2023.06.01
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先生にとっての何だかとても大切なもの あいさつの良さや効果は本当はどこにあるのかということ

昨今の学校の中で、あいさつ運動を取り入れているところは数多いと思います。
また、あいさつを進めたり、定着させたりする手立ても、各学校でかなり工夫されているものとも思います。あいさつを広めようと頑張っている子どもたちの姿を毎日目にすることもあり、自分もしたりされたりするわけなのですが、なるほど気持ちの良いものなのだなと今は思います。
ところで、日常私たちは、さまざまなことを子どもたちに語っているわけなのですが、あいさつのよさや効果についてはどのように伝えているのでしょうか。それは根拠のあるものなのでしょうか。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

あいさつの良さや効果はなにか

あいさつとは日常的に行っているもののためすぐに見つかると思い、専用の検索エンジンでその効果が書かれた論文について探してみましたが、私が未熟なためかこれはというものが見つかりませんでした。となるとその根拠は研究対象になりにくいものなのかもしれませんね。ただ、だれもが毎日行っているものでもあるので、だれもがしたりされたりする経験を持ち、その人なりの知見をもっているとも思えるのです。

子どもたちにあいさつの良さを聞いてみると、たぶん心がぽかぽかするとか、気持ちが良いとか、すっきりするとかオノマトペをまじえていろいろ教えてくれると思います。

その良さを誰もが知っているのなら自然とあいさつは学校の中で広まっていくものとも思いますが、なぜあちこちの学校では意図してあいさつを広めようとするのでしょうか。

そのままでは校内ではあいさつが広まっていかない、何らかの壁があるからでしょうか。また、社会性の獲得や人間関係上のルールや規範として、ぜひ身につけさせたいという目標からでしょうか。

なかなかあいさつができなかった自分

この文を読まれている方は、特に意識しないであいさつができる方がほとんどかもしれませんが、私自身はなかなか自動化ができず意識してあいさつをするタイプです。できればあいさつはしないでスルーできれば、ちょっと楽かなと思えるところがあります。

きっと子どもの時はあいさつをしないか、かけられてもそのままだったのではと思います。ですが育ちの中で、あいさつできる自分を少しずつ獲得して、先生になったのだと思います。もしかしたら先生になったので、あいさつが少しできるようになったのかもしれません。はっきり覚えてはいませんが。

つまり私のようなタイプは、あいさつをしてもらって気持ちがいいなと思っても、自分からはちょっとためらいというか壁があるようです。似たような方もいることでしょう。だからそのままではあいさつは広まりづらいところもあるのだろうと思います。

ではどうしたらよいのでしょうか。

その時は難しくてもいつかはあいさつができるようにと考えていただけるのなら、声をかけてもらえることの日常化は、「いいな」と感じることの積み重ねにもなると思いますのでぜひお願いします。

あいさつの良さや根拠の事例を活用したい

子どもたちと一緒にあいさつのよさを考え、共有しておくのもよいと思います。ただ、もうちょっと内容を掘り下げたいなと思うこともありますね。そんなときは、先生ご自身のあいさつの効果の体験を語るのはいかがですか。

私は時々朝のトレーニングをしています。するとかなり早い時間帯なのに色々な年齢の方々が近くを歩いていることに気がつきました。どうしよう、あいさつするのかしないのか、今でもなぜか迷ってしまいます。

それでも一言「おはようございます」と言っておくと、なぜか直後のトレーニングで踏み出す一歩一歩の出力が違います。なんだかけだるい感じから気合いが入っている感じに一気に変わるのです。

これは、競技の時にかけ声を出すとより力が入るのと似ています。「いっくぞー!」と思って心の壁を乗り越え、「おっはよー!」と言葉を換えて言っているのかなと分析しています。もちろん相手が返事を返してくれるならありがたいことですが、あいさつの効果は言っている自分にもあらわれるということになります。

みなさんにも、個人の体験としてあいさつの効果を感じたことが必ずあるのではないでしょうか。私のように自己の変容を感じた事例、あいさつに心を救われた事例等々、個人が個人の体験を語るのであれば、それはそれなりに信頼できるあいさつの効果として、子どもの心にも届くのかもと思えるのです。

結局のところ、あいさつの良さや効果は、大人になるまでにきっと経験することができるのでしょう。だからあいさつの大切さが唱えられているのでしょう。でもその根拠となる体験は、もしかしたら人それぞれで多様なものなのかもしれません。私も思いつかないような素晴らしい体験をされた方もいらっしゃるのではと思いますし。

校内であいさつ運動を進めるのであれば、そのよさや効果について根拠となるそれぞれの先生の体験を職員室で語り合うのも、もしかしたら推進のための布石になるかもしれませんね。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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