「1年生の1学期はしつけ」「授業は教え込む」だけの指導にもの申す!
この3月まで園児だったのだから、できないのは当たり前。でも、1年生をなめてはいけません。去年まで、園では立派な年長さんとして活躍していたはずなのに、小学校入学のとたん、1年生だからと幼児扱いしていませんか?言語道断です。
「1年生」は1年生になった喜びとやる気で胸をわくわくさせているんです。
どんどん伸ばしてあげないと!
1年の道は、6年に通ず!
学び方、人との関わり方、すべての出発点です。
学習内容が簡単だからって
人間関係が簡単だからって、
一方的な押しつけの低学年教育をしていませんか?
読めない、書けない1年生の1学期。しかし、ものすごい伸びしろの1学期です。入学式に並べなかった子どもたちが、終業式には、何も言わなくても前へならえをし、整然と並ぶ。先生に困ったことしかお話しできなかった子が、授業で「みんな聞いてください!」とみんなに発表する。すごい成長!
吸収力いっぱいのこの時期に、しつけだけ、教え込みだけ、考えさせるのは2学期から、なんてもったいない!
私は今まで小学校のすべての学年を3回ずつ以上担任していますが、今回の内容、1年生だけではなく、すべての学年に共通することもいっぱいです。
今回はQ&Aでお送りします。
Q.読めない、書けない1年生。生活科の観察カードに、どう取り組ませるの?
A.もちろん始めは絵だけですが、必ず1人ずつとお話をします。
知っているタネをたくさん発表させたあと、
「ただのお絵かきではありませんよ。研究です。
今まで見えなかったことを発見すると、お話ししたくなるもの。しかも、1年生は、担任の先生に聞いてほしいのです。「まついけいこ先生!!(なぜか1年生ってフルネームでよんでくれますよね)」「まついけいこ先生!」教室中をぐるぐるぐるぐる回りながら、発見を聞いていきます。時には「ねえ、みんな。○○くんが、こんなこと発見したよ。」と価値づけます。
外で観察をするときは、「はっけんのぽいんと」とかかれた画用紙を必ず外に持って行って、子ども達の見える場所に貼るか、私が持って高く掲げています。「色・形・数、さわった感じ、前と変化したところ」などです。
これは、4年生の理科でも同じようにやっていました。見る視点を明らかにするのです。
観察のポイントを中心に、絵が描けたら、教室に戻ります。
文章が書けるようになったら、完成したカードを集めておいて後でチェックをすると思いますが、まだまだ文章が書けません。
だから、終わった子は、どんどん私のところにカードを持ってきて並びます。
そして、順番に私とお話します。
「このくきの色、よく見つけたね。」
「うん!」
「じゃあ、今日のお勉強は、どうだった?あしあとマークを書いてね。」
“あしあと”というのは、本校では、振り返りのことです。まだ文章がかけないので、楽しかったら、にっこりのお顔(にこちゃんマークのように)、難しかったら、困った顔のマークをかくことにしました。子供達はどんどんアレンジもします。「先生!いっぱい見つけてめっちゃうれしいから、目をハートにしていい?」「いいよ~」
あしあとマークをかいてもってきたら
「このあしあとマークちゃんはなんて言ってるの?どうして目が星なの?」
「いっぱいはっけんを見つけて、目がきらきらしてるの!」
それを私があしあとマークに吹き出しにして書きます。もちろん、文字が書ける子は、その子に書かせますが、文字が書けるようになっても、お話の分量は減らしつつ、必ずお話します。そしてお話ししながら、赤で並線や花丸やコメントも入れます。
「葉の数までよく見たね。」などと言いながら花丸をいれます。
そうすることで、子どもへの評価となり励みとなるからです。時間をおいてからカードを返しても、子ども達に評価は届きにくいものです。1人1人と繋がって評価もすぐに返すことは、とても有効です。
Q.連絡帳がどうしてもかけない子がいます。どうやって書かせたらいいですか?
