前号では、クラスにはいろいろな子がいるので、授業の中に様々な活動を組み合わせることが大切だという話をさせていただきました。今号ではもう1つの視点を紹介したいと思います。
小学生の実態
小学校は1年生から6年生の間に大きな成長をします。
算数で言えば、数を数えることから始まり、最後は割合や比例といったことを学びます。国語では、絵を見て感想を言っていたのに、最後は想像の世界の中の「やまなし」の主題を考えます。
学ぶ内容の変化とともに、精神的にも大きな変化があります。
知的好奇心と知識活用好奇心
他教科で学ぶ内容には大きな変化があります。では、英語ではどうでしょうか。
たしかにゲームは人気があります。しかし、ただゲームをすればいいというわけではありません。前号で紹介したように
いろいろなゲームを組み合わせることが大切だと思います。
それともう1つ。子どもの実態にあった視点を教師がもっておくことが大切だと思います。他教科がそうであるように、同じような活動であっても、低学年と高学年では内容を変えていくことが必要です。
低学年は「知識活用好奇心」、 高学年は「知的好奇心」がキーワードだと私は考えています。
低学年は「知識活用好奇心」
低学年は知っている事をどんどん言いたいという子が多いように思います。
例えば、"Color"を扱う場合、赤いカードを見せて"What color is this?"と聞いても意欲的に答えることでしょう。
ですが、それで終わるだけではなく、自分が答えたことがみんなのためになると意欲が増していきます。
例えば、黒の線で書いたオニギリのイラストを見せて”What color is this?"と聞きます。子どもたちは"White!""Black!"と元気に答えることでしょう。
そして教師が"Yes!"と言って、のりの部分がWhiteで、ごはんの部分をBlackに塗ったイラストを見せたらどうでしょう。
みんなが笑い、とても盛り上がります。
この後、イチゴのイラスト(Red & Green)や人参(Orange & Green)を見せていくと、言いたい子がどんどん増え、さらに盛り上がっていきます。
低学年では、自分の一言が周りを楽しませたり、反応してもらえたりする活動を行うのがいいと思います。
高学年は「知的好奇心」
私に小学校の英語の楽しさを教えてくれた1人が昭和女子大の小泉先生です。
小泉先生は、「小学校の高学年は、吉本新喜劇よりMr.マリックだ。」という話をされていました。
つまり、「わっはっはっ」と笑う活動では飽きたり引いてしまったりする子が増えてくるので、「どうなってるの?」「なるほど」といった知的な内容を扱うことが大切だということです。
例えば、先ほどの低学年での"Color"の続きとして、信号機のイラストを見せたらどうでしょう。
○ 歩行者用の信号では、上と下、どちらがRedでしょうか。
○ 車用の信号では、右と左、どちらがRedでしょうか。
○ オリンピックの五輪では、どの場所がRedでしょうか。
赤いカードを見せて"What color is this?"と聞く活動は高学年の実態には合っていないように思います。楽しむ子はいますが、多くは心の中で「わざわざ聞かなくても・・・」と思っていることでしょう。
他にも、”What color is today's your heart?"と聞く活動にしてはどうでしょう。
または、”What color is the image of ○○くん?"と聞いてはどうでしょう。
高学年では「分かっていそうで分からない」という知的好奇心を大切にする活動を組み入れることが大切だと思います。
今号では、低学年と高学年という分け方で活動の視点を紹介しました。
ですが、実際にはクラスの中でいろいろな子がいるわけです。
前号と同じように、知識活用好奇心が発揮できる活動や知的好奇心を満足させられる活動を組み合わせていくことが大切だと思います。
次号は、英語が教科になった時に求められるであろう「学習」の視点での授業について私の実践を紹介していきたいと思います。

江尻 寛正(えじり ひろまさ)
倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。
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静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
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