2023.03.14
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先生にとっての 何だかとても大切なもの~子どもたちのやる気・私たちのやる気はいったいどこからやってくるのかなということ

いよいよまとめの時期に入りました。 今年は子どもたちが「湧く」瞬間に出会えましたか。「湧く」とは子どもたちが、主体的にどんどんやる気を見せて、次から次へと、いろんなことが 私たちの目の前で始まる瞬間のことです。私は今年久々に、涙が出るほど嬉しい、本当にすごいなと思える瞬間に出会えたのですよ。長い教職の中であってもなかなかお目にはかかれませんけど。でもきっとその瞬間のことは ずっと忘れないでしょう。それだけに、子どもたちと過ごすこの教職というもの、得難いものがあるのかなと思っています。どんなことなのか、少しお話したいと思います。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

先生のやる気・子どものやる気

先生というものは、やる気の求められる仕事だと思っています。やる気がなかったらなかなか前には進めません。「学校へ行きたくない」という子どもたちの言葉が身にしみる時は、私たちだってあります。ですが、やる気がそれを補ってくれた時、少しずつ上向きになってきたとき、私たちはいつの間にか学校という場に、また身を置くことができるんだなと思っています。

では、先生のやる気というものは、一体どこからやってくるのか考えたことはありますか。
私の専門はなぜか体育ということなので、どうやったら自分の競技のための意欲が保てるのか、少し考えてみたことがありました。

特に一人でする競技の場合、自分の意欲が保てるかどうかは、練習をこなすことができる、運動を継続することができる、さらには競技成績を伸ばすことができるということに直結します。
ほかの人やほかのチームと対戦する競技なら、その人や相手チームが目標になりますが、一人でする競技の場合は、結局は自分のことをどうやってコントロールするかということが大きな課題となるのです。
同じことをずっとずっと長く続けていくというのは、本当に根気のいることで、さらに意欲を持って進めるということには、難しさがあって当然だと思っています。

ではそれを実際に続けていくためには、一体どんな工夫が有効でしょうか。

一つは、「好きなものこそ上手なれ」というように、やっぱり自分の好きなものならとことん追求することはできるのでしょう。子どもたちも同じだと思います。子どもたちの本当に好きなもの、本当にやりたいこと、本当に得意だなと思っていることを知っている先生なら、子どもたちのそんなやる気に火をつけることが、きっとできるのかなと思います。

もう一つは、知らず知らずのうちにやり始め、やり始めた途端にやる気がどんどん押し寄せ、さらに追究していく、いわば無限ループのようにやる気の渦が巻き起こる「環境のデザイン」が大事だと思います。
これは競技なら、競技場の雰囲気や条件、それを達成することがいったい何につながるかというような先の見通しにあたります。
学校の子どもたちで言えば、教材や授業のデザインということになるのかなとも思います。

「湧く」瞬間は私たちへのやる気ギフト

でもね、計算されたような環境の中で、果たして子どもたちが「湧く」のかなという疑問があります。 そこには予想外のハプニングともいうべき何かがあって、突然子どもたちが湧いてくるような、自分の予想を超えてものすごく反応してくれるような、そういった瞬間があるのだと思うのです。
その瞬間の予想はなかなか難しいです。逆に言えば予想がつかないからこそ、面白いしすごいなあと思えるわけなのだと思います。

ある授業の発表の場面で、子どもたちは順に発表して行きます。 その子の発表の内容はおよそわかっていたつもりでした。しかし、実際の発表はまったく違っていました。まるでその子じゃないように、その瞬間思えたのです。びっくりしました。本当にそんな考えを持っていたんだと度肝を抜かれたかんじでした。聞いていた仲間もビックリしたと思います。一気に教室が色めき立ちました。良い意味でみんながすごいぞと思えた瞬間だったのです。
そこからの発表は、本当に盛り上がりました。みんなを巻き込んで 感性の渦が巻き上がると言う感じで、なんとかその授業を終えることが出来たのです。
自分の授業の未熟さを補って余りある、子どもたちのやる気の渦に本当にびっくりさせられた瞬間でした。

この予想を超えた瞬間を、どの子どもたちも持っていることは間違いありません。そういったやる気を見せる瞬間を「また見たい!」と思うので、ついつい私たちの意欲というものも出てくるのではないでしょうか。
私たちの仕事というものは、私たち自身が工夫によって、自分の意欲とかモチベーションを保つのと同時に、予想を超えた子どもたちからのやる気ギフトがあるからこそ、続けていけるものなのかなと思うのです。
そうそういつもうまくいくわけじゃありませんが、時々忘れたころに、なぜかやってくる子どもたちからのこうしたギフト、その瞬間を本当に大切にしたいなと思います。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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