2023.04.04
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先生にとっての「 何だかとても大切なもの 」新年度の子どもたちのやる気!まずは係活動からということ 

年度初めにクラスの係活動を決めると思います。係活動とは進め方にもよりますが、特別活動のうちの大切なもののトップではないか私は思っています。この係はすごいぞ、もしかしたら将来につながるぞというような意味が、そこにあると思うのです。
今回は、自分の心に残ったそんな係活動を紹介して行きたいと思います。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

子どもたちのやる気と係活動

自分が子どもの頃も係活動はありましたね。そういえば、なにかイラストを係が募集していたので、オリジナルのキャラクターを作って応募しました。もう半世紀以上も前のことなのに思い出せるというのは、我ながらちょっとびっくりです(なんとキャラクターにつけた名前まで思い出せました)。
ということは、たかが係活動なのではなく、そこには何かがあるのだと思うのです。

まず係活動そのものが、好きなものや得意なことで構成されていることが多いのではないかということです。好きなもの得意なものこそが、その子のやる気を生むということは前にもお話ししました。逆に好きでもない係をするのは、ちょっと嫌ですよね。だからこそ、そこは先生の工夫が光るところとなります。

クラス全員が、公平にもれなく係分担を行うことばかりを重視するのではなく、 クラスのルーティンとして必要な活動であれば、活動自体を楽しめるように一工夫すればいいわけですし、ちょっとしたネーミングでその係活動の魅力を出せることもあるでしょう。要は、アイディアや工夫があってこそだと思います。

ミジンコ係の活躍

ここで、子どもたちが作り上げとても印象的だった係を、一つご紹介したいと思います。
その名は「ミジンコ係」です。ネット検索しても「ミジンコ係」は出てこないようですので、それだけレアな係とも言えるかもしれません。
そもそもなんでミジンコなのということを、お話ししましょう。

その学校は、都市化の進んだ地域にあるため、どうも土の香りがしないと感じていました。そこで、JAグループが進めている、バケツで稲を育てるという活動に参加しました。するとどうしたことでしょう、稲の育つ水面にいろいろな生き物が湧き出したのです。
詳しい方ならご存じかと思いますが、田に水を引いてから何週間かたつと、まるでカンブリア紀の生物の爆発的な発生のように、実に様々な生き物が湧いてくることがあります。バケツに入れた土は、学校の敷地の土でしたが、まさに大爆発という感じで、わずかな水の中に生き物が大発生したのです。
よくよく見たら、大きなものはミジンコでした。ミジンコがこんな都市化の進んだところにいるんだということに、子どもたちも私も驚きました。だから、そのミジンコを使って何かできないかなという話になったわけなのです。

そこで、ミジンコ係が誕生しました。そのクラスでは随時係活動を思いついたら帰りの会でみんなに告知して始める仕組みです。仲間を募ることもできます。活動が一段落ついたら解散することもできるのです。いわばプロジェクトのような感じです。
まずは、ミジンコを増やす=「養殖」です。子どもたちはミジンコの餌も調べていましたが、あまり難しく考えず、ミジンコが好きそうな環境を整えることにしました。日当たりのよい窓辺に、発泡スチロールの箱を用意して土と一緒に水を入れてミジンコを移植すると良いようでした。するとずいぶん増やすことができたのです。いつの間にか窓辺のミジンコ箱をのぞく子が増えていきました。

ある日係曰く、「もっとのぞいてもらいたい」ということになりました。そこで、ルーペを用意すると、みんなが行列を作ってのぞきに来ます。係も手応えを感じたようでした。
「やっぱり触りたい」という要望も届きました。でも手で触るのは難しさがあります。そこで係が考えたのが、「ミジンコすくい」です。スプーンでミジンコをすくうというのです。これは大人気でした。保護者会でも実際に体験をしてもらうほどでした。ミジンコをすくためには、ミジンコの動きを凝視し、動きに合わせてスプーンを操作しなくてはなりません。これがかなり難しいのです。だから金魚すくいにも似た楽しさもあり、また生き物と付き合うイメージも持てますね。 

こうしていつのまにか、生き物好きの子がクラスに増えていきました。

係を担当したのは、どちらかというおとなしめの子でしたが、帰りの会の「係からの連絡」で取り扱い方の説明をしたり、他学年との交流会でミジンコすくいの発表をしたりと活躍の場が広がっていき、前に出てくる印象がずいぶん増えました。
その子もあり方も少し変わったのかなと思えたのでした。

係活動の特質と魅力

係活動で一番望ましいのは、子どもたちの自由な発想から、自分の好きなこと、得意なことを介して、自分の自己実現のために、そしてクラスのみんなのために、自分たちで運営するということになるのかなと思います。
言い換えれば、大学のサークル活動、 同好会活動のようなものとも言えるかもしれませんね。もうすでに充分な判断力のある大学生たちが行うサークル活動同好会活動なら、生涯忘れることはないでしょう。何せ、きっと楽しい活動だと思いますから。

ただ小学校での記憶というのは、一般的に高学年時のものだけが鮮明だろうと思っています。ですが、係活動は特別です。低学年のときであっても、係活動ですごくユニークな活動をしたりされたりしていたなら、きっと生涯忘れることはないと思うのです。ご自身をふりかえってみても、きっと思い出せるものがあるのではないでしょうか。
それだけに係活動には、時代を経ても色あせない、格別の魅力があると思うわけなのです。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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