2026.08.17
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「モンテッソーリ保育園とメンタルヘルスは、関係ない」と思っていた

アメリカ・モンタナ州ボーズマンで、モンテッソーリ保育士として日々子どもたちと過ごしながら、地元の州立大学院で学びを続けています。
今回は、7月から関わるようになった1、2歳児のクラスでの出来事をきっかけに、保育の現場と、大学院の授業で学んだ「メンタルヘルス入門」について考えたことを綴ります。

ボーズマン・モンテッソーリ保育士 城所 麻紀子

アメリカでは、5人に1人以上

大学院でメンタルヘルスについて学び始めるまで、職場のモンテッソーリ保育園とメンタルヘルスは関係がないと思っていました。

「メンタルヘルス入門」という授業で、メンタルヘルス・リテラシーやトラウマ、職場における心の健康について学ぶなかで、その考えが少しずつ変わっていきました。
アメリカでは毎年、成人の5人に1人以上が何らかのメンタルヘルス上の問題を経験していると知りました。

胃腸の風邪かしら

ちょうどそんなことを学んでいた今月、1歳児クラスの若くて元気な先生が、胃の不調と嘔吐のために、一週間ほど間をあけて二度休みました。
私は、「胃腸の風邪かしら」と思っていました。

その話をマネジャーにすると、「Anxiety(不安)じゃないかな」と言われました。「え?彼女が?」その瞬間、授業で学んだことが、急に目の前の職場の出来事とつながりました。

「元気な人」にも

さらに驚いたのは、そのマネジャー自身が、若いころにパニックの症状や心の不調を経験していたと話してくれたことです。長い時間をかけて自分に合う対処法を探し、少しずつ回復してきたのだそうです。
その人も、いつも朗らかで前向きで、必要なことははっきり言える人です。仕事も早く、周囲から頼りにされています。

私はその話を聞いて、授業で習った「メンタルヘルスは、すべての人にとっての問題」という言葉に、あらためて納得しました。

転職後、元気になった先生

以前一緒に働いていた先生のことも思い出しました。そういえば、その先生も、胃腸の不調で朝に来られない日が増えていました。

経済的な心配や将来への不安について、具体的に話していたことがあります。彼女もまた、仕事では堂々と意見を言い、行動力のある人でした。
大学職員に転職した後は、すっかり元気になったようです。

子どもの環境を整える大人

私の職場のモンテッソーリ教育とメンタルヘルスは、全然関係なくない、ということがみえてきました。
保育園には、子ども、保護者、保育者、事務職員、管理職など、多くの人が関わっています。子どもたちは、周囲の大人の表情や声の調子、緊張した空気を敏感に感じ取ります。

教育に携わる大人が安心して働けることは、子どもたちが安心して過ごせる環境にもつながっていくでしょう。
モンテッソーリ教育では、子どもが日々を過ごす「準備された環境」を大切にします。

その環境を整える大人自身の心の健康もまた、教育の環境の一部なのだと思うようになりました。

セルフケアだけでは足りない

一方で、心の健康を個人の努力だけで守ることはできません。
低い賃金、健康保険への不安、人手不足、シフトで時間調整がしにくいこと、仕事量の多さなど、幼児教育の現場には、個人だけでは解決できない課題があります。

「しっかり休みましょう」「セルフケアをしましょう」と言うだけでは足りません。
保育者や教師が無理をし続けず、困ったときに相談できること。管理職や同僚が互いの状況に目を向け、支え合えること。

そうした職場の仕組みや文化も、心の健康を守るために大切です。

少しくらい、おせっかいでも

私には、保育園の低い賃金も、人手不足も、健康保険への不安も変えられません。メンタルヘルスの専門家ではないので、誰かの不調を診断したり、問題を解決したりすることもできません。
でも、同僚の様子に関心をもち、「最近どう?」「忙しそうだけれど、大丈夫?」と声をかけることはできます。

すぐに解決策を示すのではなく、相手の話を聞くこと。「きっと大丈夫」と簡単に片づけず、「それは大変だったね」と受け止めること。必要な場合には、相談先や専門的な支援につながる情報を伝えることもできるかもしれません。

まず、できることから

スタッフルームに、セルフケアや地域の相談先をまとめたチラシを置いてみようと思っています。しんどい日に、ふと目に入るかもしれません。
メンタルヘルス・ファーストエイドの講座も受けてみたいです。定例会議でも、連絡事項だけで終わるのではなく、「今週どうだった?」と少し話せる時間があってもいいと思います。

特に、若い先生たちは、仕事、家賃、健康保険、将来のことを抱えながら働いています。私が全部を聞く必要はないし、聞けるわけでもありません。
でも、少しくらい「おせっかいなおばさん」と思われても、「最近どう?」と声をかける人になることに決めました。

子どものために環境を整える大人が、無理をし過ぎていないか。困ったときに、「助けて」と言えるか。
モンテッソーリ保育園とメンタルヘルスは、私が思っていたよりずっと関係がありました。

城所 麻紀子(きどころ まきこ)

ボーズマン・モンテッソーリ保育士、元サンディエゴ日本人向け補習校講師、モンタナ州立大学院家族消費者科学科 修士課程


2020年からアメリカのモンタナ州の人口5万人の町で、モンテッソーリ保育園の保育士をしています。
アメリカといっても、白人約90%、アジア人約2%(最近増えました!)という環境です。
あまり日本人の方に知られていない、アメリカの田舎での教育や生活の様子などを共有できたらいいなあと思っています。

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