2023.10.02
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先生にとっての 何だかとても大切なもの~教員が別(たとえば心理)の資格を持つことには理由があるのだということ

現職の方で教職以外の資格を持っている先生は、一定数いらっしゃると思います。
特に心理の資格をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そのことの意味を改めて考えてみたいと思います。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

子どもの心にあわせ教育の手立ては変えていく

なぜか職員室の私の席はスクールカウンセラーの隣が定位置です。というわけで、心理の専門家であるスクールカウンセラーと雑談したり、アドバイスをもらったりする機会がそれなりにあります。的確かつ詳細なアドバイスもあり、さすがだなあと感じることはとても多いです。
実は自分もいくつかの心理資格を持っています。だけど、大学で専門的に学んできたわけでもなく、仕事の合間を縫ってやっと取得できたものばかりです。

ではそうまでしてなんで取得してきたのかと改めて考えてみると、それなりに理由はありました。
一番の理由は、自分の抱えている現状が、一般的な教職のための知識・経験のみでは対応が難しかったということなのだと思っています。
私の立場は常に子どもたちと接する立場です。一人一人に向き合いつつクラス作りを進めていきます。子どもたちの状況は一人一人全く違います。現れも様々です。そのため、日々その子にあった教育的な手立てを工夫しています。

でも一般的に良いとされる手立てであっても、ある子にはとても好評だったけど別の子にはかえって不評であることはあります。たとえばみんなの前で優れた行いを賞賛されることを好む子もいるでしょう。でもこっそりみんなのいないところで「よかったよ」と言ってほしい子もいるわけなのです。
つまり私たちの行う教育的な手立ては、受け手である子どもたちの様々な要因(例えば発達の段階や内面の心理的な状況)によって効果が左右されることになります。

心理の知識による裏付けで応用をすすめる

今は子どもたちが意欲を持って主体的に学習に取り組むことが求められています。この「意欲を持って主体的に」ということも、多分に心理的なものを取り扱っています。でもどうすれば子どもたちの意欲が高まるのかについては、自分の時代には教職教養で触れられたことはなく、経験や子どもたちとの関わりからヒントを得てきました。
今ならある程度はこうしたらこうなるだろうという予測はつくのですが、なぜそうなるのかについては、心理の知識によるうらづけが欠かせません。知識があってこそ、また違う子どもたちと出会った時にも意欲を導くような応用が利くのかなとも思い ます。そのことがまた、私たちにとっての経験値の上乗せになるのです。

連携に欠かせない心理の知識

そういえば、心理の知識が増えるのと同時にスクールカウンセラーの話もよくわかるようになってきた気がするのです。年の功もあるとは思いますが、ソーシャルワーカーなど連携している他分野の方々ともあまり構えることなく話せるようになってきました。

教員以外の方々とも連携する機会が増えているということは、その方々との共通の知識が多い方が、意思の疎通が図りやすく連携しやすいでしょう。心理の知識は、学校と連携してくださる方々を繋ぐ絆でもあるのです。

心理の研修で学んだ大切な私たちのあり方

ところで、心理の資格の維持のためには、定期の研修を受ける必要があります。一度取ったからもう何もしなくてもよいというものでもありません。少々大変な部分もありますが、そこで得た知識や経験、そして何よりも得がたい心理分野の先輩や仲間からの助言があって、私は目の前の子どもたちとの関わりを積み上げてきたのだとも思っています。

愛着とかアタッチメントという心理に関わる言葉を耳にすることもあるかと思います。教室で子どもたちと一緒にすごす私たちは、時にその対象ともなり得るのだとある心理の研修会で学びました。

先生がいるから学校に来てるんだとか先生と話すとほっとするんだとか、直接子どもに言ってもらえることはそうそうありません。ですが、あちこちの学校に、自身が意識するしないにかかわらずそんな先生がいるからこそ、いつもの通り登校してくる子どもたちもいるのだということも、心に留め置いていただければと思っています。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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