2023.02.15
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『つなぐ・つながる』授業づくり・学級づくり、そして学校づくりの、明日のために~「学ぶこと」とつながる

「勉強しなさい! 勉強しなさい! 勉強しなさい! 勉強しなさい!」と言われて、一生懸命に机に向かう子どもはいませんね。勉強の意味、「学ぶこと」の意味ってなんでしょう。今回は、「学ぶこと」とのつながり、「学ぶこと」の意味について考えてみたいと思います。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

「学ぶこと」とつながる

「勉強とつながる」というと「そんなもんとつながるわけがない」と言われてしまいそうです。
そもそも勉強は、好きなものじゃない。
嫌だけどやる
やらないと怒られるからやる
そんなイメージ、ありませんか?

だから、「勉強好きな子ども」というと「え~ホントに?」となってしまいそうです。
自ら「ぼくは、私は、勉強が好きです」という子どもにも会ったことはありません。
もちろん、いるのかも知れませんが。

テスト前に
「勉強した?」と友達に聞かれて
「した、した」
と、答える子どもはなかなかいませんよね。

こんなふうに、「勉強、勉強」と言われると、少し抵抗がありますが、私としては、「学ぶこと」が好きな子どもを育てていきたいと思います。
つまりは、「学ぶこと」とつながる、子どもや学生が育っていったらいいなって思います。
そこで今回は、「『学ぶこと』とつながる」をテーマに考えてみたいと思います。

模擬授業の実践から…「子どもにとって勉強をする必要感はあるのか」

大学では、後期の授業も終わり、一区切りがついたところです。
後期に行ってきた講義資料などをまとめながら反省したり、来年度への改善点を考えてみたりしています。

後期に担当した授業の一つに「特別活動の指導法」があります。
その中で行った、ある模擬授業について紹介したいと思います。

テーマは、「カッコイイ6年生になるために(家庭学習)」学級活動(3)です。
格好いい最上級生の姿をイメージしながら、家庭学習についても今の自分の取組を見つめ、改善していこうというものです。
授業後の振り返りの中で、
「子どもにとって勉強をする必要感はあるのか」
という課題が出てきました。
そこで、学生に
「みんなが教員になって、子どもたちに『なぜ勉強するの?』と問われたら、どのようにお話しますか?」
と問い掛け、振り返りシートに記述してもらいました。

学生が考える勉強(学ぶこと)の意味

学生たちは、思い思いに綴ってくれました。
せっかく考え、書いてくれたのですから、次の時間に紹介しました。

学生A:「中学、高校の勉強は、小学校で習ったことを土台として、発展的な内容を教えているから、小学校で習う内容を理解し、復習して覚えておかないといけないんだ」
学生B:「将来の選択を広げるため、自分のしたいことやできることを可能にするんだよ」
学生C:「いろいろ勉強することで、多くの知識を得られる。(中略)自分が将来やりたいことは何か、自分に合っているか判断できるようにするためだ」
学生D:「色々なことを知ると、生活が楽しくなるよ。(様々なことに気付く楽しさを伝える)」
学生E:「生きていく中で役に立つことがある。また、勉強する上で沢山考えることで、大人になって問題にぶち当たった時に解決していく力につながる」
学生F:「学ぶことで世界が広がる。①世界の見え方 ②知識のつながり ③進路を含む将来。勉強するのって本当は楽しいことなんだ!」
学生G:「これから先、様々な困難が出てくる。その時、知識が沢山あったほうが、解決策、方法を沢山の中から選択することができる」

なるほど~。そうかなあ~。そんなこと考えているんだ。
読んでいくと、それぞれの考え方が伝わってきます。

寅さんが語る「学ぶこと」の意味 

私が好きな映画「男はつらいよ」の主人公寅さんは、甥っ子の満男とこんな会話をしています。(「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」第40作 昭和63年公開)

満 男:「おじさん、質問してもいいかぁ」
寅さん:「あんまりむずかしいしいことは、聞くなよ」
満 男:「大学へいくのは何のためかなあ」
寅さん:「決まってるでしょう。そりゃあ。べんきょうするため」
満 男:「じゃあ、何のために勉強するのかなあ」
寅さん:「う~ん。そういうむずかしいことを聞くなって言ったろ。おまえに。つまり、あれだよ。ほら。人間長い間生きてりゃあ、いろんなことにぶつかるだろ。なあ~。そんなときにオレみてえに、べんきょうしてない奴は、ふったサイコロの目で決めるとか、そのときの気分で決めるよりしょうがない。なぁ~。ところが、べんきょうした奴は、自分の頭できちんと筋道立てて、さて、こういうときはどうしたらいいかな、と考えることができるんだ。だから、みんな大学へいくんじゃないか。だろ~」

寅さん流「勉強の意味」を語ってくれています。
何か学生の声と似通ったりしているところがあって、ちょっと驚きます。
私も「学ぶこと」の一つの意味は、こういうところにあるんだろうなと思います。
よりよく考え、判断し、行動できる、そのための生きて働く知識・技能を身に付け……
要するに、学校教育法第30条2項に基づく学力の三要素というところかな。

私が考える「学ぶこと」の意味 

でも、それだけじゃないと思うのです。

子どもは、将来のために勉強するんじゃないと思うのです。
高校にいってからとか、社会に出てから、なんて小学生は、あんまり考えません。
それよりも、今。ここにいる今。
学ぶことが楽しい、面白い。もっとやってみたい。何故だ。何かありそうだ。
単なる興味だけで終わらずに、そんなふうな思いをもち、学ぶことの喜びを実感できること。
「学ぶこと」って楽しいじゃんって感じることが、学びの原動力となり、それこそが「学ぶこと」の意味じゃないかなと思います。

だから、「なぜ学ぶの?」と言われれば、
「楽しいから」
というのが、何よりの答えかなと思っています。
(「んなこと、分かってらぁ」ていう方、ごめんなさい。釈迦に説法でした。)

むすびに  「学ぶこと」とつながる、きっかけ

結びに。
内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授)が中学2年の国語教科書(教育出版)に書き下ろした文章、「学ぶ力」には、こんな一節があります。

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「学力」というのは「試験の点数」のことなのでしょうか。
わたしはそうは思いません。
試験の点数は数値です。
数値ならば、他の人と比べたり、個人の経年変化をみるうえでは参考になります。
でも、学力とはそのような数値だけでとらえるものではありません。
「学力」という言葉をよく見てください。
訓読みをしたら「学ぶ力」になります。
わたしは学力を「学ぶことができる力」、「学べる力」としてとらえるべきだと考えています。

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何故学ぶのか。何故勉強するのかって言われれば、「学ぶことができる力」を身に付けるためっていうことですね。
人と比べることでなく、自分のために。
「学ぶこと」とつながることができれば、そういうきっかけがあれば、それは、生涯学び続ける力になっていくんじゃないかと思います。
私たちは、そのきっかけづくりのお手伝いをしているといってもいいのかも知れません。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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