先生にとっての何だかとても大切なもの 先生のネーミングで、ありふれたものが子どものヒーローになるのかもということ
普段あまりないことですが、じつは最近「先生ってネーミングがうまいよね」とちょっと褒められたことがあり、その勢いを借りてこの文を書いています(ここではネーミングは 名前や題をつけることの意味です)。
よく考えたら毎日の学校での活動は、どんな題を提示するのか、どんなネーミングにするのかというところから始まることが多々あると思います。この「学びの場」「教育つれづれ日誌」も含め、ネーミングは人の行動を相当に左右するのでしょう。自分もちょっと感じいって参加させていただいたのですし、なかなかに侮れないと思います。
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭
ネーミングとは便利なもの
毎日の板書でもパソコン上の発問でもネーミングなしでは事は進みません。課題の名前、探求すべき事、プロジェクト名などなど。実際の思考や作業、行動等を何でもネーミングして、それぞれの子どもたち同士と私たちがある程度の共通理解ができるように配慮していると思います。
名前のないものに名前をつけることで、毎回動作や作業全部を説明することなくお互い理解し合えるのだから、ネーミングとは便利なものだなと思います。
ただし、ネーミングは、動画のようにすべての動作を正確に伝えて、正確に再現できるようにするものというわけではなさそうです。ネーミングの受け止めの方向性は同じでもその認識には子どもによって「ずれ」があります。そこに交流や認め合いが生まれることも多く、教育の場で活用したいところです。
ネーミングで雑草を教材に
それはそうと夏休み明けの校庭はいつのまにか雑草だらけ。子どもたちと育ててきたトウモロコシやサツマイモなどの作物もあるので草取り作業は必須です。何だか無駄で要らないものとも感じることはあるのですが、実は(特に地方の)学校は雑草なしでは運営できません。雑草があるから子どもたちの大好きなカマキリやショウリョウバッタはやってくるのだし、校庭の余計な乾燥や地形の変化、砂塵の飛散を防いだり、ちょっとしたすり傷から実は雑草に守ってもらったりした子もいることでしょう。日中40度近い校庭に、もしも雑草の緑もなかったら砂漠とほとんど変わらないのではと思ったりします。となると、雑草の肩をちょっと持ちたくなりますね。
そこで、雑草の教材化に取り組んだことがありました。子どもたちの雑草への注目度はゼロ。興味関心は子どもたちから示される時代ではありますが、それだけでは広がらないのもところもありそうです。
雑草とは教育と同じくらい誰もが見て経験して語れる可能性のあるもの。もう少し注目しても良いものと思います。雑草も含めた生物の機能や構造は、各種の研究により今や我々が生きていく上でとても大切な資源と言えるのですし。
だから、提示のネーミングを考えてみました。
雑草で遊ぼう・身近な雑草に目を向けよう・雑草の秘密と不思議・最強の草を探そう・食べられる草を探そう!・・・・ちょっと硬い表現ですね。
結局その時は、ある子どもたちの会話から、「がんばっている草を探そう!」というネーミングで落ち着きました。
私としてはありきたりかなあと思ったのですが、これが大当たり。雑草は実によくがんばっていたのです。灼熱のコンクリートの割れ目、ほんの数ミリの隙間などびっくりするようなところにも生えています。子どもたちは「がんばっている」という大まかなとらえのなかで、それぞれの価値観で頑張っているなあと思う草を見つけていきました。草丈がちょうど子どもたちの目線とぴったりなのも良かったと思います。
それこそネーミング一つで、子どもの関心ゼロの雑草が、大注目のヒーローになったのでした。この「気持ちの言葉」+「ものの名前」パターンのネーミングは、書籍でもテレビ番組でもよく使われているようですね。まだまだ工夫ができそうです。
ネーミングに求めたいことは
授業再開すれば、パソコンの配信課題や板書など毎日何個もその場でネーミングする機会がありますね。
読んだ途端にクスッと一度笑ってその子なりに向かい合える、そんなネーミングをいつも示せたらいいなあと思っています。「やったあ!」という気になりますし。
それも私たち先生にとっての何だかとても大切なものだと思うのです。
渡邊 満昭(わたなべ みつあき)
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト
いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。
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