2023.04.12
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

対話型AIの導入で変わる教育の在り方

つい最近まで、AIは遠い未来の技術という感覚がありました。ところが、AlexaやSiriといったAI音声認識デバイスはあっという間に世の中に浸透し、多くの人々に利用されています。一流の将棋棋士でもAIを活用するなど、様々な業界でAIは欠かせないものになっています。対話型AIという言葉を聞く機会が多くなってきました。今回は、対話型AIを利用したことがない方に向けて、その能力を紹介したいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

対話型AIとは

最近、対話型AIのニュースを見ることが多くなっています。質問や会話をすると、それに対してAIが返答してくれるというものです。AlexaやSiriが音楽配信やショッピングなどに特化しているとすれば、対話型AIはもはやあらゆることに対応することが可能となっています。

対話型AIの一つにチャットGPTというサービスがあります。チャットGPTを用いてチャットGPTそのものを解説するように指示してみます。

『CHATGPTとは何ですか』

ーーーーーーーーーーーーーーーー
CHATGPTは、OpenAIが開発した自然言語処理技術を用いた人工知能の一種で、GPT(Generative Pre-trained Transformer)と呼ばれるアーキテクチャに基づいています。CHATGPTは、大規模なテキストコーパスを用いて事前学習され、その結果、人間のような文章生成や自然な応答を行うことができます。

CHATGPTは、様々な言語やトピックに関する質問に対して応答することができます。また、翻訳、文章生成、要約、感情分析など、様々な自然言語処理タスクにも対応しています。

CHATGPTは、オープンソースで提供されており、研究者や開発者が自由に利用することができます。また、大手IT企業やスタートアップ企業など、様々な企業がCHATGPTを採用し、製品やサービスの開発に活用しています。
ーーーーーーーーーーーーーーーー

将来性と怖さ

もはや人間が書いているといっても過言ではないような文章です。ミスが起きる場合も多いのですが、本の要約などをさっとおこなうことができるので教育にも応用できるのではと期待されています。

一方で、先日、文部科学省から対話型AIの学校利用に関する指針が示される予定であるというニュースが話題になりました。先に述べたように、あっという間に本の要約をしてくれるので、読書感想文などを対話型AIでおこなう子どもがいるのではないかと危惧されています。あまりにも自然な文章なので、子どもが書いたかどうか判別しにくいことがあるのです。

子どもっぽくない文章かどうかくらい分かるではないかと思われた方もいるでしょう。実はチャットGPTに小学生っぽい感想文にしてと指示することもできます。

『金太郎の感想文を低学年の小学生のように書いて』

ーーーーーーーーーーーーーーーー
「金太郎」というお話を読んだよ!とっても面白かった!金太郎は、小さな男の子だけど、強くて勇敢なんだ。ある日、金太郎は山の中で熊や狐や猿など、いろんな動物たちと出会ったんだ。最初は怖かったけど、仲良くなって、一緒に遊んだりご飯を食べたりしてたよ。

でもある日、悪い鬼が現れたんだ。鬼は、金太郎や仲間たちを襲って、お宝を奪おうとしたんだ。でも、金太郎は強くて勇敢だった!みんなを守って鬼と戦ったんだ!金太郎の勇気に感動しちゃったよ。

このお話から、私たちは勇気や友情の大切さを学べると思う。金太郎は小さな男の子だけど、強くて勇敢で、仲間を守ることができた。私も、金太郎みたいに勇敢になって、大切な友達を守りたいな。
ーーーーーーーーーーーーーーーー

見分けにくい感想文

上記の金太郎の物語文の感想文を見ると、要約をしつつも自分の感想を入れ込み、最後には主題から学んだことを伝えるという読書感想文の王道の流れで書かれています。この文章に個人的なエピソードが追加された場合に、なかなか人間かAIかを見分けるのは大変だと思います。

読書感想文の市内審査員も務めてきましたが、一見すると審査で見かけるレベルの作品と見分けがつかないこともありました。質問の仕方を変えると様々な角度から文章を作り直してくれます。ちなみに、字数指定もできるようになっています。

今回の記事のために初めて対話型AIを利用しましたが、これほどまでの性能へと進化を遂げていることに驚きました。これだけの能力を持った対話型AIですから、あっという間に子どもたちの中でも気軽に用いられるようになるでしょう。スマートフォンやネットゲームの時と同じように、また教師や保護者が知らないところで様々なトラブルの元になる可能性すら秘めているように感じます。

今期の執筆テーマの一つに

インターネットやスマートフォンの教育面での功罪が叫ばれているように、すぐにこの対話型AIをどのように教育に活用したり、制限したりするかという話が聞かれるようになるでしょう。

上手に使いこなせば私たち教員にとっても大きな武器になるような気もするのですが、どう活用していけばよいのでしょうか。子どもたちに先んじて時代の変化を捉えるために、今期は、この対話型AIをテーマの一つにしていきます。

新しい年度もどうぞよろしくお願いします。

関連リンク

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

同じテーマの執筆者
  • 樋口 万太郎

    京都教育大学付属桃山小学校

  • 石丸 貴史

    福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任

  • 郡司 竜平

    北海道札幌養護学校 教諭

  • 中原 正治

    元徳島県立新野高等学校 教諭

  • 鷺嶋 優一

    栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭

  • 中川 宣子

    京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 大吉 慎太郎

    大阪市立放出小学校 教諭

  • 清水 智

    長野県公立小学校非常勤講師

  • 宮澤 大陸

    東京都東大和市立第八小学校

  • 渡邊 満昭

    静岡市立中島小学校教諭・公認心理師

  • 長田 夢

    北海道旭川市立末広北小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop