2023.08.17
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『つなぐ・つながる』面談(教育相談)で「つながる」

小中学校、高校の夏休み前半。担任の先生と保護者の面談を行った学校が多いのではないかと思います。どのようなお話ができたでしょうか。この面談も「つながる」チャンスですね。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

一昔前の面談を思い出してみると、

一昔前の暑い中の面談はというと。
蒸し風呂状態の教室で、温風を送ってくれる扇風機が一台、空しく回っている。
外からは蝉の声が絶え間なく聞こえてくる。
いつもよりもしっかりめの汗拭きタオルを用意していましたね。
保護者の話に冷や汗もかきますし。
そして、肝心のお話の材料もしっかり仕込んでおりました。
「この子が頑張っていたところって、どんなところだったかな?」
「どの授業のどんな場面だったか」
「係活動や委員会では、どうだった?」
「どんな話をしてきたかな?」

通信票をつけてはいるものの、そんなふうに思い出して、「よいとこ探し」をあらためてするのでした。
しかし、なかなか出てこない子もいて、教室の中をウロウロして、掲示物に目をやったり、その子の席の周りを歩いてみたりと、四苦八苦していたのを思い出します。
こんなことなら、日々の記録をきちんと取っておくのだったと強く、強く思うのでした。

今の面談はどうかというと

小学校の様子は、よく分かりませんが、エアコンが入って快適な中で話ができるようになりました。
でも、学校への道のり、学校内の廊下は、表現に窮するほどの暑さです。
昔より絶対に暑いです。
保護者の方は、この暑い中、足を運んできてくれるのですね。
だから、それに報いる「いい面談」をしたいものだと思いました。

私は、この夏、3回の面談を経験しました。
我が子の面談です。高校2回、中学1回です。
子どもを交えての3者面談です。
小学校とは、また違った雰囲気です。
やはり教室は、涼しくて快適です。
お話では、数字が目の前に出てきます。
有無を言わせぬ数字に、言葉はすぐに出てきませんでした。
先生は、決して悪くないのですが、数字のインパクトは大きいですね。
部活の話やら、教室での話やら、進路の話がでてきます。

一緒に考えたい

何年前かの授業研究、事後協議での話です。
当時の研究講師 奈須先生(上智大学総合人間科学部教育学科教授)から、授業リフレクション(ビデオリフレクション)について、こんな一言を御助言いただきました。
「(授業者とプロンプターは)向かい合うんじゃなくって、授業を目の前にして、並び身に話がしたいですね。居酒屋のカウンターでお酒を飲むように」
「なるほど」って思いました。
それ以後の授業研究では、こんなふうに(写真参照)、一緒に並んで授業動画を振り返りながら、話をするようにしたのです。
すると、相対する、向かい合うのと、ちょっと違った感じがするんですね。対話をしているんだけれど、「一緒に」なって考えている、そんな感じがでてくるんです。
(さすがにお酒はでてきませんでしたが、授業を一緒になって考えるっていう雰囲気が実感できました)

面談だって「並び身」で

ということで、今回の「面談」や子どもや保護者との「教育相談」だって、同じだと思うのです。
話がうまくいくかどうかは、どんな内容にするかという「準備」はもちろん大切ですが、一方で、「位置(並び)」も環境の一つとして、重要ですよね。
相談者に対して、教員がどの位置にいるか。随分と話やすさ、居心地が変わると思うのです。先ほどの例によれば、④が並び身となります。状況によっては、これがよい場合もあるでしょう。
皆さんだったら、どれを選びますか?
私ならば、②か③ですね。
三者面談であるならば、ちょうど三角形で話せますし、二者ならば、空いている机上に作品や資料を置いて、それを二人が一緒に見ながら話すというスタイルが好きですね。
③のような「90°法」という配置も、リラックスして話のできる座席配置としてあります。
真向かいになると、お互いにどうしても緊張度が高くなり、かたい感じの話になりがちですね。
自分が保護者や子どもだったら、どうだろう? そんなふうに考え、一度教員同士で実験してみても面白いと思います。

もちろん聴き方も大事です

席が整い、話の内容があればそれで十分かというと、そうでもありません。
話をどう聴くかという聴き方の心得がありますね。
いろいろあるのでしょうけど、私は「受容」と「承認」、この二つだと思います。
対象が、保護者、大人であっても、子どもであっても「受け止めてもらえた」「認めてくれている」という思いが生まれることが、相手と「つながる」ことに結び付きます。

「受容する」とは、話を聞いている途中で、その内容について反論したくなったり、自分の考えを言いたくなったりするときでも、相手の気持ちを推し量りながら聴くことです。
そして、「うんうん」「そうだね」といった反応が自然にできるといいですよね(実を言うと、私はこの部分がとっても苦手です)。
また、二つ目は、「承認する」ということ。
相手の考えや意見を認め、聴き入れることです。
具体の一つは、「I メッセージ」です。
「私は、あなたの〇〇がいいと思う」「あなたは、よく頑張ったと私は思っているよ」等、自分の主のメッセージを伝えることです。

もう一つは、「OKメッセージ」。
「少しずつ、でも確実に前進しているね。大丈夫」
この人は、分かってくれる、見ていてくれる、そう思えるようなちょっとした言葉と、それを見出す目を持っていたいですね。

結びに

話をする機会、面談や教育相談は、「つながり」を創るチャンスです。
たとえ、問題が発生した時の相談であってもピンチはチャンスなのです。
環境を整え、出来る限りの準備をし、子どもや保護者とつながるチャンスを生かしましょう。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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