2016.06.09
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はっけんたいむ~1年生活科の継続的実践~

兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子

1年生の1学期に、あさがおの種を観察し、植えて育てます。

その授業の導入で、どんな種を知っているか発表させました。すると、知っている子と知らない子の差がかなり激しいのです。

ひまわりの種、すいかの種、ぶどうの種・・・果物の種は、食べた時に見たことがあるはずなのですが、知らないという子もいます。たとえ見たことがあるとしても、意識していないと覚えていないことも多いようです。

あさがおの種に至っては、見たことがあると答えた子は34人中10人でした。

 

そこで、もし、お家に種があったら、持ってきてみんなに紹介しようと投げかけました。

そうやって始まった「はっけんたいむ」

もちろん種だけではなく、生き物もオーケー。理科や社会科につながるすべての事象を対象とします。

たくさんの種を持ってきてくれる子どもたち。

 輪切りにしたピーマンやキウイフルーツも持たせてくれたお母さんもいました。

 きっと、お家で、これをみんなに見せたいからもっていきたいとお母さんに話して、お母さんがラップでくるんでもたせてくれたのでしょう。

 そんな家庭での会話が聞こえてきそうです。

 

 今、電子機器が発達し、1人1台ゲーム機などの電子機器に恵まれる世の中。車で移動の時も、DVDが車内で見られる時代です。私が幼い頃は、車から見える景色に「あれなに?」と聞き父に教えてもらったり、「見てみて!!」と叫んで風景を指さし話したりしたものでした。

幼い頃から通信教育を受け、それをやらしているだけで安心している親もいるかもしれません。

 

 会話の中で育つ学びがたくさんあります。特に、幼児期から小学校低学年は経験が大きいです。

 

 感じる心こそ、育ってほしい。

 

 たかが小さな「たね」。知っているつもりだったピーマンのたねも、「よく見ると、こんなところに入っていたんだ!お母さん!みんなに見せたい!」

 そんな感じる心が、見えなかったものを見えるようにさせ、これからの学びを支えるはずです。受け止めてくださったお母さん自身も、幸せを感じてくれたらいいなと思います。

だいはっけんにゅうす「たねは、すべてかたい」

 

ただいま、教室に紹介され、掲示されている種は、30種類を超えました。

種の色や形を比べて、似ているものを探すように促したり、共通点を見つけさせたりし、見つけたことを「だいはっけんにゅうす」としてまとめました。これが、比較・分類等の算数や理科の考え方に繋がってほしいと願っています。

 

はっけんしたこと「たねは かたい」「へこんで色がかわっているところがある」

        「ひとつの実にいっぱいのたねだ」「小さい種は数が多い」

 

この発見から、その理由を探ってほしいと思っています。そして、調べる方法についても紹介しました。

「(1)専門家にきく (2)本で調べる (3)インターネットで調べる(ただしネットは全て本当とは限らない)」

さっそく、休み時間に図書室にいきたいという女の子たち。1年生ですので、まだ個人で図書室に行ったことがなかったのですが、使い方を教えて、2人で行かせました。

借りてきてくれた本は、みんなが読めるところにおいてくれました。するとお家からも本をもってきてくれた子もいて、大勢で頭を集めて本を読んでいました。

 

発表が苦手な男の子が、饒舌に話し出す

 1年生とはいえ、発表が苦手な子もいます。でも、大好きな虫のことならたくさん話せるということも多々ありますよね。自尊感情を育てるためにも、発表をする姿勢を育てるためにも、この時間を毎日とって経験を積み上げたいと考えています。

 

1年生でも自主ルールを作成「はっけんのるうる」

初めてはっけんたいむをした時は、「見えない!」「押される!」などなど。それ以後も注意することが多々ありましたし、この学習の意味を、語りました。でもやっぱり大カミナリが!休み時間も虫かごや本のまわりにたむろしていて、授業時間が守れない。本校では、チャイムが鳴る休み時間は大きな休み時間に入る時のみで、1時間目と2時間目の間などはチャイムは鳴りません。難しいことなのですが、やはり時計をみて動ける子になってほしいと思います。

そこで、「はっけんたいむを続けたいのなら、自分達で大事なことを話し合ってみて。自分達で決めてください。」と子ども達に預けました。まずは、ペアトークを促し、その後、全員で話し合いました。うわべにならないように、例えば、「なかよくする」という発言には、具体的にどうやって仲良くするのかを問い直しました。そして出来上がった「はっけんのるうる」(写真参照)1年生でも本気で考える経験になったと思います。大カミナリを落とされた子どもから発表させたことも、有効だったと思います。不思議なもので、子ども達は私に注意されるよりも、この後の方が、ルールを守ることができているのです。

 

経験が財産

 

1年生の子にとって、この1年の経験は、学校生活の土台となります。学校や授業のルールやマナーといったマニュアル的なものばかりに目がいきがちですが、もっともっと大事なのは、学びとは、与えられるものではなく、主体的に獲得するものだという感覚を培うことではないでしょうか。しかもそれは、毎日の積み重ねの中で、染みいっていくものです。子どもの1日1日は非常に早い。1ヶ月が1年くらいの感覚で1年生は過ごしているように感じます。ものすごい成長もあれば、本人達の記憶が薄れるのも早い。だからこそ、日々の積み重ねで、本気で学ぶ心や感じる心を豊かにさせたい。細胞に染みいるように日々を大切に経験させたいと思うのです。 

松井 恵子(まつい けいこ)

兵庫県公立小学校勤務


兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。

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