【ミニネタ】すすんで辞書を引きたくなる「○○な言葉」
ずいぶんと久しぶりの投稿になってしまいましたが、今日は授業のミニネタをお伝えします。
授業のはじめにコレをすると子どもたちも目の色を変えて集中して学習をするので、ぜひ取り入れてみてください。
それは「○○な言葉みつけ」です。
大阪市立放出小学校 教諭 大吉 慎太郎
【ミニネタ】すすんで辞書を引きたくなる「○○な言葉」
以下は、私の学級にて行なっている方法です。
①「“あ”から始まる強そうな言葉」を辞書で探すことを伝える
②制限時間は2分、終わると班で話し合って代表を決めるのが1分
③各班の代表が発表する(授業者の私はそれを板書)
④③で出た言葉に全員で投票して一番「強そうな言葉」を決める
という流れで1回の活動が5分弱で終わります。これを私は国語の授業で毎回おこなっています(次時は「“い”から始まる強そうな言葉」)。
次に、「○○な言葉みつけ」を効果的に行うための仕掛けについて説明します。
【超重要】テーマはざっくり大雑把に
私の学級が1学期に取り組んだのは「強そうな言葉」です。ここで大事なのが「強い言葉」ではなく「強そうな言葉」というところです。「強そうな言葉」なので、このゲームでは「言葉の意味」は関係なく、言葉の響きや文字の印象でいいことにします。
例えば、「“あ”から始まる強そうな言葉」ならこんな例が考えられます
・暗黒
・阿修羅
・アーリーアダプター
・アイウォール
・合縁奇縁
など、いかにも童心をくすぐるものから、まるで漫画やゲームの必殺技のような言葉が選ばれていきます。
「強そうな言葉」なので個人の感覚によるところも大きく誰にでも参加しやすく、また、感覚で投票され、勝てるチャンスがあるのです。
実は、「運だけでも勝てる時もある」というのが熱中させるのに重要な要素です。
熱中するのに必要なのは「運」
みなさんはスマホゲームをしますか。大人も子どもも熱中しますし、小学校でも課金のトラブルも絶えません。ゲーム自体は単純なゲームも多いのですが、何が人々をあれほどゲームに駆り立てるのでしょうか。
要因はたくさんあるのですが、ここではそのうちの一つを紹介します。それは「運」です。
多くのスマホゲームは、プレイングの技術ももちろん重要ですが、「ガチャ」と呼ばれる抽選で強力なアイテムが手に入ったり、能力を向上させたりすることでゲームを有利に進めることができるようになります。つまり、初心者やプレイングが苦手なプレイヤーにも格上のプレイヤーに勝つチャンスが与えられているのです。
これは学校教育、とりわけ授業の中ではなかなかないシーンではないでしょうか。
学習に苦手な子が、知識をたくさん身につけている子に勝つシーンはなかなかなく、一度つまずいた子が参加しづらくなっています(学習を勝ち負けという基準で論じると批判があるかと思いますが、ここでは便宜上そう表現させてください)。
そこで、運や感覚だけで勝てる要素を授業の開始時に設けることで習熟に差がある子たちの集団でも全員が熱中して取り組むことができます。
気づくと、子どもたちは「○○な言葉みつけ」を楽しみにして徐々に準備をするようになるのですが、ここでマジメな先生ほどハマりやすい罠があるのです。
予定調和が大事‼︎マジメな先生ほどハマりやすい罠
私の学級では「“あ”から始まる強そうな言葉」から「“い”から始まる強そうな言葉」「“う”から・・・」と五十音順に取り組んでいますが、この順番は絶対に変えません。また、「“わ”から始まる強そうな言葉」が終わるまで「強そうな言葉」というテーマも同様に変えません。
理由は簡単です。それは、予習できなくなるからです。
熱中してくると、必ず現れるのが戦略を練る子です。つまり、休み時間、もしくは前日から辞書を熱心に引いて勝つために予習をしてくる子が出てきます。これ読んでくださっている先生の中にも何人か顔が浮かぶのではないでしょうか。
どうでしょう。その時の子どもの顔は生き生きとしていませんか。
「休み時間に調べとくのってアリ?」
「昨日、家でこんなん調べてきてん」
「ぜったいコレ勝てると思うねん」
キラキラとした顔で話しかけてくるようになります。ふだん予習をしない子でも事前に辞書を引いて言葉を調べたくなるのです。それが熱中です。
「明日は、こうやったら勝てるかも」という気持ちが自ら辞書を引くという行動に現れてきます。一人がするようになると、周りもどんどんと引き込まれていき、学習の習慣がどんどんと広がっていきます。
さて、ここまで読んで「テストは何が出てくるかわからないから毎日直前にテーマを発表しよう」「“○”から始まるをランダムにして、直前で発表したらドキドキ感もあってもっと良くなるぞ」など思った方はいませんか。
単刀直入にいうと、やめたほうがいいでしょう。
先ほども書きましたが、予習に不慣れな子でも予習してくるのです。先生になる人の多くはマジメな方も多く、どこから出るかわからなくすれば幅広い中から予習してくるだろうと考えるかもしれません。しかし、多くの子は違います。範囲が広くなれば「やっても意味ないかも」と予習をしてくることはありません。見当もつかない努力はできない子が多いのです。範囲を絞ってやり、努力が報われやすい時間を作ってやるのも大切なのです。
だから、この活動では予定調和を大事にしてほしいのです。
まとめ
今回は、辞書を使った簡単な授業の導入を紹介しました。1回5分ほどで終わるので是非とも取り組んで欲しいと思います。
お家でも学校でも学習にデジタル機器を使うことが多くなってきましたが、紙の辞書ならではのいいところもあります。デジタルのように検索した言葉がピンポイントで出てこないからこそ、引く過程で出会う言葉があるのは面白い点です。知らない言葉でもまずは「なんとなく強そう」でも興味を持って、たくさんの言葉と出会う機会になればいいなと思います。
大吉 慎太郎 (おおよし しんたろう)
大阪市立放出小学校 教諭
教務主任として「学校の業務の改善」と「行事の精選」を行なっています。また、「プログラミング教育」や「ICTの推進」にも取り組んできました。授業におけるICT活用についての実践を多くの先生と共有しあっていきたいと考えています。
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