花の季節に想う
今年は例年になく桜の花びらが眩しかった。自粛期間が長く、花見の季節を感じることができなかった。学校現場はマスクを外すことになった。しかし、着用していても外すことを強要しないという。それでも通勤電車の中ではほとんどの人がマスクを着用している。大阪では外国人観光客などキャリーバッグを引きながら歩く姿を見かけるようになった。咲く花も桜から躑躅に変わりつつある。学校にもそうした個性の花が咲き誇ることを期待する。
大阪大谷大学 教育学部 教授 今宮 信吾
個別最適な教師
多くの方が口ずさむSMAPの「世界に一つだけの花」という歌がある。「この中で誰が一番だなんて争うこともしないで」という歌詞を人々の往来を見ながら頭の中で繰り返すことがある。
閉塞感から未来を描けずに、日々を悶々と暮らしているという人が増えたという報道もあった。不幸だと思うのは人と比べてしまうからだろう。自分にしかできないこと、そんな自信と誇りを持って教師人生を送ってほしい。
そう思いながら授業を終えて帰宅する電車の中で、卒業生が乗り込んで来た。新任で小学生5年生の担任である。時刻は19時半過ぎ、「学校現場はどうかな」「忙しいけれど充実しています」「早く帰り時と遅く帰る時のメリハリをつけて、努めてね」「そうなんです。だから今日は早めに学校を出ました」「もっと早く帰る日も作りよ」「はい、職場には本当に恵まれているんで」このことばで安心した。
周りに支えてくれる人がいることに感謝した。そして個性的な教師になってほしいとも思った。
協働的な教師
私は、私と知り合った人はみんな幸せになってほしいと思って人と接するようにしている。
そんな出来事がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でもあった。決勝戦の試合前に大谷翔平選手が声をかけたことばが印象的である。「憧れを捨てましょう」今まで私たちは逆の声をかけてきたのではないかと思った。「憧れを持って、夢を大切にしましょう」と、しかし現実を超えていくためには憧れは捨てなければいけないということも思い出させてくれた。
たくさんの学びがあったWBC、きっと幸せを振り撒いたことだろう。私が学んだことをまとめると次のようになる。「あきらめないこと」「みんなで何かをすること」「毎日を楽しむこと」「目的を具体的に持つこと」新年度のスタートに立った先生方に贈りたいことばである。
未来を創る教師
WBCで野球ファンは確実に増えた。そして子どもたちもその夢を持って日々励むだろう。栗山監督の選手を信じる凄さ、教師として学ぶべきだと思った。信じることが教師にできる仕事だということは自覚しているが、ここまでドラマチックにできるだろうかという不安は全ての教師が思っている。
一年のスタートに立った教師には、「できるんだ」「やれるんだ」という自信をもらったようにも思う。一人ひとりに向き合うことの大切さと、その意味とやりがいを感じてほしいと思う。栗山監督が「選手たちが」と繰り返していたことを、教師に置き換えると「こんな子どもたちがいるんですよ」と言える教師でありたいと思う。
自分の立場で言うと、「こんな学生がいるんですよ」と言えることだろう。「私が」という主語を「子ども」はに置き換えられる教師を目指して歩んでほしい。
今宮 信吾(いまみや しんご)
大阪大谷大学 教育学部 教授
国公私立の小学校で教員を経験し、現在未来の教師を育てるために教員養成に携わっています。国語教育を核として、学級づくり、道徳教育など校内研究にも携わらせていただいております。ことば学びのできる教師と学校づくりを目指しております。
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