2024.04.04
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先生にとってのなんだかとても大切なもの 教育書(自分の教育方法に応用可能な情報・本など)の読み方・歩き方、そして先生も個別最適化なのかも

お気に入りの教育書(今ならネット情報でも)や指南書をお持ちの方もいらっしゃることと思います。何度も何度も読み返し今の自分の生き方に照らし合わせるような。
私にもそれはあったのかもしれませんが、それなりに多忙な日常の中でたいていは忘れてしまっています。ですが、それでもいいのかなとこのごろ思うようになりました。
やっぱり本に書かれているとおりにすることは難しいのです。
でも一度は手に取り、目にしておくのも一理ありです。
今回は、本や情報とどう歩むかについてのお話です(自分の場合は紙の本が未だに主体なのです・・・)。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

教育書との付き合い方

実はじっくり本を読むことはできなくて さらっと読んで付箋をつけて(既読をつけて)しまい込む、積んでおく派です。
それなら要らないのではとも思う自分はいますが、なぜか要ることがあるのです。
現在の自分の専門は特別支援教育なので、新しい情報には常に触れたいと思っています。だから本や情報には手が伸びます。支援策も障害の捉え方も背景も、どんどん変わりつつあると思うからです。その中にはTEACCHや応用行動分析など、かつての自分が本で出会って人から学んで、ずいぶん影響を受けた方策もあります。
でもその手立ては、目の前のその子に当てはまるのか、保護者のニーズに応えているのかどうかはわかりません。特別支援教育とは、本人・保護者・学校それぞれの事情があり同じものはまず無いと考えます。学校としての方針やこの子にはこうなってほしいなという私の思いももちろんあります。
その子の思いも汲みつつ個別に手立てを最適化して行くには、必ずアレンジしたり新たに生み出したりする作業が必要となります。

「方法によってこんなにも変わるものなのですね」と言ってもらえた事があります。そこに先生としてのやりがいもあるのかなと思います。
最適化には取捨選択が必用です。選択にはなるべく多彩な選択肢があった方が良いと思います。「この手立てしかない」と考えるよりは、「この手立てもある」と考えていく方がその子も私も希望が持てます。
その選択肢となる方法を、まずは書籍やネットの情報から集めてきます。この10年で私でも得られるこの分野の情報は、本当に多彩かつ豊かになりました。情報は特別支援教育の場合は、エビデンスや取りあげられた年代が気になります。多読であれば、その情報の信憑性や立ち位置・変化もある程度ですが判断できます。
そこに毎日の教育の場での経験による裏打ちができてこそ、アレンジもでき新たな方法にもつながるのだと思って教壇に立っています。

本に救われるというと

公認心理師他の資格を持ち続けるには、更新研修を受けたり心理の本に目を通したりすることも大切です。初めて手にした心理の辞典の分厚さには驚きました。まさに論文作成の時によく聞いていた「巨人の肩の上に立つ」感覚です。先人は本当に様々な現象の出会ってきたのだなと思えるのです。こればかりは本を手に取らないと分からないかもしれません。だから子どもたちとの日常の出来事や表れには、すでに心理の場では○○現象と名称がつけられていることもあります。名称がついているということは 同様の例がそれなりの数存在し、ある程度の予後の見通しも立ちやすいといえるかもしれません。
もちろん、目の前の子ども達との状況をすべて○○現象で片付けるのは、あまり良い感じがしませんね。
それでもこれはもしかしたら○○かなと思えたら、予後の見通しがつき「少し待ってみよう」という気持ちが持てます。おかげでどちらかというと短気だった私も、今はその子の主体的な動きを待っています。「待てる」とはゆとりを持って対応できることだと思います。そのことでその子も私も「良かったね」と感じることはあると思います。

心理の本には、時に自分の救いになる言葉も載っています。
「リファー」ということばをご存じかと思います。文部科学省のスクールカウンセラーに関するHPでは、自分以外のそれに適した専門家を紹介する例が示されています。
自分は何でも自分でと思っている教員でしたが、やはり限界はありました。そんなときに「リファー」という言葉を知り、他の人に任せることがあってもいいんだと思えることでずいぶん心が楽になりました。小学校では担任が一人きりにならないような施策が進行中ではないかと思いますが、その際に「リファー」の意味について少し共通理解する場があってもいいのかもしれません。

本と先生の個別最適化

最近は、教育技術主体の本であっても、後書き(前書きも)から読み始める事が多いです。
冒頭に書いたように、やはり本に書かれているとおりにすることには難しさがあります。記述を再現できるように著者は丁寧に記述してくださっていますが、子どもも年代も状況も違うのです。

だから私の場合は、自分の教室での追体験を目的にその本を読むのではなく、次第に後書き(前書きも)を通じてその著者の思いに触れ、著者と対話しているつもりで自分ならどうするのかを考える形へと読み方が変わってきています。
いずれにしても、ある程度の多読は私たちには必用なのだと思います。様々な言葉や事例を知り、自分弱さも強みもその過程で自覚し補っていくことは、やっぱり先生としてのしなやかさというか自分自身の個別最適化につながるのだと思うのです。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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