2025.01.29
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先生のための何だかとても大切なもの 子どもたちとのおしゃべりを楽しもう。

なんで先生を続けているのだろうと時々振り返ることがあります。
ただ目の前の子どもたちを見ていると、もしかしたら毎日聞いている子ども流のおしゃべりリスニングが、なかなかに楽しいからなのかもと思ったりします。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

子どもたちとのおしゃべりで思うこと

私の学級では、子どもたちとのおしゃべり(対話ともいいますが)の場を設けています。学校で対話をすすめているという理由もありますし、自分が普段一番接しているのは、どちらかというと対話が苦手な子たちということもあります。ただ、そのおしゃべりの内容や構成がなんだかとてもおもしろい(興味深いともいいますね)のです。

以前は子どもたちとある程度の距離があった方が指導や支援がしやすいだろうと思う時期もあり、私の方で面白そうな話題を提供して子どもには笑ってもらうというようにすすめていたところもあったのです。ですが、最近は子どもたち同士のやりとりを聞きつつ、時に割り込みつつ、気楽に会話する自分がいます。

子どもたちの話のおもしろさ

さて子どもたちの話のおもしろさはどこから来るのでしょう。

ちょっとした同音異義語の意味のギャップ、言いたかった言葉・しっくりくる言葉を探している様子、ことばの意味を対話の中でだんだんと修正を試みている感じ、話しすぎて何の事だったか忘れてしまうとか、みんなで話すことと、そっと打ち明けることの区別があいまいで苦笑いするとか。

自分なりの語りの展開や相手の返答に合わせてそのつどちょうど良いレベルで言葉を返すようなこともしているかもしれません。生返事にならないように返事をするのも対話で身につけたいスキルなのかも知れませんし。

おしゃべりの中で子どもはチャレンジする

こうして、特に意識をしているわけではないのでしょうが、子どもたちはおしゃべりの中でちょっとした言葉の使い方のチャレンジや調整を試しているようにも感じます。これは大人の私たちが日常していることでもありますね。自分はカタカナ言葉にすぐ注目してしまい、新しい言葉を聞くとすぐにそれを話に挟んでみたくなります。子どもたちもそうやって使える言葉数を増やしているのだろうと思います。

おしゃべりの場では、余計な一言がつい飛び出す時もありますが、そこは軽くいさめつつ軌道修正を図ったり、気づきにつながるような話をしたりすることもないわけではありません。

でもほとんどの話の流れは子どもたちに任せています。

対話に流れができるまでにはそれなりの月日(数ヶ月とか)がかかるのもまた事実です。きっと人の話を見聞きして、メンバーそれぞれのその人なりのイメージをつかんだところで話し合いに加わるのでしょう。何を言ってもそれなりに受け止めてくれるような、安心・安全が感じ取れることは参加しやすさにかなり関係していますね。

おしゃべりリスニングの効果

なお、おしゃべりの場で主導権を握るのは私ではなく、いつも子どもたちの誰かです。「ねえ、○○知ってる?」からはじまって、「えっ先生そんな事も知らないの!」で終わる展開に、いささかげんなりしつつもいろいろなことを教えてもらいました。

こちらから質問することへの答えより、きっとこうした話の中で自ずと生み出される言葉のほうが子どもたちの本音により近いのでしょう。おしゃべりリスニングを続けることで、どの子とも言葉や考えの行き違いが減り、またその子なりのあり方が分かりはじめ、学級経営も安定してきます。ときに主語なしでも、子どもも先生も意味が通じるようになるのが、またちょっとおもしろいことだと思います。

学校に一歩入れば、私たちの身辺には無い発想やことばが行き交います。さまざまな子どもたちの表情やことばを見聞きすることの意味に、改めて着目するのもなんだかとても大切なことなのではと思うのです。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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