう」のページに載せておりました。そちらをぜひご覧ください。

 

付け加えます。過激ですが、私の本音で結びます。

 

低学年は先生がどんな人となりであれ、叱ればある程度おさまるでしょうし、画一的に教育していても、うまくいっているように見えます。

でも、それは、教師の傲慢そして怠慢です。

私たち教師は、子どもの未来をつくっているのです。

子どもにも保護者にも、あなたの傲慢を押しつけないで下さい。

事なかれ主義をやめてください。

教育のプロとして、大人として、愛ある仕事をしていきましょう。 

 

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

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