『つなぐ・つながる』夏休み後、9月はどんな時?~教育相談で「つながる」
いよいよ始まった2学期。暦の上では、秋なのに、厳しい残暑は、まだまだ続きそうですね。子どもたちの様子は、いかがですか。波に乗れない子どももいますよね。そんなときは......。今回は、楽しく読める内容ではないかもしれません。でも、子どもが楽しく、安心、安全に生活するためには大切なことかなと思います。
浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授 前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆
夏休み後、9月は、どんな時……?
学校には、いろいろな時期がありますね。4月と言えば、新しい年度を迎えて、心新たにスタートする時期。6月、10月と言えば、「生徒指導主任」が忙しい時期。0学期と言われる、新年度準備の3月。
では、9月と言えば……。
どんな時期でしょうか?
あまり明るい話ではありませんが、一つは、児童生徒の「自殺者」が多い月なのです。
図に示す通り、年度によって月別の推移は、異なりますが、8月、9月が一つの山になっています。
ちなみに、9月10日は、「世界自殺予防デー」(World Suicide Prevention Day)なのです。
そして、その日からの1週間(9月10日~16日)は、日本では「自殺予防週間」なんですね。
これは、自殺対策基本法(2006年施行)に基づき策定されたもので、自殺予防に関する様々な啓発活動などが集中的に展開されるというわけです。
「自殺」は、それだけ社会的な問題になっているということです。
学校においても「自殺予防教育」をそれぞれの発達段階に応じて展開するよう求められています。
皆さんの学校では、いかがですか。
さて、もう一つ。
9月と言えば、不登校が増える時期なんです。
長期休業の後は、サザエさんのカツオ君だって、学校に行きたがらない。
ちびまる子ちゃんだって同じです。
私も、そうでした。
不登校が顕在化してくる時期は、年間の中で、ある程度決まっているわけで、一つは、学校生活への慣れ及び不適応から問題が発生しやすい5~6月。
連休明けからが梅雨時までが一つの山ですね。
そして、次が、この夏休み明け。
今では、8月下旬に2学期をスタートする学校が増えていますから、8月から9月が二つ目の山を迎えるということになります。
「自殺」「不登校」、この二つの山を乗り切るために
この二つの山を乗り切っていくには、どうしたらよいでしょう。
まずは、「早期発見」が大切です。
「生徒指導提要」には、その方法として、4つを紹介しています。
○ 「丁寧な関わりと観察」
○ 「定期的な面接」
○ 「作品の活用」
○ 「質問紙調査」
いずれも、どの学校でも取り組まれていることと思います。
が、この時期にとりわけ、今、大事にしたいのは、一つ目だと思うのです。
忙しいのだけれど、一人一人の子どもへのかかわりかたを丁寧に、少しでも時間をかけること。
そして、子どもたちを、よく「見ること」だと思います。
よく「見ること」とは、
私が前期に担当していた「生徒指導」の授業で、「教育相談」をテーマに扱ったときです。
受講している3年生の学生に問い掛けました。
「あなたは、子どものどんなところを観察していきますか?」
皆さんは、どんなところを見ていきますか?
学生の皆で考えました。
多様な視点が出てきました。
〇 活動への意欲・発言
〇 学習の提出物や忘れ物
〇 筆入れの中身
〇 授業中のノートをとる内容、記入の状況
〇 グループワークでの様子・役割
〇 テストの結果 学習の定着
〇 道徳の授業での感想の記述・発表内容
〇 休み時間の過ごし方
〇 給食を食べる量・残食
〇 友達とのかかわりかた コミュニケーション
〇 言動、言葉数、言葉遣い
〇 身なり
〇 表情・顔色
〇 体型
〇 体調 保健室の来室状況
〇 欠席・遅刻・早退の状況
学生の発言を聴きながら、様々な角度から子どもを見ていくことが大事だということを再認識しました。
そして、丁寧に関わるとは、
話を聴く機会を持つことでしょうか。
突然話し出す子はいませんから(中には、ぐいぐい話し出す子もいますが)、声掛けをしながら、その返し声を聴き、時に個別に話をする時間を持てるといいなと思うのです。
教育相談なんてカチッとするのではなく。
では、どんなふうに話を聴くとよいでしょう。
どうかかわるとよいのでしょう。
一つの事例をもとに話を進めましょう。
事例検討をすることで、自分事にして考えてみる
実際に、どのようにかかわればよいかは、事例を用い、ロールプレイ等をとおして、具体的に考え、身に付けていくといいんじゃないかと思います。
例えば、こんな事例です。
《子ども》 先生、相談があるのですが・・・・・・。
《先 生》 どんなことかな?
《子ども》 最近、B君とC君に何だかにらまれているように感じるんです。
《先 生》 それは、どんなときに?
《子ども》 休み時間になると、少し離れたところからこっちを見てるんで す。
《先 生》 ただ、見てるだけ?
【後略】
このような事例を用いながら、大事なのは、具体で考えること、そして、自分事にしてとらえることだと思います。
そして、教師の姿勢としては、次の二つを心に留めておきたいですね。
一つは、「受容」
反論したくなったり、批判したくなったりしても、そうした気持ちを置いて、児童生徒のそうならざるを得ない気持ちを推し量りながら聞くことですね。
例えば、「はい。」「うんうん。」「そうだね。」そんな対応が自然にできるといいですよね。
もう一つは、「承認」
子どもの考えや意見を認め、聞き入れること。
1 主語(わたし)のメッセージ I messgaeで伝えることです。
例えば、「わたしは、よく頑張ったと思う」「わたしは、一緒にいたかったな」
これは、私が出来るだけ意識しているところです。
2 心が感じたままに相手に届ける言葉。
例えば、「いやあ、びっくりした」「うれしい」「好きだ」
私にとっては、なかなか自然に出すのが、苦手な言葉です。
3 OK メッセージ(子どもの可能性を高めるためのメッセージ)
例えば、「そこまではできたんだ。それは前進したということじゃないかな」
むすびに
実際に子どもを目の前にしたとき、こうした対応を自然にできる人もそうでない人もいるかもしれません。
でも、こうしたことを承知しているか、意識しているかによって、かかわりかたは変わってくると思います。
私は、どちらかというと、できていない方なんじゃないかと思います。
ですが、出来るだけ丁寧に受け止められるよう意識しているつもりです。
それが、子どもと「つながる」第一歩だと信じて。
川島 隆(かわしま たかし)
浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師
2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。
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