2023.09.11
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先生にとっての 何だかとても大切なもの~夏休み明けストレスを乗り越えることの積み重ねが、実は子どもたちのこれからに活きるのだということ。

夏休み開けのストレスを子どもたちがどんな形で乗り越えていくのか、それがこれからのその子のありかたに大きく関わるとしたらいかがでしょう。
実はそこに私たちの、気づいていないかもしれないけれど「何だかとても大切なもの」が活きているように思うのです。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

休み明けストレスは、良い意味でもちょっと困った意味でも、誰もが感じるものだけど

長い休みほど学校とはちがう別のルーティンが築かれていきます。せっかくできたものなので、変えるときにはそれなりに意味づけや気力・体力がほしくなるのかもしれません。
ここ数年、文部科学省からは夏休み後のことについてメッセージが出されています。自分の経験の積み重ねの中でもいろいろな出来事に出会っており、たしかに大切に見守っておきたい時期なのだと受け止めています。
そんなとき、子どもたちは夏休みストレスをどう受け止めているのか知りたくはありませんか。すぐに9月がやってきて忙しくなります。でももしかしたらその子は何かを引きずったままかもしれないので。

自分の感覚を通して子どものありかたをみつめること

一つは、先生自身の感覚を通して、自分のようなタイプの子の気持ちを推測することです。
例えば、今年の夏休み明けの教室の朝はどのようにはじまりましたか。
自分は前にも話したように、どちらかというと対人的な緊張を伴うタイプと思っているので、子どもたちが教室に入ってくるより、少し前に教室にはいるようにしたいと思っています。前からいて待っているのとみんながいる教室に後からやってくるのとは緊張度がずいぶん違うのです。

また、登校時間は決まっているので、行動予測も可能となっています。
教室に居ると、だんだん学校のあちこちから子どもたちの声が上がってきます。その声の中には、馴染みのある大きな声の子もきっといることでしょう。その声を聞いていると、自分なりにちょっと緊張しているところがだんだんと和らいでいる感じがするのです。
その子自身はどちらかというと言うと、対人的な緊張をあまり感じないタイプなのかなという気もします。 後で聞いてみても、学校へ行くのはどちらかというと友達と会えるので楽しみだったと言ってくれるのでしょう。
ただ、そんな子であっても、宿題など何らかの課題を抱えながらの登校かもしれません。とはいえ登校しながら知っている子にあちこちで出会い、笑い話をしながらだんだんとちょっと温かめのいつもの日常を感じて学校にたどり着いているのだと思います。

いつもの日常を感じることは自分自身の巡航運転ができるということ。余力を他のことに振り分けることができるのかなと思います。何か心の課題があったとき、日常を取り戻すことの大切さを耳にしますが、程度の差はあれ休み開けのストレスに対しても、同じようなところがあると思っています。
また余力が出せれば、休みあけの高揚感を新しいチャレンジにつなげることもできるのだと思います。

いつもの日常を取り戻す手助けをすること

自分はその後どうするかというと、その子とひとしきり夏休み話をします。他愛もない話ですが、自分の取り柄として何十歳も年下のその子たちと分け隔てのない(と自分では思っている)話ができるというのが強みかなと思っています。

「あ、そうだね、びっくりだね」とか言いながら、話せば話すほどいつもの日常が戻ってくる感じがします。 すると一人、また一人とだんだん子どもたちがやってきます。子どもたち同士の会話もまた賑やかになっていきます。
調子がでてきたところで、自分の方はその場から一時はなれ、すこし離れてたたずむ子たちのケアにまわります。それはそれで日常のことなので、「先生また来ちゃったね」とでも思うのでしょう。ただ悪い気はしないように見えます。
こうしておよそのみんなの把握を自分の感覚を通じて行います。

もちろん別の方法として、子どもたちに気持ちのアンケートをしてもらったり、今の気持ちを数値化してもらったりすることもあります。一言ずつ夏休みコメントしてもらうこともあります。他の先生の見立てを聞くこともあります。
ただ、言葉と気持ちは時として一体ではないということも心の隅に止めておいて、自分自身の感覚と併せて、その子の今の状況を考えることが良さそうだと思っています。

何度もやってくる休み明けをどう乗り越えるのかが育ちへのカギ

こうして子どもたちは、夏・冬・春と休み明けを小・中学校だけで27回も経験していきます。うまく学校での日常化につながった時も、すこし引きずってしまったときもあるでしょう。学年が上がるごとに日常化への課題は深くなることももちろんあると思います。
ただ、その子の休み明けの状況に応じた日常化への支えが少しでもできれば、次につながるものもあるのだと思っています。知らず知らずのうちに自分なりのストレスの乗り越え方や変化に対処できる自分への信頼も、育っていくものなのなのだと思います

夏休みあけの宿題を、ためて一気にやりとげるのか、それともこつこつやるのかが年齢を問わずよく話題となるように、これはもしかしたら、大人になった自分のあり方にも通ずるものなのではないでしょうか。
「すこし大変だったけど、行ってみれば、やってみればなんとかなる」と毎回気持ちの積み重ねができるように、緊張をほぐし、ちょっとだけ温かめの受け止めを心がけていきたいなと思っています。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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