2023.11.29
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先生にとっての 何だかとても大切なもの 言葉にならない定形外の「ことば」に触れて、聞いたり話したりすることが、子どもたちとの交流のかぎなのだということ

授業が上手に運営できて、クラスも和やかな雰囲気のこの頃。でも何か足りない感じがすることがあります。なぜかなと思ったら、そう!「おおっ」「きゃー」とか「すごーい」といった声が最近聞こえてこないんですよ。
何か足らないと感じるのは、もしかしたら子どもたちと私のコミュニケーションを、実は定形外の「ことば」(歓声・感動詞・擬音・オノマトペなど)が補ってくれていたからなのかもしれませんね。
子どもたちが成長してたくさんの整った言葉を獲得すると共に、いつしか使わなくなっていくのかもしれない「ことば」ですが、それがいつも子どもたちと私たち先生との仲を取り持っていてくれたとしたらどうでしょうか。
そこにも何だかとても大切なものがあるのではと思うのです。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

教室は歓声・感動詞・擬音・オノマトペなどの「ことば」があふれている

小学校の国語で擬音やオノマトペは扱います。これも学習の一部でもあるのですが、それだけではちょっともったいない気がします。なぜかというと、もう一度教室の中で耳を澄まして、自分の周りの子どもたちの声を聞いてみてください。どうです、教室は歓声・感動詞・擬音・オノマトペなどであふれているではありませんか。

廊下の向こうのほうから「ピュー」と叫びながら、本当は歩いてほしいところを駆け寄ってくる子、友達同士で何かガヤガヤ・キャッキャ言いながら(本当はキャッキャじゃなくていろいろな声を出していますよね)なかなかににぎやかです。これは小学校低学年のクラスでも高学年・中学校であってもあまり変わらない気がします。

私の考えでは、口から発した声はすべてその子の感情が込められています。みんなうれしいときはうれしいような「ことば」を出していますし、そうではない時はそうではないように、その「ことば」を通じて明らかにその子の気持ちや感情が伝わってくるのです。 
小学校ではその子の口からこぼれる声の中では、むしろ定型の言葉よりもこれらの「ことば」の割合の方が多いんじゃないかと思うことさえあります。ましてや就学前の子どもたちは、本当にいろいろな「ことば」に囲まれていることでしょう。

定形外の「ことば」の意味が想像できることの大切さ

おもしろいことに、あいうえおなど50の音はそのままでは単なる文字ですが、ほぼすべて、伸ばしたり、続けたり、区切ったりすると、突然その「ことば」が気持ちを持ちはじめるということです。
たとえば「あーあっ」「いっ!」「うー!」「ええっ!」「おー!」と口ずさんでみてください。どうです何かその情景が浮かびますか。

それぞれに自分なりのイメージが湧くようであれば、少なくとも同じ「ことば」を出している子に会ったときには、何かアプローチができそうです。
「あーあっ」
「あれれ?なにかあったのかな」という具合にです。

こちらのイメージしたことはその子の本音とは違うのかもしれないけれど、その時は聞いてみればいいのです。いつのまにかそれが、その子のどんな気持ちの「ことば」なのかがなんとなくわかってくるように思います。
つまり、定形外の「ことば」の意味が想像できることが、もしかしたら私たちにとっても大切な要素の一つなのではないかと思っています。

小学生向けの国語辞典は30000語ほどを取り扱っていることからもわかるとおり、子どもたちは使える言葉をどんどん増やしていきます。でも何十年も生きている私たちとは語彙の数には大きな開きがあり、自分の考えていることのすべてを定型の言葉で表現するのはまだまだ難しいと思います。ましてや言葉での表現が苦手な子もいるのかもしれませんし。
というわけで、子どもたちの中で今回お話しするような定形外の「ことば」が多く使われるのは、とても自然なことだと思います。「そーっと歩く、さっとかたづける」というようにわかりやすく伝えることにもなりますね。

子どもとの「ことば」を学ぶには

よかったら、子どもたちとの一日の時間(特に休み時間等)をすごす中では、時には自分も感動詞や擬音を使うことを意識してみて「ことば」を学ぶのはいかがでしょうか。言語の習得に欠かせないのはたくさん聞いて話すことだといいます。大人の私たちはこれまでにたくさんの定型の言葉を習得できたので、普段はあまりこの「ことば」のようなものを使う必用はないし、使っていても長い年月の中で忘れてしまっています。

このような「ことば」を使うときは。私たちの顔もついつい緩みがちになっていますしね。

ところで、「ことば」は、その子が意識して作っているわけではないのですから個性があり、表現が違います。その違いを一人一人聞き分けたり、逆にすべての子に届きやすいクラス固有の「ことば」としてなげかけをしたりすることも、実はほとんどの先生方が普段からされていることなのではないでしょうか。

一人一人の「ことば」を毎日たくさん耳にして、私たち自身も時には使ってみることであらためて子どもの「ことば」を理解することも、子どもたちと一緒にすごし温かく交流していくための第一歩だと思うのです。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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