2024.04.02
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「振り返り」に値する中味が大事~新年度・出会いの準備編~(5)

「子どもにとって中味のある授業」を創るには、どうしたらよいでしょうか。新年度を迎え、子どもたちとの出会いが待っています。
ドキドキのこの数日間ですね。学級担任としてどのような出会いの準備を、授業の準備をすればよいのでしょうか。「週案簿」「校内研修」を手掛かりに考えてみたいと思います。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

どんな新年度を迎えていますか?

新年度が始まって2日目。
新しい学校づくり、学級づくりのスタートはいかがでしょうか。
まだまだ緊張感でいっぱいの職員室や事務室でしょうか。
今週は年度初めの職員会議、学年の打合せ、入学式の準備等、一日一日が慌ただしく過ぎていき、夕方になって振り返ってみると、何をしていたのか覚えていないくらい、そんな1週間ではないでしょうか。
そんなときですが、大切にしたいのは1年間共に過ごす、共に授業を創っていく子どもたちとの出会いです。
こんなふうにしたいという思いはだれでも持っていますよね。
実際、どうアクションすればよいでしょう。

「週案簿」を活用してみる

以前「教師の五感を磨く」で「週案簿」についてふれましたが、今回は別角度から「週案簿」の活用について語ってみようと思います。

教務主任をしていた頃の話です。
年度当初、先生方の週案簿を読ませていただきました。
そこに記されていたのは、子どもたちとの出会いの様子、子どもの表れ、そして出会いから、今年度にかける思い・願いがそれぞれに伝わってくるのでした。
中でも、こんな言葉が印象に残っています。

【今年度の目標】
母親のようなやさしさ。温かい愛情をもって
最初にきちんと指導
子どもたちに全体を意識させる
名前を付けたあいさつ
面倒なことを丁寧に
やり忘れのないように確認

私たちはそれぞれの職場のチームの一員として教育目標の具現のために、それぞれの場で力を尽くしているのですが、個人としてもその目標を達成するために、どんなところに目標をおくのか。具体として考えておく必要があるのだということをあらためて感じました。
何となくじゃなくって、抽象的な言葉じゃなくって、「私はこうします」ということを言葉にはっきりと示すこと。書くこと。
これはその時の自分のためにも、その後の自分のためにも重要だと思うのです。
そのことが学級経営にも授業づくりにも反映されていきますし、一人の教師として、この一年どう成長していきたいのかが明らかになると思うのでした。
早速真似したいと思いました。
また、学級の子どもとの出会いでどんなことを伝えたのかを書かれている方もいました。

努力は、たし算 1+1=2 
協力は、かけ算 24×0=0

子どもに何を語るのか、何を伝えるのか。そして、語ったのか、伝えたのか。
その言葉をきちんと残しておくことも、その後の自分の指導、子どもの表れの見取りにも生かせるのではないかと思いました。
私は、こうした言葉を繰り返し読みながら、教室でどのようにその言葉が語られるのか、その場で見てみたいと思いました。

年度はじめの校内研修をどうしていますか?

ある年の2月。
知り合いの校長先生から「校内研修」の講師の依頼を受けました。
いつの研修の講師かというと、新年度4月5日の午前90分間でした。
年度途中でもなく、夏季休業中でもなく、まさに新年度スタートして間もない時に講師を招いての研修とはどういうことだろう?
あまりに例のないことでびっくりしました(大抵の場合、年度初めの校内研修は、研修概要の説明やら、計画の確認やら、一年間の見通しを持つ場になっていたように思います)。
しかし、今回は一年の始まりだからこそ教師にとって授業づくりが大切であるということを、また「授業づくり」こそが「学級づくり」であることを「令和の日本型教育」の具体像をあらためて考えてもらいたいとの、ねらいのもとに講師をお引き受けしました。
もちろん、私は講話などという一方的な話を聞くスタイルは好まないので、アクティブラーニングたっぷりの演習中心の90分間で構成しました。
一番は先生方が学年チームでこれから子どもたちと創っていく授業構想を考え合い、それを交流させていくことです。そのことで、子どもを主人公とする、これからの授業づくりのイメージを創っていくことです。

先生がたは、こう「振り返る」

研究概要を確かめ合うことも必要かも知れませんが、やはり教室で中心となる授業をどう創るかを考え合うことは、まず大事にしたいなとやってみた、率直な感想です。
参加してくれた先生方は、こんな振り返りを書いてくれました。

〇 算数の今年度最初の授業を考えることで、子どもが学びたい、やってみたいと思う授業を創っていきたいと思えました。指導要領にあれほど具体的に書かれているとは知らなかったので、これからもう一度しっかり読んで勉強したい。

〇 演習を通して、どうすれば子どもに必要感を持たせられるかを考えることができた。あまり難しく考えず、子どもの実態を踏まえながら小さな実験を重ねていきたい。年度はじめにお話を聞くことができ、本当によかった。

〇 子ども主体の授業づくりの大切さに気付きました。知りたい・学びたい・やってみたいと意欲的に学べる環境づくりを心掛けたい。

〇 実際に自分たちが使っている教科書と他の教科書を比べてみることで、内容が全く異なることに驚いた。子ども主体とは、どのようなものなのかを考えながら授業をしていきたい。

〇 教科書によって導入が違うことに驚いた。他の先生と話すことで一単元の導入を深めることができた。子どもの問いから始まる授業についてあらためて考えるよい機会になった。ちょっと変えてみる・チャレンジするということを4月から実践してみたい。

むすびに

ある年の4月。私は学級担任として子どもたちと出会う始業式のことを「週案簿」に、こんなふうに書き綴っていました。

子どもたちと出会う日。
学級担任の発表の前に、並んでいる子どもたちの表情を見ていく。
引き継いだ子どもたちの資料には、あまりよいことが書かれていない。
それを自分自身の中で思い起こすと、不安になる。
果たして、これから始まる一年間、この子どもたちとうまくやっていけるだろうか?
これまでの経験など、ここでは、あまり関係ないように思われた。
始業式の後、子どもたちと共に教室に向かう。
後ろから男の子の声。
「先生、これからよろしくね」
突然のこの言葉が、私の心をドンと突き動かした。
「うん。一緒に頑張ろう!」そう正直に言えた。
緊張が解きほぐれていった一瞬だった。
教室に全員が揃った前でも、それまでの不安はない。
「前担任が見ていた子どもたちと、今、これから見ていく子どもたちは違うのだ」
「子どもたちを見取り、見守り、かかわっていくのは自分なのだ。何とでもなる」
自ずとそういう思いが湧き起こり、前向きな気持ちで、自己紹介をすることができた。  

今思えば、子どもたちだって不安なはずだったのに。
励まされたのが、担任の私って、逆じゃないかと。

担任だって、子どもと一緒。
不安もあれば、期待も希望もあります。
それが出会いの4月だと思います。
よい出会いの準備をし、出会いのときを
楽しみましょう。
そして、「週案簿」や「校内研修」をうまく生かしながら、よい授業を子どもと共に創っていきましょう。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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