外国語活動が”教科”になると、学習内容が定着したかどうかが問われてくるように思います。
教員の立場で考えると、「”りんご”を英語で言えるかどうか」「”いくつ持っていますか?”と英語でたずねることができるか」となりがちです。
しかし、こういった思考をしてしまうと、教員自身が学生だった時の「知識偏重」「記憶重視」の学習になってしまいます。
「英語を使って○○ができる」「アクティブラーニング」といった現在求められている視点からの学習にはなりません。
私はこの点を一番危惧しています。
今、”学習”としての外国語教育を行う時、子どもたちにつけたい力は何なのか。
”子どもが英語を使えるようになる”という授業での目標と、その先にある”英語を使ってどんなことができるのか”という視点から、”授業の中で何を続けていくのか”を考えることが大切だと思います。
モジュール学習
”続ける”と言えば、今はモジュール学習が注目されています。
自治体によっては、教材会社のDVD教材やテキスト教材を積極的に取り入れようとしているという話をよく聞きます。たしかに教材はよくできています。それを見せれば、子どもは英語での会話や文字に興味を持つようにつくられています。ネイティブの発音を何度も真似し、それらしく発音できるようになる子もいます。文字に関する質問にも答えられるようになります。
しかし・・・です。
これだけでは、コミュニケーション能力を育むことにはならないと私は思っています。
大切なのは、英語の音をそれらしく再生できたり、文字を認識できる力をつけることではないからです。ここで終わってしまえば、機械をつくっているような気がしませんか?レコーダーや認識装置のような感じです。だからこそ大切なのはこの先です。
自分が獲得した言葉をただの音ではなく、道具として使い、人とやりとりを行って楽しさや達成感を実感できる場をつくることです。
「子ども英語」から「大人英語」へ
”楽習”から”学習”への視点の転換は、「子ども英語」と「大人英語」という言葉を使って、『「教えない」英語教育(中公新書ラクレ)市川力著』の中で指摘されています。
https://www.amazon.co.jp/「教えない」英語教育-中公新書ラクレ-176-市川-力/dp/4121501764?ie=UTF8&*Version*=1&*entries*=0
この本の中では、筆者の海外での教育経験から指摘が行われています。ゲームやリピート中心の英語教育では、その後の英語を使ってやりとりができるコミュニケーションの育成にはつながらないというものです。
もう10年以上前に発行された本ですが(2005年発行)、(教師が)「教えない」ことによって、(子どもは)「学ぶことができる」という指摘は、現在求められているアクティブラーニングの考え方につながります。
私の実践もこの著書の中で紹介されています。一読いただければ、意味のある学びの”学習”のヒントが見つかると思います。
”学習”(モジュール学習)をすすめるうえで大切なこと
今年度、小学校での英語教育の問い合わせが昨年度とは比べ物にならないほど私のところに届いています。
英語教育をどうしていくかが注目され、具体的に動き始めているのがわかります。
特に文部科学省が提言されているモジュール学習について、何を行うかといった点が話題に上がります。
モジュール学習は短時間で行うので回数が増えます。だからこそ、「何を行うか」が直近の話題になります。ただ、それと同時に、「どんなことを目的にするのか」といった教育観が大切になると思います。私自身が大切にしたいと考えることをまとめておきたいと思います。
○意味のある繰り返しを行う(必然性・達成感が生まれるようにする)
○双方向のコミュニケーション活動を仕組む(ビデオで終わらず、人とのやりとりを行う)
○言葉を使う場をイメージできるようにする(話す・聞くではなく、使う視点を大切にする)
今号では考え方を紹介しました。最近、「外国語活動が教科になったら何が大事になるでしょうか」「モジュールでは何をしたらいいと思いますか」といった問い合わせが急増しているので、それに答えさせてもらった部分があります。
でも、具体的な実践があった方が分かりやすいと思います。次号からはそれを紹介していきたいと思います。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)
倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。
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静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
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