2019.09.03
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新学期をうまくスタートするためにできることは?

夏休みも終わり,新学期が始まります。皆様,準備はいかがでしょうか? 心の準備と授業の準備を整えて,生徒とともにうまく乗り切っていきたいものです。

兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭 藤井 三和子

研修会に参加して

夏休み中,時間の合間をぬって,関心のある研修会やフォーラムなどに参加しました。毎年,夏休み期間中には様々な研修会や,講演会,学会などが開催されています。遠出してでも,全国の学校関係者と出会い,新しい知見を得る機会は貴重です。今年も,毎年参加しているものも含めて,可能な限り参加してきました。今回は,その中で,一般社団法人日本スクールカウンセリング推進協議会公開シンポジウム2019『教育機会確保法をふまえた不登校対応 ~チーム学校として~』の中で学んだことを自分自身への再確認の気持ちを込めて,少し紹介したいと思います。
皆さんは,教育機会確保法というものをご存知でしょうか?
これは,正確には,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」と言います。平成28年12月に公布されました。義務教育の段階ということで,高等学校の教員にはなじみが少ないかもしれません。主に不登校の子に対して支援し,学校外での多様な学びの場を提供することを目的とした法律です。今回のシンポジウムで話題となっていたのは,第13条の「休養」に対する解釈でした。まず以下に条文を載せます。
(学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援)
第十三条 国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。)に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。
 
児童生徒の「休養の必要性」が法定化されたものです。なによりも子どもたちの命がまず大切なのだという趣旨からできたものです。法律で「休養の必要性」を示さないといけないような深刻な状況があるということを私たちは理解する必要があると思います。そのことをふまえた上で,不登校は「休養」であるということに対しての拡大解釈も危惧されていました。「休養」が認められることで,「学校に行かなくてもいい」と主張してしまうと子どもは社会的に自立できなくなるのではないか。それでは無責任ではないか。そもそも,教育の目的は社会的自立のはずではないか,という危惧です。そして,子どもの学習権は奪ってはならないという意見も出ておりました。これは,拡大解釈として,親が子どもを「休養」という名目で学校に行かせないということが起こるかもしれないという可能性を想定した上での危惧です。その背景には,不登校の原因の多様化です。子ども同士のトラブルや学校とのトラブルなど様々なことが想定されるからです。子どもを守るために多くの方々が尽力してできた法律に対しても,様々な意見が出てきます。難しいです。
シンポジウムの中で,藤平敦,日本大学文理学部教授は,小学校・中学校・高等学校・特別支援学校のそれぞれの『新学習指導要領 第1章総則 第4ー1 児童・生徒の発達を支える指導の充実』の文言を引用され,「多様な実態を踏まえ」状況に応じて対処していくべきだろうと述べられていました。

大切なことは子どもたちの絆が続くこと

藤平敦氏は,高等学校教諭を20年務め,文部科学省国立教育政策研究所生徒指導・進路指導センター総括研究官を経て,現在日本大学教授をされている方です。文部科学省時代に全国の学校をめぐった,ご経験から,「社会性―子どものつながり」を作ることが必要であることを,不登校の対策と関連させて述べられていました。今まではリーダーを育成することが中心でしたが,フォロアーも育て,人との関わりあいや協調性を培うことーそれがAIに負けないものであると。
シンポジウムの最後に,藤平氏は半日のシンポジウムの最中の参加者の様子を撮った写真をスライドにして,パワーポイントの資料も含めて,振り返りのミュージックビデオにしてくださいました。音楽は一青窈さんの「ハナミズキ」~子どもたちの絆が100年続きますように~の願いを込めて。
素敵な振り返りをすることができました。同時に,私自身が子どもたちの絆を築くために何ができるのか。学校は何ができるのか。多くを考える機会となりました。
今回は,教育機会確保法の話題から,不登校,子どもたちの絆を築くことについて書きました。皆さん,2学期,気持ちも新たに,人の心を思いやる想像力と心のゆとりを忘れないようにしましょう!

藤井 三和子(ふじい さわこ)

兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭
兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 専門職学位課程 教育実践高度化専攻 グローバル化推進教育リーダーコース 在籍
生徒の心の成長を促す存在でありたいと,教育の力を信じて,工業高校で英語を教えています。大学院での学びと学校現場での実践で感じたことを紹介していきたいと思っています。

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