2024.02.02
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先生にとってのなんだかとてもたいせつなもの 植物の成長戦略に学ぶ私たちの願いの届け方

私たちがいつも腐心しているのは、いかに子どもに言葉を届けるのかということ。相手は学年が下がれば下がるほど自分とは生まれ育った世界観のちがう子どもたち。分かってもらうことは並大抵ではないはず。だからこそ魅力的なたとえ話や二重三重の工夫は必要なのかも。その先生ならではの世界観から解説するのも楽しそうですよね。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

くっつき虫のしたたかさ

くっつき虫、ひっつき虫と呼ばれる植物のことを、皆さんはご存知ではないでしょうか。そう、野外でひとしきり夢中で草むらを駆け回ると、いつの間に裾や袖にくっついている植物の実のことです。

日常よく目にするこれらの植物は外来種の場合が多いので、自然解説者(インタープリター)の端くれのつもりの私にとっては、できれば少なくなってほしいと思うこともあります。だけどなかなか減りませんよね。いつも目にする家の庭にも、油断しているといつの間にか生えていたりします。またしてもやられてしまった!という感じで、すごい力を持っている植物だなあと常々思っています。

なかでも私の天敵は、「コセンダングサ」です。触るとチクチクする1cmぐらいの鉛筆の芯のような黒いものが、一度にたくさんついてくるというものです。教室にも子どもたちがいつのまにか持ち込んでいて、掃除の時にたくさん見つかります。でも私も含めて誰も持ち込んでいる自覚がありません。

植物の成長戦略のすごさに学ぶ

なぜそんな話をしたのかというと、それはこれらの植物に私たちは学ぶべきところが多いなと思うからです。

実は、コセンダングサは、草むらの中の小道などちょっと開けたところに必ず生えています。空いている空間に向けて実のたっぷりついた枝をさらに伸ばして構えています。知らずにそこを通った人にはまず実をくっつけてしまおうという戦略に思えます。私はそれを知っているつもりなので、草を抜いてから通ろうとします。でも抜いたらぬいたで、私の腕は予期せぬところの枝に触れ、草の思惑通り結局実をつけてしまいます。

すごいことはまだあります。ついた実を私たちは必ず取ります。取らないとチクチクしますし、洗濯物に一本でも混ざっていると、服を着たときにピシッと痛みを感じますから。

でも取る時は、移動したあとのことであり結局実を新たな場所に蒔くことになります。多分コセンダングサにとっては、願ったり叶ったりでしょう。

つまりどの様な状況でも自ずと目的を達成してもらえるような何段階もの仕組みを、コセンダングサが敷いているとも思えるのです。

私たちの願いを伝えていくこと

さて私たちも、それぞれに子どもたちに願うことがあり、自分の得た情報を素に成長のための種を蒔こうとしている気がします。もちろん相手の子どもたちも、それぞれの個性を持つ人格なので、こちらの要望に素直に応えてくれないことも多いでしょう。全く関心を持ってもらえない印象の時だってあったりするかもしれません。

それでも私たちの蒔いた言葉の切れ端が、ちょっとしたときに偶然を伴ってその子の中に浮かんだり役に立ったりすることもあると思うのです。大分薄れてはきましたが、かつての自分の恩師の言葉が、今もふと浮かぶことがありますし。

だから、教室であれ校庭であれ、どこでも誰にでもそしていつでも、一貫して子どもたちに願うことを、あれこれ手を変え品を変え、自ずと身につけていってもらえるようにすることは、やっぱりとても大事なことだと思うのです。

中には、どんな形であれ絶対に伝えておきたいこともあるでしょう。

そんなとき、どのような状況であってもくじけず自分の願いを伝えていこうとする、これら身近な植物のことを思い出してほしいのです。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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