2023.02.22
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個別最適な学びとは何か

令和の日本型学校教育として「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現することが中央教育審議会答申として示されてから2年が経った。それぞれの学校でその姿を模索している。先日、小規模校の複式学級の授業を参観した。そこで感じたことを述べ、これからの課題を紐解くヒントとしたい。

大阪大谷大学 教育学部 教授 今宮 信吾

子どもたちが授業を進める

自分達で学習のめあてを板書する

兵庫県の日本海側にある美方郡香美町立奥佐津小学校を訪問させていただいた。3、4年生の国語科の完全複式授業である。
「モチモチの木」(3年生)と「初雪の降る日」(4年生)の読解の授業であった。教室の真ん中に教師机が置かれ、教室の前面が3年生、背面が4年生というように、ホワイトボードとテレビモニターが設置されている。授業開始の挨拶を終えて、それぞれの授業のめあてや本日の授業内容が確認された。
その後、3年生2名、4年生4名が授業進行と板書記録を担当して授業が始められた。教師はそれを見守り、子どもたちの様子を見ながら授業を進めていかれた。

ハイブリッドなICT活用

タブレットに自分の考えを書き込む

デジタル教科書を活用しながら、必要な教科書の叙述を切り取って、タブレットのノート欄にそれぞれが書き込んでいく。
その後、自分達の考えを板書記録者がホワイトボードにまとめたり、付箋を貼って自分の考えをまとめたりしている。
1時間の授業の中でタブレットの使い方を指示することはなかった。
そのくらい操作に慣れているということである。
それでもアナログの板書はさせていた。手書き文字で書き出すという活動を思考が深まるためと意味づけして取り入れていた。

教師が問いかけで深める

動作化を促す担任の先生

教師はそれぞれの学習状況を見極めながら、3年生では「豆太はどんなふうに走ったのかな」と言って動作化を促した。
4年生では、「心情曲線を描いてその時の心情をみんなで確かめてみて」と板書記録と進行役に促した。
個別最適な学びを実現する際の教師の働きを考えるヒントになった。
「出過ぎず、見守り過ぎず」ということである。

授業方法として学ぶこと

協働的に自ら学ぶ

集団で授業をする際に、「協働的な学び」をペアやグループ学習で取り入れて一斉授業のデメリットを補う授業は多く参観してきた。
その際に授業進行の管理をするのは教師であることが多い。
この授業でも先生は音楽に例えると指揮者としてのタクトを振る役割はされている。
しかし、それぞれの子どもたちがどんな音を奏でているのかを聴きながら適宜、調整をされている。
主体的に学ぶことを保証するという点においてヒントになることが多かった。

子どもたちへ伝えたいメッセージ

ふるさとを誇りに

授業を参観して、その後先生方に話をさせていただくことが仕事であったが、子どもたちの姿を見てどうしても一言伝えたいと思った。授業終わりに少しだけ時間をいただいて子どもたちに語りかけた。
「みんなの授業を参観させてもらって、感激しています。私は普段大学で先生になろうしている人と授業をしていますが、大学生でもこんなふうに自分で授業を進めることは難しいです。それをみんなは普通にやっています。とても小さな学校だと思っているでしょうが、みんながしていることはとても大きなことです。これからの日本は君たちのような人が育ってくれることが必要だと思いました。これからも頑張ってくださいね」。
子どもたちは真剣に聴いてくれていた。感激しながら廊下を歩いて校長先生と話していた。「ふるさとを大事にする子どもたちに育っていますね」

今宮 信吾(いまみや しんご)

大阪大谷大学 教育学部 教授


国公私立の小学校で教員を経験し、現在未来の教師を育てるために教員養成に携わっています。国語教育を核として、学級づくり、道徳教育など校内研究にも携わらせていただいております。ことば学びのできる教師と学校づくりを目指しております。

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