A.「黒板が遠くて書きにくいなあと思う子は、黒板の近くにおいで~♪。(明るい口調と表情で)」
-考えがある行動は、いいことだという概念を磨く。-
4月いっぱいで毎日の学年便りは終了。5月からは、他の学年と同じように、連絡帳を書きます。ひらがなも習い始めたばかりなのに、連絡帳ですよ!自分の名前も間違える子がいる中、連絡帳を書くのです!ミラクル!
5月の始めのうちは、黒板前に10人以上やってきます。給食台やら教卓やらを広げて、ずら~っと子ども達が並んで連絡帳を書きます。それでも、日付をかく場所を間違ったり、左から右へ書いたり、大混乱!
ここで大切にしたいことは二つ。
近くなら書くことができるという判断のもと、自分で考えて前に来ること、
そして、周りは、そういう行動を、当たり前のように受け止めることです。
何日かすると、黒板前にくる子どもの人数は、どんどん減っていきます。
なぜか。
連絡帳を書くことに慣れてきて、黒板から遠い場所でも書けるようになった子どもが半分
もう半分は・・・
近くの席の子が、自分が書いた連絡帳を、見せてあげるようになったからです。しかも見せてあげる子は、横に置くのではないんですよ。書いている子の真正面にくるように持って上げているんです。見やすい高さに持って、見せてあげているんです。
「せんせい~!○○くんが見せてくれて、めっちゃ書ける。」
すかさず私がいいます。
「うわあ、素敵!助けてくれる○○くんも、それをうれしいって教えてくれる△△くんも、すばらしい心やわ~。二人とも、うれしいねえ。」
小さなこの価値付けが、他の子どもの心も動かします。
もちろん、6月中旬には、黒板前で連絡帳を書く子はゼロとなりました。
(ひらがなは、書けない、読めない子はまだいる状況です。だから余計に、その子たちは、えらいなあ、努力しているなあって感動します。)
お行儀良く、自分の席にじっと座っていることばかりが、美学ではないのです。
「考えがある動きはいいよ。」と私は子ども達に言っています。逆に、考えのない迷惑な行動やお友達にくっついていく様な行動は、叱ります。これは、高学年でも同じこと。自分の足でしっかり立つこと=自立 特に高学年の女子の関係は、ナイーブなものがあります。凛と立てる子。1年生からそのような生き方にアプローチしていきたいです。
Q.せんせいあのね(作文)が、なかなかかけません。
A.お話する経験を豊富にとる。-「はっけんたいむ」の継続的実践-
以前のつれづれ日誌にも、「はっけんたいむ」の実践について載せましたが、1学期間、子ども達は、「今日のはっけんたいむは、○○ちゃんだ!」「わたしの順番はいつ?」というくらい大好きな活動となりました。
1学期前半は、種や虫を持ってきて、ものを介して発見を報告していました。
そこから、次の段階へ。
「にゅーすはっけん」として、スピーチだけで「はっけんたいむ」を行うようになりました。ここでも、「はっけんたいむのがんばりポイント」を掲示して、手だてにしています。「いつ・どこで・なにをはっけんしたか・こころでかんじたこと」を述べます。
まだまだ、未熟な子も多いですが、7月に入ると、このポイントを私がささやかなくても言えるようになる子もでてきました。
内容も、毎日やっていると次第に、夏の発見に繋がっていきました。
友達のセミのはっけんたいむを聞いて、手を挙げた女の子。
「せみには、いろいろな種類があって、鳴き方もちがうなんて、知らなかったです。」
今までみえていなかったことが、みえるようになった女の子の感動の一言です。
その言葉に私も感動。
また他にもバラエティーに富んだ内容も・・・。
「ゴムでっぽうをお父さんに教えてもらいました。やり方を言います。」
この制作系のスピーチは、「まず・次に・最後に」という順番の言い方につなげました。
「踊っているような木を発見しました。」
素敵!この想像力!
