2014.01.29
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英単語を料理する-ひと手間かけた既習英単語の指導-

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

もう新年も1ヶ月が過ぎようとしています。3学期は1年を締めくくる時期でもあります。新たに今年の目標を立て、これと平行して昨年の4月からの振り返りとまとめをする頃でもあります。全く正反対のことを平行して行うので、心も頭もなぜか空中分解しそうで、精神的にも不安定な変な時期でもあるかもしれません。(おっとこれは筆者だけの個人的見解かも)

さて、最近の英語での取り組みを幾つか紹介させていただきます。


1.New Year Resolutions
ほぼ毎年、3学期の最初の授業で行っている活動です。全国でも似たような実践が行われたことでしょう。ALTの先生とのteam-teachingの場合もあります。冬休み中の想い出や出来事を簡単にQ&A形式で対話します。次に今年の「抱負、めあて」を英語で用意したワークシートに書きます。「さあ、書きなさい」で書くことができるのであれば、苦労しませんね。定型の文を示すように配慮が大事です。たとえばI am going to~. I've decided to ~. I would like to などです。
次にどのような内容で考えたらよいのか提案します。たとえばstudy, sport, hobbyなどテーマを指定します。これら以外でも「抱負やめあて」があれば、それを書くように促します。「抱負やめあてなどない。」と言われないように、この取り組みに拒絶反応をしめさないように最善の注意を払いたいものです。弱視や病弱の生徒に取り組みました。視覚障害の生徒はパーキンスを使って点字で打ち、パソコンを操作し墨字でプリントアウトして表現することができるでしょう。

2.過去形の疑問文を使う活動
まず過去形の疑問文とYesやNoでの答え方を紹介し、簡単な口頭練習します。ここで、コミュニケーション活動として、次のように条件を出します。
「話す相手がYesと答えそうな質問を考え、英語で尋ねあう会話をしよう」
相手がYesの返事であれば、ポイント1点を質問した人が獲得できます。班または数人のグループ内で対話を行うことができます。質問しあう回数や時間や話し相手等は、実態に応じて工夫します。具体的に作った疑問文は、(昨日テレビを見たことを知っていれば)
Did you watch TV show yesterday?
(相手の毎日の行動について)
Did you come to school by car this morning?
などです。
大人げなかったかもしれませんが、私もグループに加わり、ポイント獲得は1位になってしまいました。
これは、口頭活動です。この活動が終わったら、時間を確保して作った疑問文をノートや点字で書き留めるようにします。言いっぱなしで終わりにしないように配慮します。

3.ワードゲーム
3学期で、これまで学習してきた単語の総合的な復習を兼ねて次のような活動をゲーム感覚で授業の最初に始めています。
(1)aで始まる文字を60秒以内にできるだけたくさん言ってみよう。
  教科書の巻末にアルファベット順の単語のページがあります。それを眺めていて、思いつきました。aの他の文字bやcなどで変化させていくこともできます。qやyやzなどで始まる単語は非常に限られていることに気づくのも面白いです。
  ちなみにNew Horizonの1年生の教科書では、aで始まる単語は27個も掲載されています。読者の皆さんは、10個以上思いつくでしょうか。(例は文末に紹介します)

(2)3文字の英単語を10個以上書いてみよう。(中学1年で学習する範囲で)
 英単語の文字数に制約を加えてみます。また、文字数の多い単語を言ってみよう。これは割と盛り上がるかもしれません。1人ひとりに順に答えてもらいます。前の人が言った英語より1文字でも長い単語をなんとかひねりだそうとがんばります。9文字の単語までは割と思いつくかもしれません。
9文字、10文字、11文字と例を紹介します。高校レベルになると接頭語(辞)や接尾語(辞)を付けることで単語を長くすることが可能です。以下のような単語が思いついたでしょうか。
(以下New Horizonの1年の教科書からです)
(9文字)yesterday, Wednesday, September, twentieth, sometimes, Chinatown, beautiful, afternoon, difficult
(10文字)restaurant, journalist, basketball
(11文字)interesting, grandfather 
 
(3)単語の中にooやeeなど同じ文字が連続で入っている単語を書きなさい。
too, book, look, food, cook, moon, room, tooth, soon, football, door, cookie, notebook, took

(4)[オ-]と発音するのにaで始まる単語を言いなさい。

これは発音と綴りがなかなか定着しなく、間違いやすいので思いつきました。次の(5)も同様です。
all, also, August, almost

(5)読まない/gh/が入っている単語を書きなさい。
eight, light, night, high, right

今回紹介した単語は、中学校1年の教科書だけからです。これまで学習した英単語を上で見てきたように、〈綴り、文字数、発音〉などの視点で、授業の導入や動機付けの一つとしてクイズ感覚で生徒に尋ねました。「次の日本語を英語にしなさい。」やこの逆の指示だけでは、生徒に単調すぎるような気がします。少しだけかもしれませんが、授業に活気が戻ったようです。今までと違うやり方に興味関心が出てきたのかもしれません。 
   漢字を学習するときに、部首など覚え、音読み読み、画数などに気をつけたりしていますね。似たように、英単語も一部から全体を連想できるようにしたり、文字数の制約を加えたりすると面白くなるようです。「yで終わる単語を書きなさい。」など最後の文字を指定することもできます。ここでは紹介しませんでしたが、単語の一部を虫食い状態にして英単語を完成させることもしました。一つの単語でも色々な切り口で、異なった料理方法やひと手間を施すことで、生徒に「そっか!」という気づきや面白さに気づいてもらえたら嬉しいなと願っています。「面倒くさい、なかなか覚える気になれない」などから少しでも遠ざかってもらえたら幸いです。

 実は既知の単語の再発見となり喜んでいるのは私自身なのかもしれません。
私たち指導者側に心のゆとりと遊び感覚も日頃から持ち合わせられるようにできたら良いのかもしれません。


失礼いたします。

/a/で始まる単語例(New Horizon 1より)
【a, am, a.m.(午前), an, as, at, and, any, are, ant, ask, all, ago, also, area, after, again, about, April, apron, around, almost, animal, August, America, Australia, afternoon】

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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