「はちが、大勢で飛んでいるのを見ました。」
「え―――!」みんなの驚きの声。
自由帳に、書き留める子が出てきて、それに、シールを貼ってあげると、どんどん書く子が増えました。あんなに楽しい自由帳は、私も初めて。私は、中・高学年をうけもったとき、自学ノートをつくるのですが、それに繋がればいいなあと願っています。
感じる心が育ってきたら、作文帳「あのねちょう」の登場です。たどたどしい言葉だけど、いっぱい書いてくれる子どもたち。
やはり、毎日繰り返し繰り返し、お話の時間を取ったことが、有効であることは言うまでもありません。
しかし、中には、なかなか書けない子もいます。でも、絵をかいているんです。ここで、「絵をかいてはいけません。」なんて言ってはいけませんよ。「何の絵かな?」と聞いてみると、「これはね、前・・・」とお話が始まります。それを私がノートに書いて、なぞるようにしました。
しかし、文も絵もかけない子もいます。
とにかくそのような子には、インタビューをして、話を引き出します。じゃあ、こうやって書こうか。必ず書かせます。
こういった子は、「はっけんたいむ」で、まだお話ししていない子だったりします。ほとんどの子がスピーチをし、2回目に発表する子が半分ぐらいになってから、「はっけんたいむが、まだの子を優先して、お話をしてもらおう。」と、強制的に発表させます。ただし、いつやるのかを予め言っておきます。すると、お家でお母さんと考えて、メモを持ってお話ししている子もいました。これも、大事な力です。苦手なことがあるときに、自分で誰かに教えてもらうことも生きる力です。決して私から保護者に連絡はしません。(余談ですが、計算につまずきがあったり、忘れ物が多かったりする場合で、早めの対処が有効だと感じる子については、すぐに保護者の方に伝えます。タイミングもさることながら、伝え方も大事です。保護者とのやりとりについては、次回、後編で述べたいと思います。)
それでも、話せない子は、あのね帳を持たせて、それを読ませて発表にかえます。話せない子が前に立っても大丈夫。もう、ここまできたら、聞いている子ども達が質問したり、自分の経験を話したりして、どんどん話を広げていくのです。
小さな声の子の横には、なぜか誰かが立っています。『スピーカー』さんです。小さな声で困っている子には、誰かが出てきて聞こえたことを大声で繰り返すスピーカーの役割をするのです。これも、先述した考えのある行動です。周りも、「勝手に○○くんが前に出てるー」なんて言いません。必要だと考えたことを当たり前のように行動する文化が、育ってきているのです。
あのね帳にこんなことを書いている子がいました。
「せんせい、あのね。はっけんたいむで、まえにでたとき、きんちょうしたよ。でも、みんなのはくしゅで、ゆうきがでたよ。
まほうのはくしゅみたいだったよ。」
それから、こんな合い言葉ができました。誰かが前にたったら、「まほうのはくしゅ!」
Q.プリントを個別に指導している間、子ども達が暇を持て余してしまいます。
A.与えられる学習から、自ら学習をつくる経験をさせる。
1年生で、ひらがなを一文字ずつ習います。今日は「あ」書き方を全体指導し、それぞれ数回書いた後、1人ずつチェックをします。私が、教室を端から順に回っていきます。34人います。待ち時間ができる子がほとんどです。別のプリントを用意したり、じっと待たせたりしては、もったいないです。
私は、プリントの裏のあいているところに、「あ」なら「あ」のつく文字の言葉集めをさせます。これは、6年生など他学年の漢字指導の時も、同じです。
ことば集めから、私の大好きな親父ギャグの言葉をつくる子がでてきて、果ては、けいこちゃんの物語を作っている子もいたり、デザインのように文字を配列したり、それぞれの個性が出てきました。それぞれ、認めます。特に、お話下手な子の自由学習ほど、よく見て、コメントを書きます。子どもには必ず、とても素晴らしい個性があって、それを引き出してあげたいからです。
感じる心も、その子その子の良さを引き出すことも、全て対話から出発です。それは、6年生を担任した時でも同じように、私は取り組んでいます。
と、今回はここまでにします。次回は、生徒指導面や保護者との連携について、記事にしたいと思います。

松井 恵子(まつい けいこ)
兵庫県公立小学校勤務
兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。
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